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しおりを挟む「ここはどこだったのですか?」
お城に戻る途中でフフル様に尋ねました。
『どこだと思う?』
「わかりません。でもすごく怖い場所。二度と行きたくはありません」
さっきまでのどうしようもない孤独感や無力感を思い出しました。あんな気持ちになるのはもう嫌です。思い返すと身震いしてしまいます。
『あれが祈りの間の正体だ。おそらくは最初の聖女は不本意な形で閉じ込められたのだろう。それをアリスや他の聖女たちがずっと外から力を与えていたから成り立っていた』
自分の命を懸けて穢れを抑えた素晴らしい人と聞いていたので、私はショックでした。でも本当は違ったようです。
もし自分だったらどうだったでしょうか。私は孤児だし、反対する人もいません。魔力もたくさんあるので、土地の穢れを抑えるにはうってつけでしょう。
そう思ったら、悲しくなってきました。私だったら絶対嫌です。あんな孤独感を感じるくらいなら、聖女はやめたいです。
『アリス、落ち着け。犠牲があっても穢れはおさまっていたのだ。決して無駄ではないだろう』
フフル様は私の気持ちに気がついたのでしょう。その言葉は最初の聖女様に届いたでしょうか。
「私はこれからどうしたら」
私にできることはあるのでしょうか。魔力が人より多いと聞いていたので、きっと色々なことができると思っていました。でもそれが何になるのか。本当は何もできないのではないか。不安な気持ちになってきます。
『これからアリスがどうすればいいかは我にもわからん。だが、差し当たって城の連中を救わないと』
確かにその通りです。今は皆様をお救いすることが先決でしょう。
「アリスちゃん!」
お城に着くと皇后様が走っていらっしゃいました。穢れは思った以上にお城の中に漂っています。私は呆然としてしまいました。こんなに穢れを見たこと、感じたことは初めてでした。私は一体何をしてきたのでしょうか。
『本来ならアリスが結界を張ってあるから穢れは入ってこない。すでに国内にいた者が穢れを発生させたのであろう。アリス以上の力を発生させたのだ。その者は長くは生きられないと思うが』
フフル様の言葉に私はどうしていいかわかりません。このままだと穢れは国中に広がってしまうかもしれませんし、穢れを発生させた人も死んでしまうことになります。
私にはできない。
そんなことを考えてしまい、私は何もできないままでした。
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