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しおりを挟む結局魔獣征伐は一旦保留になりました。もう少し調査をしてからでも遅くはないとのことです。そして今日は、インディアルからレートレースに亡命されたマグヌス様にお会いする日です。
昨日から皇后様とドレスのチェックです。マグヌス様と2人きりで会うわけではありません。陛下も皇后様もアンディ様、エディ様、グレン様、ギルバート様もいらっしゃいますし、マグヌス様と一緒に亡命された大臣だった方々と一斉にお会いするのです。私が何を着ようが関係ないと思います。
「何言っているの、我が国で迎えた以上は最大級に綺麗にしてあげなくては」
そういうものでしょうか。私は贅沢することが怖いのですが。
私はフフル様に聞いた話をしました。皇后様もメイドのルイーダさんもリズさんも真剣な様子で私の話を聞いてくださいました。
「確かに必要以上の贅沢を求めることは破滅を招く。私もそれは分かっているし、律しようと努力してる。でも皇后の私がみすぼらしい格好をするわけにいかないの。必要があれば高価なドレスや宝石もつける」
皇后様は言葉を選ぶように丁寧に私にお話くださいます。皇后様の瞳は真っ直ぐ私を見てくださっています。私のために心を込めてお話くださっていることに私は感動してしまいました。
「アリスちゃんを高価なドレスや宝石で飾らせるのは、我が国がそれだけの力があるということよ。そしてアリスちゃんにその価値があるということ。私たちはアリスちゃんを価値のある人とみなしているの」
私にそんな価値があるのでしょうか。元は孤児でちゃんとした勉強もできなかったのです。
「私たちがアリスちゃんをそう見ているってことはわかってね」
私の価値は私ではよくわからないけど、価値ある人と見てくれている人がいる。今はそのことだけ考えることにしました。
支度が終わり、私は鏡の前に立ちました。私ではない人のようです。何だか照れ臭い。
「お似合いですよ」
リズさんに褒めてもらいましたが、この姿で人前に出ていいのでしょうか。ドキドキします。すると廊下から何やら声が聞こえてきます。
「ここは私がエスコートすべきだろう」
「兄上だといらぬ誤解が生じます。ここは私でしょう」
アンディ様とエディ様の声です。お二人も準備ができたのでしょう。リズさんがため息をついてドアを開けました。
「アンドリュー様、エドワード様」
「アリス・・・」
お二人が部屋の入り口に立たれたまま、こちらをぼんやりと眺めています。私は自分の姿が恥ずかしくなりました。やはりこんな格好、お断りすればよかったのです。
「お二人とも、女性に対する礼儀がなっていませんね」
現れたのはギルバート様です。その後ろにはグレン様が立たれています。外国の方にお会いするというので、正装されています。お二人ともとても凛々しいです。
「本日のエスコートは私が勤めます」
ギルバート様が手を差し出されました。
「とてもお綺麗ですよ」
いつもとは違うギルバート様に私はドキドキしてしまいました。
「どういうことだ」
「油断も隙もない」
という声が聞こえてきましたが、それよりもギルバート様に恥をかかせないようにしっかり歩かなければという気持ちで余裕はありませんでした。
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