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そう言って通されたのは魔法省の部屋の一つである。二日酔いを治してしまったクロを魔法省で詳しく調べようということになった。本来はレオポール兄様が連れていくはずだった。しかし
【嫌だ!俺様を実験材料にするなど笑止千万。人間のくせの生意気であろう。呪うぞ】
と、クロが嫌がったのだ。しかしこんな言葉は私以外聞こえておらず、みんなはニャーニャーと可愛らしく抵抗するクロを見て破顔していた。
「クロニャン、痛くないし怖くもないから」
と、レオポール兄様が抱き上げようとしたが引っ掻いて逃げてしまった。レオポール兄様はショックを受けて茫然自失。
「クロニャンに嫌われてしまった・・・」
と、泣きそうになっている。仕方なく私が逃げたクロを追いかける。
「クロ、さっさと出てきて」
【クソー、人間め。俺様を何と心得る】
心得るも何も黒猫でしかない。他のみんなは魔獣と思っているが、害も少ない可愛い個体と思っているだろう。
「二日酔いを治したあんたが悪いのよ」
【何をっ。大体美味しそうなものを垂れ流した人間が悪いのだ】
「いいから、大人しく連行されなさい」
さっさと行ってもらわないと、全員が何もできないのだ。別にいいのに、なぜだか陛下までクロを魔法省へ送り届けるつもりでいる。大変めんどくさい状況になっているのである。
【ググっ。わかった、ではお前と一緒なら行ってやろう】
「なんで私?」
【そして俺様におやつを出すのだ。そうしたら実験台になってやろう】
擦ったもんだがあったが、クロは大人しく私に抱かれ魔法省に来た。そして別室に連れていかれ、私は1人ヒマである。そこで取り出したのが以前殿下にもらったお守りの石である。いろんな色の細かい石がたくさんある。それを利用して私はあるものを作ろうとしていた。
「できたー!」
私が作ったもの。ブレスレットというか、ミサンガというか、バングルというか。綺麗な色の糸を編んでそれに石を貼っつけた腕輪である。一つは紫色の糸に石も紫にしてピンクの石で十字に模様を入れた。もう一つはピンクの糸にピンクの石で紫の石で十字に。色違いのおそろいって感じ。
思いのほかうまくできたと思う。当然殿下とおそろい、と思って作ったわけだ。でもいざ出来上がってみたら、なんだか急に恥ずかしくなった。でもまぁ、渡さなくてもいいかもね。だって、こんな素人が作った腕輪なんて使わないだろう。相手は一国の王子なのだ。こんな貧乏くさいもの、つけるはずもない。
とはいえ、ヒマを持て余しているので他にも色を変えて作ってみる。糸も石も豊富にあるので楽しかった。
【終わったぞー。おやつをよこせー】
しばらくしてクロが戻ってきた。
「いい子でしたよ、クロは」
そう言いながらゲルリーがクロを連れて来てくれた。ずいぶん時間が経っていたようだ。忘れていた。私が振り返ると。
【お、お前・・・。何をしている・・・】
クロの様子が変だ。怯えたように硬直している。
「え?」
【な、何を手にしている。お前、俺様をどうする気だ!】
クロに近づこうとした途端、フギャーという鳴き声をともにクロが部屋の隅に隠れた。
【やめろ、近づくな】
クロの中身は悪魔のはずだ。しかし今のクロは恐怖のあまりガタガタと震えている。
「マリアンヌ様、何をお持ちなのですか?」
ゲルリーに私はできたばかりのブレスレットを渡した。
「これは?」
「ヒマだったので作ったんです。クロがここまで怯えるなんて・・・」
ゲルリーはニヤニヤと笑っている。
「もう少し調査が必要ですね」
【この悪魔め。地獄に堕ちろ】
クロの声を聞きながら、せっかく作ったブレスレットをどうするか考えていた。
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