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 前世の記憶かどうかはっきりわからないが、少なくともこの世界ではない世界で生きていたと言う記憶が私にはあった。そこで、平民出身のピンク色の髪の男爵令嬢が王族や高位貴族の方々と交際するというゲームがあった。

 ゲームでは男性には婚約者がいるが、それは親が決めた政略結婚であって愛があるわけではない。義務のような結婚は間違いだと諭し、自分を選ぶようにしていくのである。

 あくまでもゲームなので私も楽しんでいた。ゲームは男爵令嬢が主役なので彼女目線で話は進む。平民出身の彼女が行動していることが貴族世界ではNGだったりするので注意を受けるのだが、「私悪くない、貴族の女子ひどい」とばかりに受け取る。

 そうだ、当時の私は社会人で後輩の女性に注意をしたら「重箱の隅を突くような注意」と言われたのだった。「上司には、おっはーと言わずにおはようございますと挨拶しましょう」と言っただけなのだが。

 話の程度は違うのだが、当時私はそのゲームをやりながら「こういう場をわきまえない女は嫌だな」と思ったものだった。

 そこまで思い出し、改めて目の前の女の子を見た。

「今日からうちの子になる、ミアだよ。マギー、デイジー、仲良くするんだよ」

 父はそういった。私が7歳、デイジーが3歳、ミアは5歳だった。

 ミアは父の弟の子どもだそうだ。父の弟、つまり叔父さんであるが、私は会ったことがない。父と母が結婚する前に叔父さんは家出をして行方不明になった。成人しているのに仕事もせず、当時祖父の会社だった金庫から大金を盗み祖父と父にこっぴどく叱られたのが原因である。その事情を知ったのはずいぶん後になってから。当時は叔父さんがいたんだ、と思っただけだった。

 その叔父さんがどうやら亡くなってミアが1人になったそうだ。叔母さんはいないのかと思ったが、そのあたりはよくわかっていない。とにかく叔父さんが亡くなり、叔父さんが「自分はモロー家の次男。何かあればモロー家を頼れ」と言う手紙を残していたそうだ。

 男爵とはいえ元は庶民。それほどの贅沢はできないが、子どもが1人増えてもなんとかなる。それに貴族の端くれなら養女は当たり前、と両親は思ったのか、とにかくミアは今日から私の義妹、デイジーの義姉になった。
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