上 下
18 / 62

18

しおりを挟む
 私とエディ様は今、エディ様の住んでいるというお城で昼食を頂いています。そこでエディ様に高級ポーションをたくさん作れないか聞かれていました。ポーションとは何かよくわかっていません。先ほどもリンさんに見せてもらったポーションを触っていたら変化したのだと説明しました。

「もともとのポーションを変化させる」
 グレン様が難しそうな顔をされていて、うまく説明できない自分が情けなく思いました。

「今度の魔獣征伐で高級ポーションがあったらとても助かるんだ」
 魔獣討伐はエディ様の指揮のもと、半年に1回程度行っているそうです。100人近い部隊を率いて国中を移動することもあるそうで、体力、気力、魔力が無くなっていく過酷な状態。それをポーションで補うそうなのです。

「鑑定してみたけど、あの高級ポーションがあれば人数をもっと減らしてもいいかもしれない」
「アリスが結界を張ったから魔獣も減るとは思うけど、油断はできないし」
 エディ様とグレン様は難しい顔をしてお仕事の話を始めました。私はデザートのケーキを食べながら、魔獣をペットにできないか考えています。

「ここにいたのね」

 そこに来られたのは皇后様でした。
「アリスちゃんをほっといて仕事の話?本当にエディは無粋な男ね」
「も、申し訳ない!」

 エディ様がハッとしたように私を見ると、何度も頭を下げて謝罪して下さいました。却って私が恐縮してしまいます。

「アリスちゃん、食事が終わったら私とお茶にしましょう」

 皇后様のお誘いはお断りできません。ですが、今ケーキを食べています。お腹がいっぱいではち切れそうです。

「ドレスを見立ててあげるわ。本当なら殿方が用意するものだけど」

 皇后様はチラリとエディ様を見ると
「この辺りの殿方では無理ね」
と、扇子をバサッと広げて口元を隠しました。

「アリス様、お部屋に行かれましたか?」

 皇后様のメイドさんに聞かれ、私は首を左右に振りました。

「少しお休みになられた方がよろしいかと思います」
「ああ、そうね。アンディもエディも本当に気が利かないわね」
 皇后様に言われ、ますますエディ様とグレン様は頭を下げてしまいました。

「リズ、アリスちゃんをお部屋に案内して」
「畏まりました」

 リズと呼ばれた女性は私よりも少し年上の方でしょうか。髪を綺麗に一つにまとめ背筋をピシッと伸ばした、いかにもできる感じの女性です。

「私の姪でございます」
 皇后様のメイドさんに言われ、そういえばなんとなく似ている感じがするなと思いました。

「リズなら大丈夫よ」
 皇后様はそう言ってまたエディ様を見ました。

「適当なメイドに言いつけるから、今朝みたいなことが起きたのよ」

 エディ様はまた頭を深く下げました。なんだかとてもお気の毒です。皇后様はずっとアンディ様とエディ様をお叱りになっているように思いました。お二人とも、とても素敵な人なのに。

「ではまた後でね」

 皇后様が優雅に立ち去り、私も残りのケーキを頂きます。

「ついつい仕事の話をしてごめんね」
「確かに一緒に食事しているのに、つまらない話だよな」

お二人に謝っていただくことではないのですが。魔獣の話はなかなか面白かったのです。

「どんな魔獣が出るのですか」
「色々出るよ。どこでいつ出るかわからないから、用心しないといけないんだ」
「人に馴れそうな魔獣はいないのですか。育ててペットにしたりとか」
「この辺りでは聞かないな。可愛い容姿をしていても魔獣だからね。人に危害を加えることもあるしね」

 今まで魔獣の話を聞いたことがなかったので私はとても楽しいです。

「ごめんね、明日もまたお昼を一緒に食べようね」

 時間になり、エディ様とお別れします。私が暮らすところはエディ様の住むお城から少し離れたところでした。陛下と皇后様、エディ様、アンディ様はそれぞれ別のお城に住んでいらっしゃるそうです。そして私はまた別のお城のような建物で暮らすのだそうです。

「何かあればすぐ連絡が取れるから」

 別れ際、グレン様がそんなことをおっしゃいました。大袈裟だなと思いましたが、別の建物と聞くと簡単にお会いできないようです。少し寂しい気持ちがしましたが、そんなことを言うことはできません。私は迷子にならないようにリズの後をついていきました。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】家族から虐げられていた私、実は世界で唯一精霊を操れる治癒精霊術師でした〜王都で癒しの聖女と呼ばれ、聖騎士団長様に溺愛されています〜

津ヶ谷
恋愛
「アリーセ、お前を男爵家から勘当する!」  理不尽に厳しい家系に生まれたアリーセは常に虐げられて来た。 身内からの暴力や暴言は絶えることが無かった。  そして16歳の誕生日にアリーセは男爵家を勘当された。 アリーセは思った。 「これでようやく好きな様に生きられる!」  アリーセには特別な力があった。 癒しの力が人より強かったのだ。  そして、聖騎士ダイス・エステールと出会い、なぜか溺愛されて行く。 ずっと勉強してきた医学の知識と治癒力で、世界の医療技術を革命的に進歩させる。  これは虐げられてきた令嬢が医学と治癒魔法で人々を救い、幸せになる物語。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

聖女ロボットが完成したので、人間の聖女はもう必要ないそうです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
エルディットは聖女として、アデライド王国の平和を守っていた。だがある日、若き国王ジェイリアムによって、その任を解かれる。……なんと、ロボットの聖女が完成したので、もうエルディットは不要とのことらしい。 「頭を下げて頼めば、残りの人生の面倒を見てやる」と言われたが、エルディットはそれを拒否し、国を出た。意にそわぬ相手に平伏するほど、プライドのない女ではなかったからだ。 そしてエルディットは、しばらく旅をした。 彼女は最終的に、遠い田舎で、のんびりと平和で幸せな人生を送ることになった。 一方、エルディットのいなくなったアデライド王国では、ジェイリアムがロボット聖女と共に、完璧なる国づくりを目指していた。 人間よりも優れた能力を持つロボット聖女の導きにより、アデライド王国はさらに発展していくが、完璧な国を目指すあまり、ジェイリアムとロボット聖女の行動はしだいにエスカレートしていく。 ジェイリアムはまだ知らなかった。 自分の判断のせいで、アデライド王国がいかなる末路を辿るのかを……

婚約破棄され、聖女を騙った罪で国外追放されました。家族も同罪だから家も取り潰すと言われたので、領民と一緒に国から出ていきます。

SHEILA
ファンタジー
ベイリンガル侯爵家唯一の姫として生まれたエレノア・ベイリンガルは、前世の記憶を持つ転生者で、侯爵領はエレノアの転生知識チートで、とんでもないことになっていた。 そんなエレノアには、本人も家族も嫌々ながら、国から強制的に婚約を結ばされた婚約者がいた。 国内で領地を持つすべての貴族が王城に集まる「豊穣の宴」の席で、エレノアは婚約者である第一王子のゲイルに、異世界から転移してきた聖女との真実の愛を見つけたからと、婚約破棄を言い渡される。 ゲイルはエレノアを聖女を騙る詐欺師だと糾弾し、エレノアには国外追放を、ベイリンガル侯爵家にはお家取り潰しを言い渡した。 お読みいただき、ありがとうございます。

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」  私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。  退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?  案の定、シャノーラはよく理解していなかった。  聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

【完結】聖女と結婚するのに婚約者の姉が邪魔!?姉は精霊の愛し子ですよ?

つくも茄子
ファンタジー
聖女と恋に落ちた王太子が姉を捨てた。 正式な婚約者である姉が邪魔になった模様。 姉を邪魔者扱いするのは王太子だけではない。 王家を始め、王国中が姉を排除し始めた。 ふざけんな!!!   姉は、ただの公爵令嬢じゃない! 「精霊の愛し子」だ! 国を繁栄させる存在だ! 怒り狂っているのは精霊達も同じ。 特に王太子! お前は姉と「約束」してるだろ! 何を勝手に反故してる! 「約束」という名の「契約」を破っておいてタダで済むとでも? 他サイトにも公開中

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

偽物の女神と陥れられ国を追われることになった聖女が、ざまぁのために虎視眈々と策略を練りながら、辺境の地でゆったり楽しく領地開拓ライフ!!

銀灰
ファンタジー
生まれたときからこの身に宿した聖女の力をもって、私はこの国を守り続けてきた。 人々は、私を女神の代理と呼ぶ。 だが――ふとした拍子に転落する様は、ただの人間と何も変わらないようだ。 ある日、私は悪女ルイーンの陰謀に陥れられ、偽物の女神という烙印を押されて国を追いやられることとなった。 ……まあ、いいんだがな。 私が困ることではないのだから。 しかしせっかくだ、辺境の地を切り開いて、のんびりゆったりとするか。 今まで、そういった機会もなかったしな。 ……だが、そうだな。 陥れられたこの借りは、返すことにするか。 女神などと呼ばれてはいるが、私も一人の人間だ。 企みの一つも、考えてみたりするさ。 さて、どうなるか――。

処理中です...