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河添房江さんの『光源氏が愛した王朝ブランド品』を読んでます。
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2024年大河ドラマ「光る君へ」終わってしまいましたね……。
とてもイイ最終回だったと思います。
ああ、しばらく寂しいですね……。
先日京都市図書館に行ってみると、『源氏物語』の小さな特集コーナーがありました。
これも年が変わると終わってしまうのかな……と思うとしんみりします。
その特集コーナーに並べられていた中から、河添房江さんの『光源氏が愛した王朝ブランド品』(※1)という本を借りてきました。
この河添房江さんは『唐物の文化史 舶来品からみた日本』(※2)という本も書いておられ、鷲生も読みました。これが面白かったので、ぜひ、平安時代の舶来品を掘り下げた本を読んでみたいと思っていたのです。
ですから、今回はグッドタイミングでした!
鷲生は次回作で平安京に生きる女商人を登場させようと思っているので、前にも読んだ中村修也さんの『日本古代商業史の研究』(※3)を読み返したりしておりました。
以前この本を始めて読んだ時には、本格的な学術書でちょっとしんどく感じたのですが、今回は慣れたおかげか分かりやすかったです。
とはいえ、こちらの本は日本国内市場がメインです。
鷲生が登場させようと思うキャラは、海外からの奢侈品を貴族に売るという予定なので、それには今回の『光源氏の愛した王朝ブランド品』の方が直接役に立ちそうです。
すでにご存知の方も多いかと思いますが、ちょっと前の日本史の教科書に書かれていたような「平安時代では、遣唐使が廃止されたことで日本独自の国風文化が生まれました」という理解は、今では古いものとなっています。
この河添房江さんの本では、冒頭の「はじめに」という章で「国風文化」という”誤解”が生まれた経緯に触れられています。
国風文化という概念は「日本文化の自立や優位性という認識と結びついて、近代日本という国民国家が求める文学史の中で語られ始めた形跡が」あり、「近代国家の国民国家では、他国の文化である漢文化から離脱し、自立した国民文学の歴史を、いわば一国史的に定立する必要があった」から生まれたのです。
実際の平安時代は、遣唐使船を出さなくてもいいほど、民間での商取引が充実していた時期であり、平安京の貴族もこぞって舶来品を求めていた時代でした。
「光る君へ」でも、越前や大宰府にきた宋の商人と「まひろ」との間の淡い恋が描かれていましたね(「国際ロマンス詐欺」と言われてましたがw)。
鷲生は、自身が国際港湾都市神戸で生まれ育ったせいか、多文化が行き交う世界観の方が開放的で楽しいので、こういう観点からの考察を面白く読みました。
また、鷲生は長期目標として『源氏物語』をせめて宇治十帖の手前まで原文で読みたいと考えているのですが、そのためにも今回のこの本を読んで良かったと思います。
物語には当然、登場人物の周囲にモノがあります。そしてそのモノがその登場人物の特徴を表すことも多いです。
現代ものの小説だって、ヴィトンのバッグもった女性と無印良品のリュックしょった女性とではキャラが全然ちがいますよねw
紫式部がどういう意図をもってそのモノを物語に登場させたのか、私たちにはすぐには分かりません。
古文のテキストの注釈にも、ある程度説明はありますが(※4)、やはりモノにフォーカスした専門文献を何冊か読んどいた方がイメージがしやすいかと思います。
『光源氏が愛した王朝ブランド品』では以下のような目次となっております。
場合によっては、中華ファンタジーの参考にもなるかもしれません。
もし、みなさんのお住まいの図書館にもあれば一度手に取られてみてはいかがでしょう(鷲生は購入することも検討しています)。
目次は以下の通りです↓
はじめに
一 唐物は王朝生活の必需品
二 平安の交易ルート その一──渤海国交易
三 平安の毛皮ブーム──黒貂の皮衣
四 まぼろしの陶磁器──秘色青磁
五 平安の交易ルート その二──太宰府交易
六 紫式部の情報源
七 美しきガラス器
八 平安のフレグランス その一──『うつほ物語』と『枕草子』
九 平安のフレグランス その二──『源氏物語』の世界
十 舶来の紙の使いみち
十一 舶来ブランドのコスチューム その一──男性の衣装
十二 舶来のブランドのコスチューム その二──女性の衣装
十三 平安のインテリア
十四 舶来ペットの功罪
*****
※1 『光源氏が愛した王朝ブランド品』 河添房江 2008 角川選書 https://www.kadokawa.co.jp/product/200706000111/
※2 『唐物の文化史 舶来品からみた日本』 河添房江 2014 岩波新書 https://www.iwanami.co.jp/book/b226264.html
↑面白かったので、鷲生の友人で京都国立博物館でボランティアしている人にもおすすめしました!
※3 『日本古代商業史の研究』 中村修也 2005 思文閣史学叢書 https://www.shibunkaku.co.jp/publishing/list/478421268X/
※4 鷲生は小学館の『新編日本古典文学全集』で買いました。「原文・注・現代語訳」が同一ページに3段組みで配置されていて、鷲生にとって読みやすく、また、注の内容も多い方だと思います。
ただ……。中古で買うしかないので高かったですね……
https://www.shogakukan.co.jp/books/09658020
↑
この文章を書こうと、小学館のサイトを見てみたら、今は「ハンディ版」が電子書籍で出てるそうです。
Amazonでサンプルをみると、原文と中が同じページですが、現代語訳は別のページになっているようですね……。
紙媒体で買う前に知りたかった……。いや、でも、購入する決意を固めるにあたっては、「源氏物語という書物を本棚に並べる人生でありたい……」と半ばインテリア感覚でもありましたから……うーん、まあこれでよかった……んでしょうかw
とてもイイ最終回だったと思います。
ああ、しばらく寂しいですね……。
先日京都市図書館に行ってみると、『源氏物語』の小さな特集コーナーがありました。
これも年が変わると終わってしまうのかな……と思うとしんみりします。
その特集コーナーに並べられていた中から、河添房江さんの『光源氏が愛した王朝ブランド品』(※1)という本を借りてきました。
この河添房江さんは『唐物の文化史 舶来品からみた日本』(※2)という本も書いておられ、鷲生も読みました。これが面白かったので、ぜひ、平安時代の舶来品を掘り下げた本を読んでみたいと思っていたのです。
ですから、今回はグッドタイミングでした!
鷲生は次回作で平安京に生きる女商人を登場させようと思っているので、前にも読んだ中村修也さんの『日本古代商業史の研究』(※3)を読み返したりしておりました。
以前この本を始めて読んだ時には、本格的な学術書でちょっとしんどく感じたのですが、今回は慣れたおかげか分かりやすかったです。
とはいえ、こちらの本は日本国内市場がメインです。
鷲生が登場させようと思うキャラは、海外からの奢侈品を貴族に売るという予定なので、それには今回の『光源氏の愛した王朝ブランド品』の方が直接役に立ちそうです。
すでにご存知の方も多いかと思いますが、ちょっと前の日本史の教科書に書かれていたような「平安時代では、遣唐使が廃止されたことで日本独自の国風文化が生まれました」という理解は、今では古いものとなっています。
この河添房江さんの本では、冒頭の「はじめに」という章で「国風文化」という”誤解”が生まれた経緯に触れられています。
国風文化という概念は「日本文化の自立や優位性という認識と結びついて、近代日本という国民国家が求める文学史の中で語られ始めた形跡が」あり、「近代国家の国民国家では、他国の文化である漢文化から離脱し、自立した国民文学の歴史を、いわば一国史的に定立する必要があった」から生まれたのです。
実際の平安時代は、遣唐使船を出さなくてもいいほど、民間での商取引が充実していた時期であり、平安京の貴族もこぞって舶来品を求めていた時代でした。
「光る君へ」でも、越前や大宰府にきた宋の商人と「まひろ」との間の淡い恋が描かれていましたね(「国際ロマンス詐欺」と言われてましたがw)。
鷲生は、自身が国際港湾都市神戸で生まれ育ったせいか、多文化が行き交う世界観の方が開放的で楽しいので、こういう観点からの考察を面白く読みました。
また、鷲生は長期目標として『源氏物語』をせめて宇治十帖の手前まで原文で読みたいと考えているのですが、そのためにも今回のこの本を読んで良かったと思います。
物語には当然、登場人物の周囲にモノがあります。そしてそのモノがその登場人物の特徴を表すことも多いです。
現代ものの小説だって、ヴィトンのバッグもった女性と無印良品のリュックしょった女性とではキャラが全然ちがいますよねw
紫式部がどういう意図をもってそのモノを物語に登場させたのか、私たちにはすぐには分かりません。
古文のテキストの注釈にも、ある程度説明はありますが(※4)、やはりモノにフォーカスした専門文献を何冊か読んどいた方がイメージがしやすいかと思います。
『光源氏が愛した王朝ブランド品』では以下のような目次となっております。
場合によっては、中華ファンタジーの参考にもなるかもしれません。
もし、みなさんのお住まいの図書館にもあれば一度手に取られてみてはいかがでしょう(鷲生は購入することも検討しています)。
目次は以下の通りです↓
はじめに
一 唐物は王朝生活の必需品
二 平安の交易ルート その一──渤海国交易
三 平安の毛皮ブーム──黒貂の皮衣
四 まぼろしの陶磁器──秘色青磁
五 平安の交易ルート その二──太宰府交易
六 紫式部の情報源
七 美しきガラス器
八 平安のフレグランス その一──『うつほ物語』と『枕草子』
九 平安のフレグランス その二──『源氏物語』の世界
十 舶来の紙の使いみち
十一 舶来ブランドのコスチューム その一──男性の衣装
十二 舶来のブランドのコスチューム その二──女性の衣装
十三 平安のインテリア
十四 舶来ペットの功罪
*****
※1 『光源氏が愛した王朝ブランド品』 河添房江 2008 角川選書 https://www.kadokawa.co.jp/product/200706000111/
※2 『唐物の文化史 舶来品からみた日本』 河添房江 2014 岩波新書 https://www.iwanami.co.jp/book/b226264.html
↑面白かったので、鷲生の友人で京都国立博物館でボランティアしている人にもおすすめしました!
※3 『日本古代商業史の研究』 中村修也 2005 思文閣史学叢書 https://www.shibunkaku.co.jp/publishing/list/478421268X/
※4 鷲生は小学館の『新編日本古典文学全集』で買いました。「原文・注・現代語訳」が同一ページに3段組みで配置されていて、鷲生にとって読みやすく、また、注の内容も多い方だと思います。
ただ……。中古で買うしかないので高かったですね……
https://www.shogakukan.co.jp/books/09658020
↑
この文章を書こうと、小学館のサイトを見てみたら、今は「ハンディ版」が電子書籍で出てるそうです。
Amazonでサンプルをみると、原文と中が同じページですが、現代語訳は別のページになっているようですね……。
紙媒体で買う前に知りたかった……。いや、でも、購入する決意を固めるにあたっては、「源氏物語という書物を本棚に並べる人生でありたい……」と半ばインテリア感覚でもありましたから……うーん、まあこれでよかった……んでしょうかw
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