美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「こんな一口ずつじゃ忙しないわ。もっと大きなグラスを持ってきてちょうだい」

 注いだら飲むと繰り返していたら、ついにお母様がキレてしまった。仕方がないのでワイングラスに日本酒を注いでいる。ちょっとおしゃれだが、飲む量は半端ない。

「一見お水のようにも見えますわね」
「それがいいですわ」

 そう言いながらステファニー様、バーンヒル夫人はワイングラスを傾けている。

「昔は女はお酒を飲むなとか言われましたの。ワイングラスに水を注がれて。男どもはワインを飲んで大騒ぎをしているのに、女は水を飲んで大人しくそれを見ていないとなりませんでしたのよ」

 バーンヒル夫人はそう言ってグラスを飲み干す。そのタイミングで私はお酒を注ぐ。

「ありがとう、男は無能のくせに偉そうで。女を押さえつければ自分の無能ぶりが誤魔化されると思っているんですわ」

 またもグラスを傾ける。ゴクンゴクンと飲み干すので、私もまた注ぐ。男性陣はおちょこでチビチビと飲みながら、時々水も飲んでいる。

「いいですな、これは」
「水を飲みながら料理と酒を楽しむ。しかも極上の料理ですよ」
「こんな時代が来るとは思わなんだ」

 ワハハ、と笑い声が聞こえる。

「あの本を読めたなら次のおすすめはあれですね」
「読めるでしょうか」
「ダニエル様なら十分に理解できると思いますよ」

 ダニエル様とノートルは本の話題で盛り上がっている。

「これは食べられる?」
【うほほ、魚だな。俺様は肉が好きだがこの体は魚も好きなのだ】

 何故だかベルナルト様がクロの世話をしている。クロが何かをするたびにメモを取っている。

「魔獣の研究もやってみたら面白いものだな」

 クロの中身は悪魔で通常の魔獣とは別物なのだが、教えるわけにいかないので黙っておこう。

【うむ、お前はなかなか気が利くな。お前を俺様のシモベとしてやろう。せいぜい俺様の役に立て。あの肉団子を献上するのだ】

    クロが何を言ってるかわからないのは幸せだなと思う。が、うまくいってるので気にしない。

「ふー、えらい目にあった」
「油断大敵とはこのことですね」

 復活したのかレオポール兄様とフランツ兄様が戻ってきた。すぐに復活できるとは。恐るべし、お母様の遺伝子。

「あなたたち、なんて不甲斐ないのかしら」

 お母様が2人を見つけると怒鳴りつけた。

「お酒ごときで倒れるなんて。それでも騎士ですか、男ですか」

 お酒ごときって・・・。

「お母様、お酒は強要するものではありません。先に飲んだビールは楽しんでいただきましたので、このお酒が合わなかっただけでしょう」
「マリアンヌ・・・」
「それよりお料理を楽しんでいただきたいです」
「なんて、優しいんだ・・・」
「女神・・・」

 兄様が感激したように私を見つめる。いつもより熱っぽさを感じるのはまだお酒が残っているせいであろう。

「お酒を飲めないことを責めてるのではありませんよ。お酒を飲んで醜態を晒したりすれば、どんな問題に発展するかわからないのです。我々は王族に次ぐ立場であると肝に命じなさい」

    気づけば、お父様もバーンヒル様もみんなうなだれている。肝に命じている最中なのだ。

「酔ったうえでの過ちで破滅した方、たっくさんいらっしゃいますしね」
 
   朗らかなバーンヒル夫人の声が響くのだった。





 
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