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しおりを挟む「アリス様は聞かれたことはないですか?」
聖女様からはそのようなことは聞いていませんでした。呪いなんて強いエネルギーを日常的に発動できるなんて、よほどのことと思います。
「もともと略奪や暴行などを日常的に行なってきた人間が集まってできた国がメアニストです。人間的にも粗暴な性質だったのでしょう。彼らは当たり前のように人を簡単に呪うことができたのです」
「簡単に?」
「はい、最初はちょっとしたミスをしたメイドが階段から落ちて怪我をしたり、気に入らない態度を取った側近が事故に合ったりしました。偶然にしては多く、不審に思っていたのです」
私は繋いでくださっているエディ様の手を強く握ってしまいました。何かの力を持っているなら、それを幸せのために使うべきと私は思っています。人を不幸にするなら、その人も不幸になると思うからです。エディ様は私の手を握り返してくださいました。その暖かさと力強さに私は安心しました。
「あの噂はやはり・・・」
陛下の言葉にクラント様は静かに目を閉じました。少しの間そうして目を閉じられたままクラント様は微動だにしませんでした。やがて片方の目から涙が一筋流れ落ちました。
「最初のお子様が亡くなられたのは、おそらく王妃様の呪いの力でしょう。陛下はそのことに気づき、王妃様の機嫌を損ねないようになさいました。もうこれ以上の悲劇を起こさないように、細心の注意を払おうとされたのです。当時は聖女様は何人もいらっしゃったので、その方々が守りの力を強めてくださいました」
声を出すこともできないくらいに、私は恐怖を感じていました。祈りの間での儀式は今思えば本当に大変でした。レートレースで幕を張るのがあっという間にできるのに、インディアルでは1日中ずっとやらないと保つことができませんでした。もともとの土地が穢れているせいだと思ったのですが、おそらく王妃様の呪いの力があったせいでしょう。
「やがてアジャール様が生まれ、王妃様の呪いの力も無くなったように思いました。しかし、マグヌス様が生まれ、王妃様は我々に宣言なさいました。自分には人を呪う力がある、これから少しずつその力を見せつけてやると」
その時、私は何か嫌なものを感じました。今まで感じたことのないくらいの悪いものです。モヤモヤした気持ちの悪いエネルギーがこの部屋を覆っているのがわかりました。
「この話をいますぐやめてください!」
私は立ち上がり、叫びました。勢いよく立ち上がったせいで椅子が大きな音を立てて倒れました。
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