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お昼を頂いていたら、インディアルの元大臣のクラント様から私に会いたいと連絡がありました。
「何の用だろう?」
エディ様に言われても私にはわかりません。今までクラント様から私に連絡はありませんでした。もしかしたらですが、もうじきマグヌス様が新しい領地に向かわれます。私はそこに新しく保護の幕を張るつもりですが、クラント様はそのことを気にされているのかもしれません。
「アリス、俺も立ち会うよ」
綺麗な仕草でナフキンを手にしたエディ様は、丁寧に口を拭いています。剣を持つエディ様も素敵ですが、こういう仕草もさすが王族の方と思います。とても優雅なのです。
結局、エディ様だけではなく陛下、アンディ様、ギルバート様と別の部屋でクラント様にお会いすることになりました。
部屋に入られたクラント様は少し緊張されているように見えました。顔色もあまり良いように見えません。お疲れなのでしょうか。もしかしたら浄化を望まれていただけかもしれません。
「実はマグヌス様のお耳には入れたくないお話があります」
しかし、クラント様は席に着いた途端話し出されました。
「アジャール様のお母様の出身国 メアニストについてです」
「悪名高き、だな」
「・・・王妃にしなければ戦争を仕掛けると脅したという」
「当時、私もその話を聞いてなんとかできぬかと思ったものだった。他の国でも同じようなことを言っていたはず」
クラント様は静かに聞いておられました。やがて私を見ると
「前の聖女様に何か聞いておられますか?」
と、お尋ねになりました。私は小さくうなづきました。
「具体的には何を?」
クラント様のお声はとても優しいのですが、同時に何か怖いとも思えました。全てのことを話さなくてはいけない、そう思わせる何かがありました。
「インディアルが穢れた土地になった戦争ですが、相手はメアニストであったということです」
どこと戦争をしたということは、大昔のことではっきりしていませんでした。山賊のような人たちが強奪を繰り返して移動しているうちに集団になり、結果的にインディアルで戦争という形になったと思われていました。
しかし聖女様は土地の記憶のようなものを見る力があり、王妃様が子孫であるとわかってしまったそうです。
戦争を仕掛けるとまで言われ苦渋の選択で陛下は結婚を承諾しましたが、陛下の御心は王妃様にはありませんでした。そのことを聖女様は心配されていました。そして陛下にとって最初のお子様が亡くなられてしまい、聖女様は守りを強化することを陛下に進言されました。本来なら孤児院にまで加護を持つ者を探すことはなかったそうです。守りを強化するために私を探し出したと聞きました。
「メアニストの王族の特徴はご存知ですか」
クラント様が尋ねられました。
「好戦的な性格と聞いているが」
エディ様の答えにクラント様は静かに首を振りました。
「呪いが日常的にできるのです」
「呪い?」
気づいたら、エディ様が私の手を握ってくださっていました。呪いができるってどういうことでしょうか。
「何の用だろう?」
エディ様に言われても私にはわかりません。今までクラント様から私に連絡はありませんでした。もしかしたらですが、もうじきマグヌス様が新しい領地に向かわれます。私はそこに新しく保護の幕を張るつもりですが、クラント様はそのことを気にされているのかもしれません。
「アリス、俺も立ち会うよ」
綺麗な仕草でナフキンを手にしたエディ様は、丁寧に口を拭いています。剣を持つエディ様も素敵ですが、こういう仕草もさすが王族の方と思います。とても優雅なのです。
結局、エディ様だけではなく陛下、アンディ様、ギルバート様と別の部屋でクラント様にお会いすることになりました。
部屋に入られたクラント様は少し緊張されているように見えました。顔色もあまり良いように見えません。お疲れなのでしょうか。もしかしたら浄化を望まれていただけかもしれません。
「実はマグヌス様のお耳には入れたくないお話があります」
しかし、クラント様は席に着いた途端話し出されました。
「アジャール様のお母様の出身国 メアニストについてです」
「悪名高き、だな」
「・・・王妃にしなければ戦争を仕掛けると脅したという」
「当時、私もその話を聞いてなんとかできぬかと思ったものだった。他の国でも同じようなことを言っていたはず」
クラント様は静かに聞いておられました。やがて私を見ると
「前の聖女様に何か聞いておられますか?」
と、お尋ねになりました。私は小さくうなづきました。
「具体的には何を?」
クラント様のお声はとても優しいのですが、同時に何か怖いとも思えました。全てのことを話さなくてはいけない、そう思わせる何かがありました。
「インディアルが穢れた土地になった戦争ですが、相手はメアニストであったということです」
どこと戦争をしたということは、大昔のことではっきりしていませんでした。山賊のような人たちが強奪を繰り返して移動しているうちに集団になり、結果的にインディアルで戦争という形になったと思われていました。
しかし聖女様は土地の記憶のようなものを見る力があり、王妃様が子孫であるとわかってしまったそうです。
戦争を仕掛けるとまで言われ苦渋の選択で陛下は結婚を承諾しましたが、陛下の御心は王妃様にはありませんでした。そのことを聖女様は心配されていました。そして陛下にとって最初のお子様が亡くなられてしまい、聖女様は守りを強化することを陛下に進言されました。本来なら孤児院にまで加護を持つ者を探すことはなかったそうです。守りを強化するために私を探し出したと聞きました。
「メアニストの王族の特徴はご存知ですか」
クラント様が尋ねられました。
「好戦的な性格と聞いているが」
エディ様の答えにクラント様は静かに首を振りました。
「呪いが日常的にできるのです」
「呪い?」
気づいたら、エディ様が私の手を握ってくださっていました。呪いができるってどういうことでしょうか。
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