美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「リリン、何も気にしなくていいからね」
「そうそう、あいつはああいう奴で嫌われているんだ。陛下も困ってるくらいだから」
「リィ、俺が不甲斐ないせいで傷つけてしまった・・・。ごめん」

 大臣が去った後、私はレオポール兄様、ドミニク様、そして殿下から慰められていた。

【あいつ、生意気なヤツだな。よし呪ってやろう】

 クロが兄様の腕の中から顔を出した。呪う?いや、ダメでしょ。しかしクロは目を爛々と光らせている。

 クロの中身は悪魔だ。しかも人のマイナス感情が好物で残忍に人を殺してもなんとも思わない奴だ。いくら気に入らない相手でもクロに殺させるわけにはいかない。

「クロ、ダメだよ」

 思わず声が出た。クロの声は私にしか聞こえない。

「ほら、クロも大臣が嫌いって言ってる」

 兄様が都合よくクロの言葉を代弁した。嫌いどころか呪うと言っています。言いたいけど言えない。

 クロがニャーと鳴いた。その鳴き方がどこか意味ありげに聞こえる。そして私の耳に聞こえてきた。

【今日から1日1本ずつ頭の毛が抜けていく。そして生えることはない】

 ビシッとカッコよくクロが言った。それはもう清々しいくらいに。

【いつかあいつはつるっぱげになるのだ。人間にとってとてつもない敗北を味わえばいいのだ】

 毛が1日1本ずつ抜ける?短髪だし気にならないんじゃないかな?それにああいう人は毛がなくてもカッコいいかもしれない。元の世界で見た海外の映画俳優さんにそんな人がいた。と、勝手に俳優に置き換えて、案外いいかもなんて思ってしまった。

「マリアンヌ様、私ごときの発言をどうかお許しください」

 部屋の隅でずっといたであろう数人の騎士が近づいてきた。おそらく私が大臣の発言で傷ついたと思ったのだろう。みんな心配そうな顔をしている。クロの呪いで毛が抜けた大臣は、案外かっこいいかもしれないと馬鹿な想像をしていたのだが。

「マリアンヌ様のおかげで我々は、安心して魔獣と戦うことができています」
「今まではお腹が空いて何もできませんでした。魔獣を前にしても逃げるのが精一杯だったのです」
「私のいとこも騎士でしたが、力が出なくて魔獣に足を噛まれました。命は助かりましたが、怪我は治らないままです。あの時ギュウドンを食べていたら、いとこは戦えたと思うのです」

 彼らの声を聞いて嬉しくなった。実はそれほど大臣の言葉を気にしていたわけではない。確かに頭には来たけど、こういう人ってどこにでもいるのだと感心したくらいだった。元の世界でも根性で全て解決すると思ってるヤツとか、他人を全てダメ出しして自分の方が上だと思い込みたいヤツとか。とにかくそういうヤツはたくさんいた。

 気にはなるけど気にしたら負け。そう思ってやり過ごすしかないだろうと思う。特に相手が自分より身分が上であれば仕方がない。

 それよりも私のことを気にしてくれる人がいることの方が嬉しかった。私が名前も知らない人なのに私のことを気遣ってくれるのだ。その人たちに報いたいという気持ちの方が強かった。

 だから許されるなら酒場に料理を提供したいなと思う。騎士の人たちは基本的に寮で生活をしている。仕事でもプライベートでも同じメンツなのだ。どれだけ仲が良くてもうまくいかない気分の時もあるだろう。そう言う時に逃げ場があれば翌日からまたうまくやっていける。そう思うのだ。





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