美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「だ、大丈夫ですから・・・」
「何言っているの?ダメだよ、無理しちゃ」

 殿下に抱き上げられた。お姫様抱っこというものである。実際、大丈夫と言ってはいるけど体が震えている。怖かったというより、安心したという方が強い。

 このままどこに行くのだろうかと思っていたら、殿下はまた部屋の隅の壁に向かう。そしてまた壁の中へ入っていく。

「マリアンヌちゃん!」
「よかった・・・」

 そこにいたのは陛下と皇后様だった。

「大丈夫?怪我はない?」
「怖かっただろう」

 お2人は勢いよく私に駆けつけてくる。その迫力に少々ビビってしまった。

「ダメですよ、リィが怖がっている」

 殿下が制止してくれた。お2人はピタリと立ち止まる。

「そ、そうよね」
「すまなかった」

 頭を下げる陛下。眉を八の字にして泣きそうな顔をしている皇后。

「だ、大丈夫です。ありがとうございます」

 申し訳なくなってこちらも謝罪するが、まだ殿下の腕の中。いつ下ろしてくれるんだろう。

「今、ドミニクが後始末をしている。終わったら連絡が入るから、それまではここで待機していよう」

 そうだ、大臣は無事なんだろうか。マーサやメアリは?お父様とお母様は?

「何があったんですか?」

 聞きたいことはたくさんある。でも全て答えてもらえるだろうか。国家機密みたいなこともあるかもしれないし、私には教えられないこともあるだろう。それでもこの国の一員として、私は知りたい。教えてほしい。

 私は殿下に下ろしてもらい、陛下の前に立った。そして真剣な目で陛下を見つめる。同じく陛下にも真剣な目で見つめ返された。すぐに陛下はいつもの優しい笑顔になる。

「妹のユティシアがリンゴンに嫁いだことは知っているだろう?」
「はい」

 土砂災害が起きた時に人材を派遣してもらったため、と聞いている。リンゴンに嫁がれなかったら、あのスティラート公爵と結婚させられていたそうだ。王女に生まれたのに気の毒だなと思ってしまう。

「もともとリンゴンとはいい関係を築いていたし、何の問題もなかった。しかし・・・」

 そこで言葉が途切れた。

「マリアンヌちゅあん、甘いもの、持っていない?」

 は?ここで甘いもの?

「だって、安心したんだもん」

 陛下が子供のような口調で口を尖らせている。

「そうよね、ここにいれば安心だし」
「時間がかかるかもしれないから、ゆっくり待たないと」

 皇后様まで何を言い出すんだ。ここは安全でも外は大変なんじゃないの?呑気にお菓子食べてる場合じゃないって。

「我々が無事であると分かれば、騎士たちは思う存分やれる」

 陛下はニコニコと無邪気に笑ってはいるけど、どこかいつもと違って見えた。緊張している、というか体に力が入っている、そんな感じ。そうか、陛下は決してお気楽な気持ちでいるわけじゃないんだ。自分が無事でいるために騎士がいる。騎士のために無事でいないといけないんだ。

 陛下はきっと私や皇后様、殿下のためにも平静を装っている。私が怖がらないように、安心するように。

 ソファに座って少し落ち着く。私の横には殿下。最初、殿下が膝の上に私を座らせようとしたけど、丁重にお断りする。殿下は不服そうな表情をしたけど、気にしない。常に携帯しているバッグを漁って何が入っているか確認。確か飲み物は冷たくしたビタ茶とスウィがあった。それを出し、他にも適当にお菓子を出していく。喉が渇いていたのか一気に飲み干してしまった。

 そしてしばらくお菓子を食べていた。落ち着いた頃、陛下が話し始めた。


 
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