美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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    しばらくたって何とか落ち着いたので夕飯を再開することにした。冷めてしまったけど仕方がない。

「まったく、リリンを泣かせるなんて不届き者ぬだな」

    怒りながらもレオポール兄様はモグモグとハンバーグを平らげていく。気がつくと皿は空になっていた。

「お兄様、お代わりしますか?」
「いいのか?」
「はい、同じものでいいですか」

    今日のハンバーグは一人一人違うのだ。個人の好みで作ったのだが、レオポール兄様の分はチーズ入りの大きめハンバーグ、デミグラスソースをかけて厚切りのベーコンに目玉焼きをつけている。他にもニンジンのグラッセ、ホウレン草のソテー、ポテトフライは定番で全員につけている。

「ありがとう」

      レオポール兄様の笑顔が眩しい。

「僕にもいいかな?」

    フランツ兄様がナフキンで口を拭きながら片手を上げている。フランツ兄様のハンバーグは上にチーズを乗せている。

「お父様はどうされますか?」

    お父様のハンバーグは大根おろしとシソを乗せた和風ハンバーグ。

「う、うん。」

    少し歯切れが悪い。見ると大根おろしだけが先に無くなっていた。

「大根おろしをお持ちしますね」
「うん、頼むよ」

    お父様は大根おろしが好きなのか。ハンバーグに乗せるというより、大根おろしにハンバーグが入っているという状態で食べている。

    お母様と私の分はケチャップとソースと赤ワインで煮込んだソース。お母様は赤ワインをお供に品よく召し上がっているが、一口一口が大きいように思う。しかし決して下品には見えない。

 そして全員が気分良く食べ進めていた。しばらくしてお母様が2本目のワインをセバスチャンに頼んだ。お皿の上は半分ほど減っている。すごいな、一皿でワイン2本開けるつもりなのか。

「待って、確か1週間後に婚約発表って言ったわよね」
「そうですね、確か父上はそんなことを・・・」
「1週間後・・・」

 そうだ、1週間後は婚約発表。

「ドレス!ドレスはどうなっているの?」

 お母様はワインをグビっと飲み干した。すかさずマーサがワインをグラスに注ぎながら

「奥様のドレスは薄い緑色のドレスでいかがでしょうか」

と、囁いた。

「マリアンヌ様のドレスは急いでお作りします」

 メアリの目が輝いている。

「おまかせくださいませ。お嬢様の美しさを国中に知らしめるときです!」
「楽しみですわぁ。ついにお嬢様の美しさが爆発するのですから」
「今までどれだけシミュレーションしてきたか。ふふふ・・・、メアリ、気を引き締めていきますよ」
「当然です。腕が鳴りますわね」

 マーサとメアリの会話が怖い。とりあえず、あまり逆らわずに行こうと思う。


「明日からお顔のマッサージもさせていただきますね」
「奥様とお嬢様、お二人とも当日までに美しさを倍にして差し上げますわ」

 マーサとメアリがふふふと笑っている。悪魔のような微笑みに見えてしまう。

「お、お手柔らかに・・・」

 小さな声で私は答えた。その後お母様とマーサ、メアリは私のドレスやアクセサリーについて熱心に話し出した。こうなると長くなるだろう。その間にレオポール兄様は再度お代わりをした。結構なボリュームなのに勢いは衰えることもなく、ペロリと平らげていく。

 そうだ、ここであれを渡そう。取り出したのは家族に作ったブレスレットだ。一人一人の腕にわざわざつけてあげる。食事中に立ち上がるのは無作法だろうけど、気にしない。

「マリアンヌ・・・」
「天使ちゃん」
「リリン・・・」
「マリ・・・」

 みんながウルウルとした瞳で私を見ている。何となく照れ臭いけど、せっかく作ったんだしいいよね。

「リリン、せっかく作ってくれたけど石によっては魔獣が怯えたりするんだろう?クロニャンが怯えないように仕事の時だけつけていいかな」

 クロによると、レオポール兄様の石は眠くなって服従してしまう。ずっと寝るだけなので問題もなく、むしろ近くでぐっすり眠るので兄様からしたら喜ばしいことのはずだ。でも言わない。

「ええ、兄様のお好きになさって大丈夫です」
「クロニャン、にいにゃんはクロニャンの嫌なことはしないからね」

 兄様の隣の椅子に座ってご飯を食べているクロに向かって兄様は言った。

【お前の兄貴、本当おもしれーな】

 クロは石の影響か眠そうな目をしながらもそう言った。

「クロニャンは今日は色々大変だったから眠いんだね」

 そう言いながらレオポール兄様はクロを膝の上に乗せた。クロは丸くなって大人しく寝てしまったようだ。色々あったからではなくレオポール兄様のブレスレットの影響なのだが、平和なので何も言わず私はただその様子を眺めていた。





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