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しおりを挟む【お前の考えていることを当ててやろうか】
クロが笑いながら言う。猫なのに笑っているって不思議だが、人間であれば確かに笑っているはずだ。悪魔だから私の考えていることはすべてお見通しなのか。まさか今までも心を読まれていた?
「やめてよ、プライバシーの侵害じゃないの」
【いや、別に心を読んだわけではない】
クロは涼しい顔をしているが、その発言こそが心を読んだことになるのでは?
【別に心を読まずともお前の考えはわかるのだ】
思わず両手で頬を触る。表情でバレたのかもしれない。
【ともかく】
クロはコホンと咳払いをする。
【お前はブレスレットとやらをあの男に渡したいのであろう。しかし、俺様の反応を見て躊躇している】
クロがドヤ顔しているように見えてきた。確かにクロがあんなに怖がっていたことを思うと、ブレスレットはつけられない。でもせっかく作ったから残念な気持ちもある。
【紫は敬意、ピンクは友愛を感じる】
「石の色で感じるものが違うの?」
【あの石は魔力がある。だからお前とあの男に渡したいという石をつけても、魔獣は一定の距離を保ち攻撃はしないだろう】
「じゃあ、つけても平気なの?」
【あの石は大丈夫だ、だが黒い石はダメだ】
「黒い石?」
黒い石は確か紫を少し合わせたと思う。なかなかカッコよくできたので、陛下に献上しようかと思った。しかし、よく考えたら相手は国王陛下。親戚のおじさんみたいな気分でいたが、素人が作った貧乏くさいものをつけるような身分ではないのだ。
【黒い石はヤバい。あれは親爺様の魔力が入っている】
クロは思い出したかのように目を細めて緊張した面持ちでいる。
「親爺様?」
クロの親爺って悪魔の親ってこと?
【親爺様はすべての悪魔を統括している偉大なる大悪魔なのだ。親爺様の魔力を込めた石なら、たとえ砂粒でも恐ろしい】
クロは眉間に皺を寄せ、震えているようだ。
【すべての魔獣が逃げ出すぞ】
「紫の石と合わせたんだけど」
【では敬意も合わせ、全魔獣の王となれるだろう】
え?それヤバいよね。封印しておこう。
【魔獣は赤を見ると闘争心が煽られるし、黄色はやたら元気になる。緑は服従するだろう】
じゃあ、騎士の人は緑をつけたらいいのか。
【まあ、紫とピンクなら問題ないぞ】
クロの顔が何となくニヤついている。からかうようなそんな感じ。
【で、渡すんだろう?】
渡すことを前提で作ったのだが、いざ考えてみるとやめたほうがいいと思える。そもそも貰ったものを承諾もなく勝手に細工してしまった。しかも素人丸出しの手作り品のプレゼント。そんな重たいものは避けたほうが無難だろう。
普段忘れているが、相手は王族なのだ。いくら親しげに接してくれるとはいえ、やはり礼節を重んじるべきであろう。
【気にせず渡したらいいと思うぞ】
クロは欠伸をしながら素っ気なく言うが、こちらとしたら一大事である。渡して気に入られなかったら?殿下なら気に入らなくてもつけてくれるかもしれない。でもそんな気遣いをさせるのも嫌だ。
私がそんなことを考えているうちに殿下はゲルリーとの話を終えてこちらへ向かってきた。
【がんばれよー】
クロは私の腕から飛び降り、とっとと馬車に乗り込んでしまった。
「リィ、一人にして申し訳ない」
殿下は本当に紳士だと思う。そういった教育を受けているのだろうけど、元の世界ではこんな扱いを受けた覚えがない。そんな紳士である殿下なら私に恥をかかすような真似はしないだろう。
よし、女は度胸だ。
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