美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「マリアンヌにあまり負担をかけさせたくない」

 お父様がキッパリと宣言した。特に負担を感じてはいないが未成年だし、陛下との約束もあるのであまり色々活動するのは控えた方がいいだろう。

「残念ですな」
「しかし店は何かやりたいですね」
「場所がいいから何かできるのではないですか」
「ビタ茶とスウィを出すお店はどうでしょうか?」

 途中まで盛り上がっていたので申し訳なくなって提案してみた。

「それですわ!」
「あれなら売れますわね」

 みんなが盛り上がり出した頃、セバスチャンがお父様に何かを耳うちしている。お父様の目が見開いた。いつも落ち着いているセバスチャンの様子がどこかおかしい。目つきに余裕がないように見える。お父様は立ち上がって部屋を出ていった。

 すぐに部屋の外がざわつき出した。

「へ、陛下!」

 陛下と皇后、ドミニク様、殿下が入ってきたのだ。王族ファミリー勢揃いである。全員立ち上がってお辞儀する。しかしチュニックとイージーパンツという超絶カジュアルな服装である。滑稽すぎて笑いそうになるのをグッと抑える。

「頭を上げなさい」
「そうよぉ、勝手に来ちゃったんだから」

 にこやかな王族ファミリーだが、そう簡単に緊張がほぐれるわけでもない。全員きっと酔いも醒めただろう。いや、もしかしたら悪酔いしてしまったかもしれない。何故いきなり訪問してきたのだろうか。掟破りすぎる。というか、ヒマなわけがないはずだ。

「バーンヒル公爵が訪問してると聞いて、絶対美味しいものを食べてるはずだと思ったんだ」

 陛下のまさかの食いしん坊発言。絶対美味しいものを食べてるはず?

「そうしたら食べたくなっちゃって」

 皇后様、ワガママでは?人の家に勝手に来て食事を要求?

「たまにはいいですよね」

 ドミニク様、たまでもよくないです。

「リィ、今日のご飯は何?」

 殿下、爽やかな笑顔でたかるのはやめてください。

 追い返せる相手ではないので、使用人たちが総出で座る場所を準備する。私もキッチンへ戻る。我々が手をつけたものを差し出すわけにはいかない。勝手に来たのにきちんと用意しないといけない。元の世界だったらキレてもいい案件。

 すぐに用意をし直して、仕方なくではあるが王族の皆様を迎える。

「いや、悪いな」
「ごめんなさいね」
「美味しそうだな」
「リィ、これ何?」

 もう一度、乾杯をする。大人たちはビールのジョッキを掲げる。

「うわっ、これは何だ?」
「美味しいわぁ」
「ング、ング、ング・・・ぷはー」
「リィ、早く成人して、一緒にあれを飲もう」

 王族の皆さん、いちいちうるさいな。順番に喋るのはやめてほしい。

「これは美味しい飲み物だな。今までの酒とは違う」

 一気飲みしたドミニク様はすぐに2杯目を手にしている。

「そうなんです。仕事終わりにこれを呑める店があればって話していたんですよ」

 レオポール兄様の言葉にドミニク様が反応した。

「それはいいな」
「ですよね?で、宿舎の前に住んでいない家を公爵様が所有しているのでそこで店をやりたいなって話していたんです」

 酔った勢いか兄様は口を滑らせる。

「あのボロ・・・、ゴホンゴホン・・・あの風情のある屋敷か?」

 今、ボロいって言いかけましたね。ドミニク様。

「なるほど、あそこなら近くていいな」
「ですよね?」

 ドミニク様が盛り上がり出した。

「いつオープンするんだ?」

 3杯目のビールを片手に枝豆を摘んでドミニク様は上機嫌だ。

「店ができるとわかれば訓練にも身が入るというものだな」
「えー、勘弁してくださいよー」

 レオポール兄様とノートルが嬉しそうに会話している。普段の様子が窺える。和気藹々という感じだ。

「マリアンヌの料理は出しませんよ」

 お父様は少し離れた席にいたが、聞こえたのか釘を刺す。

「これ以上マリアンヌの負担を増やせません」
「えー、それじゃあ、計画はなしだな」

 ドミニク様は心底残念そうに言うとビールを一気に飲み干した。セバスチャンがすかさず4杯目を用意している。

「確かに残念だな」

 陛下も残念そうに言うが、お父様の方を見ると急に

「で、でもマリアンヌちゅあんを思うと仕方ないな」

 と、言い直した。お父様、何か力を使いましたね。

「ところで何で水を飲んでいるんだ?」

 陛下が気づいてしまった。

「うふふ、これでですねぇ」

 お母様のテンションの上がった声。地獄の飲み会スタートである。



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