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しおりを挟む『悪さをする魔獣はこの国にはいない』
突然フフル様がそんなことを言い出しました。
『人間に害を及ぼす魔獣は隣の国に向かっている』
隣の国とはインディアルのことでしょうか。なぜインディアルに魔獣が向かうのか、それは私が儀式をしなくなったせいと思います。
『確かにアリスの結界がないせいでもあるが、今の隣の国は悪意に満ちている。だから悪い魔獣が集まるのだ』
悪意?それはどういうことでしょうか。フフル様の話はよくわかりません。とりあえず、私はエディ様とグレン様に聞いたことを話しました。お二人は私の話を静かに聞いてくださいました。
「じゃ、魔獣征伐はもう少し考えたほうがいいのかな」
「とりあえず会議をしなおそうか」
お二人はそんなことを言っていますが、私はインディアルのことのほうが気になります。私の生まれ育った国なのです。
『アリスが気にしてもこの流れは変わらない。あの国は黒い波動が出ている。その黒い波動に導かれて、同じものを持つ魔獣が向かうのだ』
フフル様の話を聞いて、私はますます自分のせいだと思いました。気分が落ち込んでしまいます。
『アリスが気にすることはないよ。それよりもっとここに来て俺と遊ぼうよ』
ラビさんが慰めてくれるかのように頭を擦り付けてきます。気にするな、と言われても気になってしまいます。
『隣の国のことはもうアリスの手を離れたのだ』
フフル様からもう一度言われて、私は少しインディアルのことを考えるのを忘れようと思いました。確かに私が生まれて育った国ではありますが、追い出されたわけですし今はレートレースに住んでいます。冷たいようですが、レートレースのことを考えようと思います。
「フフル様はどうしてここに住んでいるのですか」
気を取り直し、私はフフル様のことを聞いてみることにしました。あんなに大きな魔獣のフフル様が何故ここにいるのか不思議だからです。
『我は昔この国にいた聖女と気が合ってここに住まうことにしたのだ』
この国の聖女とはアマンダさんのお母さんでしょうか。もしかしたら私にも気が合って住んでくれる魔獣さんに出会えるかもしれません。そのためにも魔獣さんにもっと会いに行きたいです。エディ様にお願いしたら会わせてもらえるでしょうか。
『アマンダとは誰か知らぬが、禁を犯したので聖女は生まれなくなったのだ』
禁?何をしたのでしょうか。アマンダさんが聖女の力を使えなかったことと関係があるのでしょうか。
『私利私欲のためにその力を使った。人間は愚かな生き物と知ってはいるが』
フフル様のお話に、私はきちんとしないとと思い直しました。この国に来てからドレスや食べ物など、ずいぶん贅沢をさせてもらっています。これが贅沢と思わなくなることが怖いです。私はそんなことを考えていました。
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