ルビーの帰る場所［完結］

21

ルビーは夢から覚めた。
ハンモックを掛けている木からは木漏れ日が降り注ぐ。
ルビーは夢の中で誰かが言った言葉を思い出していた。
そして思い出せないその人に会いたいと思っていた。
ルビーは起き上がってもブランコの様に揺れた。
遠くの景色は何もない草原。
厚い雲がいくつかゆっくり流れていく。

「ねえ、花の香りって風が運んできてくれるんだよ。」
ルビーはこの言葉を口に出した。
聞いたことがある。思い出せそう。その人は誰だったのか。
日が真上に差し掛かった頃にアールがルビーを呼びにきた。
「おい、飯だ。零さんが言ってたぜ。じゃがいもの入ったスープが好きなんだってな。」
ルビーは頷く。好きなものは覚えていない。この世界に来た時にノックが最初に作ってくれたものだったから。
じゃがいもに鶏肉、塩と胡椒、その他にいくつかのハーブを入れてできたシンプルなスープ。
家に入るとテーブルいっぱいのご飯と椅子に座っている知らない男の人。
「やあ！久しぶり！やっと会えたぜ！」