美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 キッチンから出てくると、殿下とダニエル様はまだ話していた。

「なるほど、リィは朝は控えめなのか」
「はい、むしろ昼を多めに食べられていますね」
「で、朝の表情は・・・?」
「いつも朗らかで優しい笑顔ですよ」
「朝から機嫌の悪い奴もいるだろう。ああいうのは困るな」
「そうですよね。その点マリアンヌ様はそんなことはありません」
「そうか・・・」

 なんで私のこと話してるのかな。変なこと言ってないよね。

「あっ、リィ。今話していたところだ」
「マリアンヌ様、それは・・・」

 私の持っている皿を見るとダニエル様が身を乗り出してきた。ついに登場、アップルパイとアイスである。

「新作か」
「はい、アイスクリームといって冷たいお菓子です」
「うわぁ」

 2人の前に皿を置く。しかし2人とも見つめるだけで食べようとしない。

「美味しいですよ」
「わかっている。でももうしばらく眺めていたいんだ」

 殿下は目を反らさずにじっと見ている。アイスクリームを見ているだけなんてダメだ。溶けるじゃないか。

「ダメです。ほら、食べてください」

 私はスプーンでアイスを掬うと殿下の口元に持っていく。

「ほら、あーんですよ。あーん。口を開けてください」

 殿下が動かないのでスプーンを唇に軽く当てる。

「ほぉら、冷たいでしょう?甘くて美味しいですよぉ」

 今度はスプーンをわざと殿下の唇に押し付けてみた。少し口が開いたい瞬間にスプーンを差し入れる。

「どうですかぁ?」

 殿下の顔を覗き込むと、プルプルと震えている。うんうん、美味しいよね。アイスクリーム。感動ものだよね。きっと。

「・・・」

 殿下は何か小さく呟いているようなのだが、よく聞き取れない。よく見ると顔が赤くなっている。顔を赤らめるほど興奮しているのね。この世界ではアイスのような食べ物ないもの。

「僕も、僕もアーンして欲しいです!」

 ダニエル様が立ち上がって言う。は?アーン?・・・その時になって私は殿下にアーンして食べさせたということに気がついた。恐る恐る周りを見ると。

 微笑ましく見つめている人、期待を込めたような目で見つめる人、にこやかに笑っている人、そして。視線だけで殺されそうなくらい尋常ではない目つきでこちらを見てくる人たち。

 マズイ。私、相当やらかしてしまったようだ。

「俺様にも、俺様にもよこせ!」

 そこへクロが飛び出してきて強請ってきた。

「クロも食べたいんだねぇ、持ってくるからね」

 この空気に耐えられず、キッチンへ逃げた。はー、そんなつもりじゃなかったのに。殿下、嫌じゃなかったかな。少し心配になるが、気にしても仕方がない。開き直ることにする。

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