美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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クロとの別れを(数時間後には自宅で再会予定だけど)兄様がしばらくの間惜しんでいたが、ようやく離れることができた。ドミニク様が無理矢理に兄様を引っ張って行ったのである。

「クロニャン・・・にいにゃんはすぐおうちに帰るからね・・・、お仕事だから、仕方がないんだぁ!」

 兄様の声は最後は絶叫だった。声が徐々に遠くなっていく。兄様、いつからこんなことになったのだろうか。

「レオポール・・・、なんだか・・・ 大変な人間になったな・・・」

 殿下の言葉は妹の私に気を遣っている。慎重に選び無理矢理に引き出した感がある。申し訳ないという気持ちしかない。

「でも仕事はできるヤツだからな。大丈夫だ」

 何が大丈夫かわからないが、殿下は自分に言い聞かせるように小さく何度か呟いていた。私も心の中で呟いた。兄様が仕事をクビになりませんように。下手にクビにでもなったら、毎日クロをかまい倒すはず。金銭的には余裕もあるし。身上を潰したら迷惑だ。

 クロを抱き、殿下と歩く。馬車まで少し距離がある。2人きり、というわけではなく後ろから護衛騎士がついて来る。鬱陶しいなと思うけど、こういうことにも慣れていかないといけない。

「明日はもう少しゆっくり会えるように調整をしているから」
「明日・・・」

 殿下は学生でもあるが、仕事もしているはず。学校は今はまだ休校だが、そのうち復活するだろう。そうすると私とは会えなくなってしまう。それも寂しい。

「明日は何かあるのか?」

 殿下は不安な様子を見せた。

「いえ、何もありません」

 私に用事はない。毎日やることがないので料理をして過ごしている。というか、本当のマリアンヌは何をして過ごしていたのだろうか。公爵令嬢としての勉強のようなものをしていたとは思うのだが、学校には通っていない。家庭教師が来て勉強していたようだが、家にずっといて退屈だったのだろうな。

    そういった生活だったから嫌になって、私と交換ということになったわけだが。私になって良かったのだろうか。私はマリアンヌになって楽しいけど。

「あ、よかった。まだ居てくださったのですね」

 歩いている途中で出会ったのはゲルリーだった。

「お預かりしたこちらをお返しします」

 そう言って袋を差し出した。さっき作ったブレスレットが入っている。返してもらえるんだ、と私は少しホッとした。てっきり返してもらえないと思っていたのだ。

「いい研究ができましたよ」

 ゲルリーは満面の笑みである。

「殿下、これは素晴らしいですよ」

    興奮していることを何とか抑え、ゲルリーは話をし出した。が、徐々に抑えきれなくなったようで声が大きくなっていった。

「これは世紀の大発見です。未来永劫語られるべき事柄です」
「そうか」

 ゲルリーの勢いに圧倒されたのか、急に殿下は真面目な顔になった。そしてゲルリーの話に耳を傾けている。仕事モードということだろう。

    私は2人から距離を取り様子を見ていた。袋の中を見たいけど、クロに申し訳ないので何もできない。すると、大人しくしていたクロが動き出した。
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