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  どこかの部屋に連れて行かれ、私はお風呂に入るよう言われました。メイドさんたちは必要なこと以外は話してくれません。朝早いから面倒に思われているのでしょうか。

「陛下がお待ちです。お急ぎください」
 1人のメイドさんに言われ、私も急ごうと努力しています。けれど慣れない場所なので、私はうっかりお風呂の中で滑ってしまいました。

「キャッ」

 何とか転ばずにすみましたが、別のメイドさんにため息をつかれてしまいました。申し訳ない、という気持ちで私はシュン、となってしまいます。

「とりあえず、お急ぎください。陛下をお待たせしております」

 その後は誰も何も話さず、ただ支度を急ぐという状況でした。そして、用意された服に袖を通しました。とても大きいサイズです。シンプルなワンピースなのですが、私が着ると袋をかぶっているみたいです。鏡で見てみると不恰好に見えるのですが、この国ではこれが正しいのかもしれません。

「準備ができましたね」

 メイドさんが声をかけ部屋を出ていこうとしました。そこにドアが開いて、すごく綺麗な女の人が入ってきました。

「皇后陛下」

  メイドさんたちが次々に膝をついて頭を下げました。私もそれに倣い、膝をつこうとしました。

「なりません」

 皇后陛下に止められました。

「聖女様は私よりも位が上です。陛下がお許しになれば、陛下よりも尊い存在です」

 皇后陛下は私の前で頭を下げ、そんなことを言い出しました。私はびっくりしてしまいました。メイドさんたちは震えています。

「こんな服を用意しろとエディは言ったの?」

 皇后陛下の声が怒っています。

「あなたたち、下がりなさい」

 メイドさんたちが静かに出て行きます。陛下がお待ちなのにいいのでしょうか。

「女の支度は時間がかかるって、陛下はご承知よ」

 皇后陛下の後ろに控えていた、別のメイドさんたちが私のそばに来られました。

「お綺麗な方ですね。この色でしたらいかがでしょうか」

 そう言って高そうなドレスを私に合わせます。

「そうね」

 正面に立ち皇后陛下は私をじっくり眺めました。品定めされているようで落ち着きません。

「あのメイドたち、例の侯爵令嬢の関係者よね」
「左様でございます」
「まだエディのこと諦めてないのね」
「なかなかお利口とは言えないお方ですから」
「エディも苦労するわね」

 世間話をしながら、皇后陛下とメイドさんは私に何枚もドレスを当てています。私はボーと立ったままです。

「アリスちゃん、だったかしら?」
「は、はい」
 唐突に話しかけられ、私の声が裏返りました。
「若いのに聖女様なんて、すごいわね」
「そ、そんなことありません」
「この服でいいかしら」
 見たことがないくらい綺麗なドレスです。私にはもったいない。
「うん、いいわね」
 満足そうにうなづくと
「じゃ、後で会いましょう」
 そう言って皇后陛下は部屋を出てしまいました。後に残ったのは、皇后陛下のメイドさんです。
「ではお任せください」
 数分後、私は立派なご令嬢になっていました。外見だけは、ですが。

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