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叔父さんは若い男性と一緒だった。金髪で青い瞳、優しそうな感じの男性である。その仕草から、高位貴族の方だろうなと思う。そんな方へとっておきのお茶を出す。前はミア専用のお茶だった。ミアは自分専用に高いお茶を要求したが、私たちにそれを飲むことを禁じた。隠れて飲んだら「私の大事なお茶を飲んだ!私がよその子だからだ」と騒いでいた。
何度も、お前はよその子だと言ってやりたいと思ったが、言ったら今度は外で何を言われるかわからない。結局それで彼女は増長してしまったのだ。
叔父さんは家出をした後外国に行き、そこで真面目に働いたそうだ。今では立派に会社を経営しており、その国の王族とも知り合いだという。その王族の王子が我が国に留学することになった。留学先がミアが通う学校である。
そこまで聞いて私たちはげんなりした。おそらくミアはやらかしたのだろう。そして王子に何かした。その文句を我々に言いに来たのだろう。いや、でもそうなるとミアを手放して我々に預けた叔父さんの罪はどうなる?
「その学校にミア・モローという子がいる。爵位は男爵。兄貴の子で間違いないか?」
叔父さんの問いに私たちは首を傾げた。
「お前の子だろう!」
父が立ち上がると部屋を出ていく。しばらくして手には封筒を持っていた。叔父さんの手紙だ。
「ほら、お前が死んでお前の子どもだというからうちは引き取ったんだ」
「悪いけど、あんな悪魔。うちの子なんて言ってほしくないわ」
母はあの地獄を思い出したのだろう。目が血走っている。デイジーもガタガタ震え出した。その様子を金髪の男性が呆気に取られたように見ている。いけない、こう見えても貴族の端くれ。こんな品のない様子を見せてはいけない。
「叔父さんが生きてるなら、あの子は誰? 叔父さんの子じゃないの?」
私は冷静に話し出した。叔父さんは父から預かった手紙を読み終わると顔を上げた。
「君はマーガレットだね。紹介が遅れてしまったけど、彼はレナード。王子の側近として一緒に留学してきた。まず、ミアという子のことだけど俺は知らない。この手紙も俺が書いたものじゃない」
「え?」
父の動きが止まった。
「筆跡は俺に似ているように思う。昔悪いことをしていたから、借用書などいろいろ書いてあったからね。それを見てマネされたかと思う」
「じゃ、あの子は一体」
「当時からワルの仲間の間でもピンクの髪の女に気をつけろって言われていたんだ。悪どいことも平気でやらかす女がいてね。おそらくその女の娘だと思う」
ピンクの髪は犯罪者なの?ひどい言われようだけど、今はそんなこと言ってる場合じゃない。ミアは何をやらかしたんだろう。
「10年前、兄貴は男爵になって新聞か何かにのったんだろう。モローの名前を聞いて女が閃いたんだと思う」
そうか、あの頃男爵になって余計なスキャンダルを避けたかったから叔父さんのこともろくに調べなかった。貴族だから奉仕の精神は当たり前って思って簡単に養女を受け入れてしまったんだ。
「お姉様の本当のお母さんは生きているの?」
ディジーが言った。いまだにミアのことをお姉様と呼ぶ。呼ばされて10年、本当はお姉様ではなく赤の他人だ。
「うん、生きてる」
デイジーを見る叔父さんの目は優しかった。
何度も、お前はよその子だと言ってやりたいと思ったが、言ったら今度は外で何を言われるかわからない。結局それで彼女は増長してしまったのだ。
叔父さんは家出をした後外国に行き、そこで真面目に働いたそうだ。今では立派に会社を経営しており、その国の王族とも知り合いだという。その王族の王子が我が国に留学することになった。留学先がミアが通う学校である。
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「お前の子だろう!」
父が立ち上がると部屋を出ていく。しばらくして手には封筒を持っていた。叔父さんの手紙だ。
「ほら、お前が死んでお前の子どもだというからうちは引き取ったんだ」
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母はあの地獄を思い出したのだろう。目が血走っている。デイジーもガタガタ震え出した。その様子を金髪の男性が呆気に取られたように見ている。いけない、こう見えても貴族の端くれ。こんな品のない様子を見せてはいけない。
「叔父さんが生きてるなら、あの子は誰? 叔父さんの子じゃないの?」
私は冷静に話し出した。叔父さんは父から預かった手紙を読み終わると顔を上げた。
「君はマーガレットだね。紹介が遅れてしまったけど、彼はレナード。王子の側近として一緒に留学してきた。まず、ミアという子のことだけど俺は知らない。この手紙も俺が書いたものじゃない」
「え?」
父の動きが止まった。
「筆跡は俺に似ているように思う。昔悪いことをしていたから、借用書などいろいろ書いてあったからね。それを見てマネされたかと思う」
「じゃ、あの子は一体」
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そうか、あの頃男爵になって余計なスキャンダルを避けたかったから叔父さんのこともろくに調べなかった。貴族だから奉仕の精神は当たり前って思って簡単に養女を受け入れてしまったんだ。
「お姉様の本当のお母さんは生きているの?」
ディジーが言った。いまだにミアのことをお姉様と呼ぶ。呼ばされて10年、本当はお姉様ではなく赤の他人だ。
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