美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

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「そうとなったら、しばらくは王都に止まらないと」

　バーンヒル様は興奮したようにブツブツと何かを呟いている。ちょっと怖い。

「マリアンヌ様のイメージカラーはやはり白でしょうか。ジュエリーはパール？でもそれだと面白みがありませんわね」

　バーンヒル夫人も何やら呟いている。時々ニヤリと笑っている。かなり怖い。

「ステファニー様、お手伝いしてくださいますわよね」

　バーンヒル夫人がステファニー様に声をかけた。

「当たり前ですわ。他ならぬマリアンヌ様ですもの。社交界の新しい花をこの手で育て上げましょう」

　2人は手を握り合っている。

「そうと決まれば乾杯ですわ」
「そうですわね」
「私も混ぜてもらいたいわ」
「母2人が混ざれば怖いものなしですわ」

　お母様と皇后様まで手を握り合い、4人で作戦会議が始まった。

「若いですから新しいものも取り入れないと」
「ですが伝統を忘れてはなりませんわ」
「そうですわね、この2つを融合させて新しい風を」
「マリアンヌちゃんのためなら、いつでも王家の宝石を放出しますよ」

　そう言い合うと全員は新しく注がれた日本酒をぐびっと飲み干す。その迫力はすごいものがあった。

「宿舎の前なんていい立地条件、無視できないな」
「何かできるといいのですが」

　一方男性陣はまだ諦めていないようで、チラチラと私とお父様を見ながら話を続けている。ビタ茶とスウィのお茶を飲んだドミニク様は何度も感心したように首を振っていた。

「これはうまいな」
「そうでしょう？訓練の後に飲んだら最高ですよね」
「あぁ、でも訓練の後はこのビールが・・・」

　チラッと私を見るドミニク様。私よりお父様を説得してください。

「地方の領地にある名産物を集めて販売するってどうでしょうか」

　物産展とかアンテナショップって面白いし、元の世界で私はよく行っていた。気軽に旅行に行った気分になったし、食べたことのない名産品を食べるのも楽しかった。

「地方の領地？」
「はい、あちこちの領地から集めて一ヶ所で販売したらきっと楽しいと思うんです」
「なるほど」
「それはなかなか名案かも」

　男性陣が盛り上がり出した。日本酒をみんなグビグビ飲んでいるけど大丈夫かな。

「マリアンヌ様、明日の朝食は何ですか？」

　明日の朝食？突然ダニエル様に聞かれて私は首を傾げた。夕食の席で明日の朝食の話題って・・・。朝食のこととか考えられないけど。

「何が食べたいですか？」

　答えが浮かばず聞いてみた。ダニエル様はチラリと殿下を見ている。

「パンケーキがいいですぅ。クロの顔のパンケーキ！」

　猫の顔のパンケーキを作れとな？キラキラした目で私を見ながらおねだりされる。可愛いから許すけど。

「いつも、こうなのか？」

　目の前で殿下に聞かれる。少し不機嫌な様子だ。

「はぁい、マリアンヌ様はぁ、いつも優しくて、僕の好きなものを作ってくれるんですぅ」

　なんだ、その言い方。ダニエル様の変貌ぶりに私はあんぐり口を開けてしまう。

「いつも？」

　殿下のこめかみがピクピクしている。いつもそんなことしていない。いつも作っているものがダニエル様の好きなものだっただけである。というより、嫌いだと言われてものもないのだが。

「マリアンヌ様とはいつも朝食を一緒にしてるんですぅ」

　それは一緒に暮らしてはいるので仕方がない。ふた家族全員で朝食をいただいているけど？ダニエル様はキラキラした目で殿下を見つめ、殿下は顔中をピクピクさせている。なんかめんどくさいのでキッチンに行くことにする。2人で勝手にやってくれ。