もういらないと言われたので隣国で聖女やります。

ゆーぞー

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「俺のいないところで何をしている」

 アジャール様の声は低く気持ちの悪いものでした。ゾワゾワとして鳥肌が立ちました。

「国王の俺を差し置いて、他国と交渉か。偉くなったものだな」

 アマンダさんは震えているようです。でも黒い影になっているのでよくわかりません。

「お前などどうにでもできることを忘れたか!」

 アジャール様が怒鳴ると、アマンダさんの影が小さくなって消えてしまいました。存在そのものが消されてしまったようで、私はゾッとしました。

『マズイ。あいつは力をつけている』

 フルル様の声が聞こえました。

「今の俺はお前らより強い。お前らなど消し去ってやる」

 アジャール様が右手を上げるとものすごい瘴気が集まってきました。そしてそのまま右手を振り下ろすと、瘴気の塊が飛んできました。とっさに浄化のエネルギーで幕を張り瘴気の塊はそれに当たって消えたのですが、空気が揺れるような衝撃を感じました。

「レートレースの連中は気に入らなかったんだ。隣だっていうのに、こっちが困っても助けやしなかったしな。
皇子2人も俺と歳が近いっていうのに、挨拶もろくに出来やしねえ。そのくせ自分達の方が上だって顔してやがる。
そういえば、マグヌスはレートレースに逃げてったんだよなぁ。あいつは負け犬だからな。自分じゃ何も出来ねぇ大馬鹿野郎だ。
アマンダは俺の女になったが、どうでもいい。あいつも口うるせいし、小言ばっかり言いやがる。
俺に指図するなんて、一千万年早いっつうんだ」

 アジャール様はずっとブツブツ言っています。なんだか気味が悪いです。

『こいつは劣等感が強く、何もかも他人のせいにしてたようだな』

 フルル様がため息をついています。

『まあ、だからこそ、瘴気が集まってボスになったみたいだな』

「つべこべ、うるさいんだよ!」

 そこにエディ様が剣を振るいました。アジャール様の頭から脇の下まで切り裂いていきます。

「ぐっ」

 アジャール様の顔が歪み、苦しそうな声を出しました。血の代わりに出てきたものは、真っ黒いもやもやとしたもの。それらが口々に何かを呟いています。

「あいつより俺の方がいい男だ」
「親の力でのし上がったくせに」
「金で全てを買えると思ってるのか」
「サボり方だけ上手くなりやがって」

 色々な声が聞こえてきました。聞いていると気持ちが滅入ってきます。私はただひたすらに浄化のエネルギーを送りました。

「アリス・・・」

 エディ様の声が聞こえました。気がつくとそこにはもうアジャール様の姿はありませんでした。

『アジャールは浄化した』

 王妃様とアマンダ様はどうなったか聞こうと思いましたが、やめました。インディアルのあった国は魔獣の国として、関わらないことにしたのでした。


 
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