美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 その後、私は案内された別の部屋で寛いでいた。メアリとマーサも明日のためにお城に来てくれている。マーサの入れてくれたお茶を飲みながら、ぼんやりしていた。

 2人とも明日の準備のため、先ほどから打ち合わせに余念がない。明日は分刻みどころか秒刻みのスケジュールらしい。陛下や皇后、殿下の準備に合わせるためには私がまごつくわけにはいかない。

 ゴンゴン、というやや強めのノックがして、2人は不思議そうに顔を見合わせた。

「どなたでしょうか?」
「何かこの後の予定ってあったかしら?」
「何もなかったはずだけど」

 この後の予定は夕食のみ。夕食は陛下たちと取る予定であるが、それまではだいぶん時間がある。マーサは確認しながらもドアを開けた。

「マリアンヌ嬢はおいでですかな?」

 そこにいたのはキュリロス大臣であった。ギョロリとした目で室内を見渡す。メアリがさりげなく私の前に立つ。

「マリアンヌ様はお寛ぎされております。ご用件を承りますが」

 マーサの声がやや緊張して聞こえた。あまり聞いたことのない畏まった声だ。キュリロス大臣の来訪は予定にないことなので警戒しているのだろう。

「明日の警備のことでお話がございます」
「警備のことでしたらドミニク様がご担当とのことで、先ほど詳細に打ち合わせをしましたが」

 マーサの返答にキュリロス大臣の口元が僅かに歪んだ。

「ドミニク様は王族のため、警備に当たられない方がよろしいだろうと先ほど決定が出ました」
「それでは、レオポール様のご判断をお待ちします」

 ドミニク様は第一騎士団の団長、レオポール兄様は副団長だ。この2人に警備されると聞いた時は驚いて辞退したかったが、これだけは譲れないと2人から言われた。陛下よりも厚い警備を受けることになるのだが、その価値はあると言われたばかりだった。

 それなのにすぐに話が変わるとは思えない。そんな決定が出たのなら、本人たちが言ってきそうなものだ。あのレオポール兄様ならそうするだろう。

「ドミニク様が任務から外れたため、レオポールも編成を組むので忙しい。そのため、私がわざわざお呼びに来たのです。大臣の私が来たというのに追い返そうというのですか?」

 キュリロス大臣の口調はイラついていた。しかし、レオポール兄様の代わりに大臣が来ることの方があり得ない。

「それでは、マリアンヌ様とご一緒に私も参ります」

 マーサが一歩キュリロス大臣に近づいた。

「警備は秘密事項のため、ご本人以外の方は聞くことはできません」

 屈むようにして大臣はマーサに言う。あの距離でそんなことをされたら、あまりの圧力に屈してしまうと思うのだがマーサは一歩も引かなかった。

「サーキス家の教えは私の言うことは聞くな、そういうことですか?サーキスは素晴らしい使用人を雇ってるわけですな」

 嫌味ったらしい言い方で大臣はマーサを見下ろしている。明らかにマーサを恫喝しているように思える。このことをお父様が知ればどうなるのだろうか。私を守るためとはいえ、大臣に従わないということはお父様の立場が危うくなるのだろうか。

「マーサ」

 耐えきれず私は声をかけた。

「キュリロス様、お話はすぐに済むのでしょう?」

 大臣の目が少し優しく見えた。ホッとしたような様子にも見える。

「ではこの部屋の隅で伺いましょうか?2人には声が聞こえないように離れてもらいますから」

 部屋の隅には黄色い壁が見えている。もしもの時はあそこを、と考えていた。

「いえ」

 しかし大臣は首をわずかに振った。

「王城の全体図を見ながら説明したいのです。それはここにはありませんので」
「そうですか」

 これ以上ここで話し合ってるわけにはいかない。明日の準備でみんな忙しいのだ。私もさっさと解放されたい。

「わかりました」

 マーサとメアリはやや不安げな顔で私を見ていた。私は安心させるように笑顔を見せ、軽くうなづいた。部屋の外に出ると、数人の騎士が立っていた。

「それではいきましょうか」

 先頭に立つ大臣の後ろをついていく。私の周りには騎士たちが取り囲む。何だか変な感じがした。騎士の人たちはいつも私を見ると微笑んでくれる。彼らにはそれがない。騎士が不用意に笑う方がおかしいのだろうけど、なんとなく違和感を感じた。
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