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6. 陛下の北妃と呼ばれる男(二)
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「夕べの少女から何か聞いたか?」
「ええ、あの子は雲雀っていうんですけど。雲雀、今日も冬籟様のお顔を間近で見られるって楽しみにしてたんですよ」
雲雀の話では、冬籟は美男子として都の女性たちからキャアキャアと騒がれる存在であるらしい。
昨日の夜、坊門が閉まっていて自宅に戻れない雲雀に同じ部屋の榻で寝てもらうことにした。そして都の噂をあれこれ聞かせてもらったのだ。雲雀の話は面白いし、雲雀も白蘭にウケるのが嬉しかったらしく、離れていた榻をくっつけて二人でかなり盛り上がった。
そして、雲雀が最もアツく語っていたのが冬籟と皇帝との仲なのだ。それを冬籟に告げると、彼は不快そうに顔をしかめる。
「どうせ俺が卓瑛の北妃だなんだとかいう話なんだろう。言っておくが、卓瑛は東妃一人を愛してる。妙な勘繰りはやめてくれ」
昨夜、皇帝と冬籟について語る雲雀は楽しそうだった。「皇帝陛下は白の貴公子、冬籟様は黒の貴公子って呼ばれ
てるんですよぅ。それぞれ雰囲気の異なる美青年でいらっしゃいますから!」とうっとりと宙を見つめる。
ただし、この二人の出会いには陰鬱ないきさつがあった。これを説明するときだけは、さすがの雲雀も神妙な顔つきだった。
董の北域に毅王国がある。遊牧民の暮らす草原の中の国であり、天朝からは北を守る霊獣、玄武を与えられている。冬籟はこの毅国の第二王子だった。
董の先帝の時代、冬籟がわずか七歳のとき、父王が謀反にあった。家臣だった忽氏が王位を奪おうとしたのだ。
あらましは白蘭も琥で聞いていたが、雲雀の耳にはより詳しい話も入ってきていた。
「草原では金や銀でできた品物が喜ばれるんですが、忽氏がこれまでの品よりずっと派手な品をどこからか手に入れるようになったんだそうです。そして、それを毅国の有力者にばらまいて人心を操るようになって……。毅王はご自分が清廉な方だっただけに、信じる臣下がそんな目先の欲で主君を裏切るなどとは思いもよらなかったんでしょうねぇ。それで奇襲にあって残念ながら討ち取られてしまわれて……」
「玄武は? 毅王は玄武を使役できるはずだけど?」
四神を授けられた王ならそれを使って身を守ろうとするだろう。
「ええ、不意打ちにあった毅王も玄武と一緒にかなり頑張られたそうです。でも多勢に無勢で……。それに嫡男を逃がさなければなりませんでしたし」
「嫡男って冬籟様のお兄様?」
「そうです。毅王は激しい戦いの中から嫡男を西に逃がしたんです。毅王が奮闘むなしく討ち取られたその瞬間、玄武の姿がすぅっとかき消えて西へ向かう街道に突如現れたんですって。きっと嫡男が玄武を引き継がれたんでしょうねぇ」
「じゃあ、毅王は嫡男に玄武を使役する呪文も伝えていたのね」
しかし、その嫡男も玄武もそれ以降の足取りは杳としてしれない。
雲雀が気の毒そうな顔で話題を冬籟に戻した。
「まだ七つの冬籟様はなすすべもなく忽氏に捕らえられてしまったんですぅ」
冬籟の身柄は忽氏から董の先帝のもとに送られた。それで明らかになった、この反乱は華都の皇帝に黙認されていたのだと。
皇后と宰相は当然忽氏の簒奪を阻もうとした。ところがそのための勅令を皇帝は発しない。むしろ「臣下に背かれるような家の者に玄武は任せられない」と言い張ったという。
先帝は冬籟を宮城の片隅に閉じ込めた。もし王家の嫡男が亡くなれば、他に玄武を操る資格がある毅王の王子は冬籟一人。嫡男に何かあればその従者が呪文を冬籟に伝えに来るだろう。あるいは四神は使役されずに二十五年が過ぎると華都に戻るというからそれを待っていたのかもしれない。
ともかく董皇帝が毅王家から玄武を召し上げるため冬籟は監禁されたのだ。
雲雀が「その間に冬籟様は八歳におなりになった」と言う。それほど長期の監禁はさぞ過酷な経験だったろうと白蘭も同情せざるをえない。
しかし冬籟少年は勇敢だった。ある夜、脱獄に成功する。とはいえ閉じ込められていた北の倉庫群から宮城の外に出る道に迷い、少年は皇后とその養子が暮らす後宮に入り込んでしまった。
この場面に差しかかって雲雀の声がぐっと高くなる。
「このときこそ、皇子であられた今の陛下と冬籟様の運命的な出会いだったんですぅ!」
冬籟は周囲に大切にされている年上の少年が誰なのかすぐに分かったことだろう。
遊牧を生業とする毅の民は子どもの頃から狩りをする。冬籟も俊敏な動きで皇子に襲い掛かり、皇子が腰に佩いていた剣を奪い取るや皇子の首筋に突き付けた。皇子を人質に自分を解放させるために。
雲雀の興奮はさらに高まる。
「帝の皇子に刃を向けて普通はただでは済みません。周囲は大騒ぎになりました。でも皇子様がその場を収めてしまわれたんです!」
当時わずか十二歳に過ぎなかった皇子は、冬籟の刃に全く動じなかったという。そして、彼に穏やかに語りかけた。
「皇子様は冬籟様に『父帝と違って自分は正統な毅王家しか認めない』と約束されました。それから、先帝は皇子様を疎んじていたので『自分を人質にとっても父帝は自分を見捨てるだけだ』とも説明されました。だから『二人で一緒に生きよう』『共に生きていつか毅王室を再興しよう』とおっしゃったんです」
なるほど。そもそも冬籟に皇子への個人的怨恨はない。皇子が冬籟を解放し、将来毅国の正当な王家を支援してくれるなら願ってもない話だろう。それが信頼できるのならば。
白蘭が「冬籟様はそれで納得されたの?」と尋ねると、雲雀はほうっと熱っぽい息を吐く。
「お二人はしばらくじっと互いに互いの瞳を見つめ合っておられたんですって。そして冬籟様がおもむろに跪いて礼を取り……。この瞬間、きっと言葉で言えないほど強い絆が互いの心に結ばれたんですよぅ!」
雲雀の想像は少々浪漫が過ぎる気がするが、冬籟が己の命運を賭けてもいいと思える何かを相手に見出したのは事実だろう。
皇子と皇后は冬籟を皇子の遊び相手として後宮に引き取りたいと申し出た。皇后は「わざわざ牢に繋がずとも後宮自体が陛下のものなのですから外部との接触などありません」と、後宮が皇帝の管理下にあることを強調して巧みに先帝の自尊心をくすぐり、無事冬籟を後宮に引き取ることができたそうだ。
「以来、後宮の中で皇子様と冬籟様は実の兄弟のようにお育ちになりました。いえ、兄弟以上の仲でいらっしゃるかも。大人になられても皇帝陛下は冬籟様を後宮でお過ごしのときも含めいつもお傍に置いておられるんですぅ」
白蘭はこれには質問せずにいられない。
「大人になられても? 今、後宮には東妃様がおいでじゃなかったっけ?」
東の漣国から妃が入っていたはずだ。後宮は男子禁制が原則。冬籟は宦官でないどころかかなり男臭いのに?
「ですから! 陛下にとって冬籟様は弟同然なんです! 養育して下さった皇后さまや東妃様ともども冬籟様も後宮にお住まいなんです。皆さん家族同然だそうですよぅ」
後宮出入りの寵臣か。それにしても自分の命を脅かした相手を弟同然にまで手なずけるとは……。白蘭にとっては冬籟よりも皇帝のひととなりの方が重要だ。そこで「今上帝は、なかなかの人物であられるようね」と水を向けてみた。
「そりゃもう今上帝は先帝とは大違いです。血はつながらなくても英明な皇太后様の手で育てられましたもの。とっても聡明で思いやり深い立派な方ですぅ」
うむうむと白蘭は頷きながら耳を傾けていたのだが、雲雀の話は白蘭の求めていたものからずれていく。
「陛下と冬籟様とは強い絆で結ばれて、冬籟様は武芸の腕が立つので、皇帝陛下が外にお出ましのときは必ずお傍に並びます。この麗しいお二人が並ぶとそれはもう……。ときおり視線を絡ませるご様子、見ているだけでドキドキですよぅ」
美青年同士で何らかの愛が交わされているのを見聞きして喜ぶ女子は割と多いが、どうも雲雀はその一人であるようだ。
「明るく甘い顔立ちの華麗な陛下は白の貴公子、どこか翳のある冬籟様は黒の貴公子とみんなでお呼びしてるんです。私、実は白の貴公子派だったんですけど、冬籟様を間近で拝見して『ああ、こちらもいいわぁ~』て思って……」
その、雲雀に『いいわあ』と評された冬籟は、白蘭が伝える雲雀の様子を苦虫でもかみつぶしたような顔で聞いている。
「まあ、雲雀は『お二人の間にあるのはアツい友情だけだ』と信じているそうですよ。お二人に肉体関係があると妄想する者もいるそうですが、そのような者は雲雀とは解釈違いで相容れないと言っていました」
冬籟が「当然だ」と言いながら、右手でこめかみを押さえる。
「『肉体関係』だと? 小娘が口にするような言葉じゃないぞ。あんた、もうちょっと恥じらいを持ったらどうだ?」
「お二人への妄想をはっきり否定するのにコレをぼかしては意味がないかと」
肉体関係の真偽はともかく、二人が親密なのは確かでだから冬籟は「陛下の北妃」と呼ばれているのだという。
冬籟は苦々し気に「とにかく卓瑛が惚れているのは東妃だけだ」と同じことを繰り返した。
「ですが東妃様は……」
その白蘭の言葉を冬籟がさえぎる。
「馬を下りるぞ。皇城の正門、華央門だ。ここからは歩いていく」
「ええ、あの子は雲雀っていうんですけど。雲雀、今日も冬籟様のお顔を間近で見られるって楽しみにしてたんですよ」
雲雀の話では、冬籟は美男子として都の女性たちからキャアキャアと騒がれる存在であるらしい。
昨日の夜、坊門が閉まっていて自宅に戻れない雲雀に同じ部屋の榻で寝てもらうことにした。そして都の噂をあれこれ聞かせてもらったのだ。雲雀の話は面白いし、雲雀も白蘭にウケるのが嬉しかったらしく、離れていた榻をくっつけて二人でかなり盛り上がった。
そして、雲雀が最もアツく語っていたのが冬籟と皇帝との仲なのだ。それを冬籟に告げると、彼は不快そうに顔をしかめる。
「どうせ俺が卓瑛の北妃だなんだとかいう話なんだろう。言っておくが、卓瑛は東妃一人を愛してる。妙な勘繰りはやめてくれ」
昨夜、皇帝と冬籟について語る雲雀は楽しそうだった。「皇帝陛下は白の貴公子、冬籟様は黒の貴公子って呼ばれ
てるんですよぅ。それぞれ雰囲気の異なる美青年でいらっしゃいますから!」とうっとりと宙を見つめる。
ただし、この二人の出会いには陰鬱ないきさつがあった。これを説明するときだけは、さすがの雲雀も神妙な顔つきだった。
董の北域に毅王国がある。遊牧民の暮らす草原の中の国であり、天朝からは北を守る霊獣、玄武を与えられている。冬籟はこの毅国の第二王子だった。
董の先帝の時代、冬籟がわずか七歳のとき、父王が謀反にあった。家臣だった忽氏が王位を奪おうとしたのだ。
あらましは白蘭も琥で聞いていたが、雲雀の耳にはより詳しい話も入ってきていた。
「草原では金や銀でできた品物が喜ばれるんですが、忽氏がこれまでの品よりずっと派手な品をどこからか手に入れるようになったんだそうです。そして、それを毅国の有力者にばらまいて人心を操るようになって……。毅王はご自分が清廉な方だっただけに、信じる臣下がそんな目先の欲で主君を裏切るなどとは思いもよらなかったんでしょうねぇ。それで奇襲にあって残念ながら討ち取られてしまわれて……」
「玄武は? 毅王は玄武を使役できるはずだけど?」
四神を授けられた王ならそれを使って身を守ろうとするだろう。
「ええ、不意打ちにあった毅王も玄武と一緒にかなり頑張られたそうです。でも多勢に無勢で……。それに嫡男を逃がさなければなりませんでしたし」
「嫡男って冬籟様のお兄様?」
「そうです。毅王は激しい戦いの中から嫡男を西に逃がしたんです。毅王が奮闘むなしく討ち取られたその瞬間、玄武の姿がすぅっとかき消えて西へ向かう街道に突如現れたんですって。きっと嫡男が玄武を引き継がれたんでしょうねぇ」
「じゃあ、毅王は嫡男に玄武を使役する呪文も伝えていたのね」
しかし、その嫡男も玄武もそれ以降の足取りは杳としてしれない。
雲雀が気の毒そうな顔で話題を冬籟に戻した。
「まだ七つの冬籟様はなすすべもなく忽氏に捕らえられてしまったんですぅ」
冬籟の身柄は忽氏から董の先帝のもとに送られた。それで明らかになった、この反乱は華都の皇帝に黙認されていたのだと。
皇后と宰相は当然忽氏の簒奪を阻もうとした。ところがそのための勅令を皇帝は発しない。むしろ「臣下に背かれるような家の者に玄武は任せられない」と言い張ったという。
先帝は冬籟を宮城の片隅に閉じ込めた。もし王家の嫡男が亡くなれば、他に玄武を操る資格がある毅王の王子は冬籟一人。嫡男に何かあればその従者が呪文を冬籟に伝えに来るだろう。あるいは四神は使役されずに二十五年が過ぎると華都に戻るというからそれを待っていたのかもしれない。
ともかく董皇帝が毅王家から玄武を召し上げるため冬籟は監禁されたのだ。
雲雀が「その間に冬籟様は八歳におなりになった」と言う。それほど長期の監禁はさぞ過酷な経験だったろうと白蘭も同情せざるをえない。
しかし冬籟少年は勇敢だった。ある夜、脱獄に成功する。とはいえ閉じ込められていた北の倉庫群から宮城の外に出る道に迷い、少年は皇后とその養子が暮らす後宮に入り込んでしまった。
この場面に差しかかって雲雀の声がぐっと高くなる。
「このときこそ、皇子であられた今の陛下と冬籟様の運命的な出会いだったんですぅ!」
冬籟は周囲に大切にされている年上の少年が誰なのかすぐに分かったことだろう。
遊牧を生業とする毅の民は子どもの頃から狩りをする。冬籟も俊敏な動きで皇子に襲い掛かり、皇子が腰に佩いていた剣を奪い取るや皇子の首筋に突き付けた。皇子を人質に自分を解放させるために。
雲雀の興奮はさらに高まる。
「帝の皇子に刃を向けて普通はただでは済みません。周囲は大騒ぎになりました。でも皇子様がその場を収めてしまわれたんです!」
当時わずか十二歳に過ぎなかった皇子は、冬籟の刃に全く動じなかったという。そして、彼に穏やかに語りかけた。
「皇子様は冬籟様に『父帝と違って自分は正統な毅王家しか認めない』と約束されました。それから、先帝は皇子様を疎んじていたので『自分を人質にとっても父帝は自分を見捨てるだけだ』とも説明されました。だから『二人で一緒に生きよう』『共に生きていつか毅王室を再興しよう』とおっしゃったんです」
なるほど。そもそも冬籟に皇子への個人的怨恨はない。皇子が冬籟を解放し、将来毅国の正当な王家を支援してくれるなら願ってもない話だろう。それが信頼できるのならば。
白蘭が「冬籟様はそれで納得されたの?」と尋ねると、雲雀はほうっと熱っぽい息を吐く。
「お二人はしばらくじっと互いに互いの瞳を見つめ合っておられたんですって。そして冬籟様がおもむろに跪いて礼を取り……。この瞬間、きっと言葉で言えないほど強い絆が互いの心に結ばれたんですよぅ!」
雲雀の想像は少々浪漫が過ぎる気がするが、冬籟が己の命運を賭けてもいいと思える何かを相手に見出したのは事実だろう。
皇子と皇后は冬籟を皇子の遊び相手として後宮に引き取りたいと申し出た。皇后は「わざわざ牢に繋がずとも後宮自体が陛下のものなのですから外部との接触などありません」と、後宮が皇帝の管理下にあることを強調して巧みに先帝の自尊心をくすぐり、無事冬籟を後宮に引き取ることができたそうだ。
「以来、後宮の中で皇子様と冬籟様は実の兄弟のようにお育ちになりました。いえ、兄弟以上の仲でいらっしゃるかも。大人になられても皇帝陛下は冬籟様を後宮でお過ごしのときも含めいつもお傍に置いておられるんですぅ」
白蘭はこれには質問せずにいられない。
「大人になられても? 今、後宮には東妃様がおいでじゃなかったっけ?」
東の漣国から妃が入っていたはずだ。後宮は男子禁制が原則。冬籟は宦官でないどころかかなり男臭いのに?
「ですから! 陛下にとって冬籟様は弟同然なんです! 養育して下さった皇后さまや東妃様ともども冬籟様も後宮にお住まいなんです。皆さん家族同然だそうですよぅ」
後宮出入りの寵臣か。それにしても自分の命を脅かした相手を弟同然にまで手なずけるとは……。白蘭にとっては冬籟よりも皇帝のひととなりの方が重要だ。そこで「今上帝は、なかなかの人物であられるようね」と水を向けてみた。
「そりゃもう今上帝は先帝とは大違いです。血はつながらなくても英明な皇太后様の手で育てられましたもの。とっても聡明で思いやり深い立派な方ですぅ」
うむうむと白蘭は頷きながら耳を傾けていたのだが、雲雀の話は白蘭の求めていたものからずれていく。
「陛下と冬籟様とは強い絆で結ばれて、冬籟様は武芸の腕が立つので、皇帝陛下が外にお出ましのときは必ずお傍に並びます。この麗しいお二人が並ぶとそれはもう……。ときおり視線を絡ませるご様子、見ているだけでドキドキですよぅ」
美青年同士で何らかの愛が交わされているのを見聞きして喜ぶ女子は割と多いが、どうも雲雀はその一人であるようだ。
「明るく甘い顔立ちの華麗な陛下は白の貴公子、どこか翳のある冬籟様は黒の貴公子とみんなでお呼びしてるんです。私、実は白の貴公子派だったんですけど、冬籟様を間近で拝見して『ああ、こちらもいいわぁ~』て思って……」
その、雲雀に『いいわあ』と評された冬籟は、白蘭が伝える雲雀の様子を苦虫でもかみつぶしたような顔で聞いている。
「まあ、雲雀は『お二人の間にあるのはアツい友情だけだ』と信じているそうですよ。お二人に肉体関係があると妄想する者もいるそうですが、そのような者は雲雀とは解釈違いで相容れないと言っていました」
冬籟が「当然だ」と言いながら、右手でこめかみを押さえる。
「『肉体関係』だと? 小娘が口にするような言葉じゃないぞ。あんた、もうちょっと恥じらいを持ったらどうだ?」
「お二人への妄想をはっきり否定するのにコレをぼかしては意味がないかと」
肉体関係の真偽はともかく、二人が親密なのは確かでだから冬籟は「陛下の北妃」と呼ばれているのだという。
冬籟は苦々し気に「とにかく卓瑛が惚れているのは東妃だけだ」と同じことを繰り返した。
「ですが東妃様は……」
その白蘭の言葉を冬籟がさえぎる。
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