美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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    変な緊張感で私は胸騒ぎがしていた。どこをどう歩いているのかわからない。ずいぶん長いこと歩かされたように思う。やがて一つの部屋の前で大臣が立ち止まった。辺りには誰もいないし、音も聞こえない。

 大臣はドアを開け、私を中に入るように促す。それに従い大臣の横を通るとき、彼が小声で言った。

「王族の一員となる儀式は済まされたんですよね?」

 え?と思ったが小さくうなづいた。大臣と目が合ったが、意図もよくわからなかった。ただ大臣がわずかに笑ったように見えた


「キュリロス様!やりましたね!」
「これでリンゴン国の繁栄は約束されました!」

 部屋に入った途端、騎士たちが騒ぎ出した。

「ど、どういうことですか?」

 身体中が急激に冷えていくのがわかった。怖い。この人たちは何を言っているのだろうか。彼らは肩を叩き合ったりして喜んでいる。

「我々はリンゴン国の者です」

 騎士の1人が言った。リンゴン国?何故よその国の人がいる?

「マリアンヌ様はリンゴン国に来ていただき、料理を振舞ってもらいます」
「マリアンヌ様の料理は能力を上げる作用があるのでしょう?」

 彼らの目つきは異様だった。気持ちが悪い目で彼らは私に言う。そうか、リンゴン国のユティシア様が私のことを知っているということは、スパイがいたということだ。交換留学を持ちかけて私の料理を食べるつもりが陛下に却下されたので実力行使に出たというわけか。

「マリアンヌ様がいれば兵士はいくらでも戦いますからね」
「我が国に兵を送ることもないだろう。この国の国王はマリアンヌ様を可愛がってるからな」

    レオポール兄様は騎士だが、主に魔獣を相手に戦っている。だから料理を食べて活力が湧くことは何の問題もないと思っていた。

    しかし、人も相手にできるのだ。リンゴン国は兵士の育成に私の料理を利用しようとしている。誰かを守るための騎士ではなく、誰かを傷つけるための兵士だ。

「利用できる娘だからだろう」
「妹のユティシア様を見捨てたくせにな」

 彼らの目つきが怒りに変わってきた。

「この国が災害で困っているというから助けてやったら王女を1人嫁に差し出してきた。だが我が国が困ってもお前の国は何もしない。もう長いことほったらかしだ」
「スタンピードで国が滅びると思ってザマアミロと思っていたが、救いの神が現れたんだ」
「お前の料理があれば、リンゴンは安泰。ついでにこの国も滅びれば世界は平和になるな」

 最初は様づけで呼ばれていたが、すぐにお前呼ばわりされた。言うことを聞かなければ何をされるかわからない。私は部屋の隅を見た。黄色い壁がある。なんとかあそこに近づけば・・・。

「マリアンヌ様、私はユティシア様専属の近衛兵でした」

 キュリロス大臣が私の前に立ち、話し出した。

「キュリロス殿、早く転移の術でリンゴンに向かいましょう」
「すぐに連れ出したことはバレると言ってたじゃないですか、さぁ、早く」

 彼らは急かしてくるが、大臣は一歩私に近づく。

「この国が災害で壊滅的な状態になった時、リンゴン国が手を差し伸べてくれました。ユティシア様は大変感謝され、リンゴン国からの申し出を受けられたのです。両国は友好国として共に発展するはずでした」

 そして、大臣はまた一歩私に近づいた。

「キュリロス殿!」
「まぁ、待て」

 1人の騎士が急かす騎士を宥める。

「キュリロス殿はもうこの瞬間を何年もずっと待っていたんだ。少しくらい待ってやってもいいだろう」

 彼の言葉を聞き、大臣の目が優しくなった気がする。

「リンゴン国は数年前から作物が取れず飢える国民が増えてきました。そのため援助を申し出たのですが、陛下は却下されました」

 陛下が?まさか。私は信じられない思いで彼を見た。あの陛下がそんなことをするとは思えない。

「ユティシア様は国内での立場を失いつつあります。ご自分の妹君であるのに、手を差し伸べない陛下に私も失望しました」

 私にまで気遣ってくれる陛下が妹のユティシア様を見捨てるなんてあるのだろうか。異母弟のドミニク様ともうまくやっているのに。

「ですから私も考えました。ユティシア様を救うためには、マリアンヌ様をリンゴンへお連れするのがいいだろうと思ったのです」

 大臣の言葉に私は目の前が真っ暗になった。震えながら彼をなんとか見た。彼はまた一歩私に近づく。反射的に私は後ろに下がる。近づいてほしくない。その気持ちだけで気づけば私は部屋の隅に来ていた。

 手を伸ばせば黄色い壁が触れる。

「さぁ、もういいでしょう」
「リンゴンに栄光あれ!」
「勝利はリンゴンに!」

 騎士たちが口々に騒ぎ出す。大臣を見ると静かにうなづいた。私は手を伸ばした。壁に触る。後のことは知らない。壁が消え、私は中に走り込んだ
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