美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 お父様たちとお母様たちはまだランチタイムにはならないようである。とりあえず用意だけして私とダニエル様とノートルが先に食べることになった。

 今日のランチはビュッフェスタイルにする。洋食と中華と和食を織り交ぜて色々出す。その方が楽しいと思うんだよね。・・・というのは建前。単に色々作ったので、というのが正解。

「わぁ、こんなにいっぱい」

 ダニエル様が目を輝かしている。お子様ランチみたいに旗でも立ててあげたらいいかなと思ったが、この世界には旗がなかった。国旗とかもないのだ。ないなら仕方がない。

【おい、この肉とあの肉とその肉をよこせ】

 クロに命令される。さっきまで食べていたと思うのだが、まだまだ食べるようだ。

【お前たちと遊んでやっただろう。あれで消化されてしまったぞ】

 まるで初めて見て初めて食べるみたいにクロは言う。つくづく図々しい悪魔である。

「こんなに頂いていいのでしょうか」

 恐縮している様子ではあるが、がっつりと皿の上に乗せていくノートル。美男子でほっそりしているのに大食いである。大食いの男子はいい。たくさん食べてもらいたい。

「どれが美味しいか教えてくださいね」
「みんな、美味しいでしゅ」

 頬張りすぎてちゃんと話せないダニエル様。可愛い。天使である。

「これも美味しいですね。あぁ、こちらも美味しいです」

 ノートル様は微笑みながら、それでも皿の上の料理がどんどん消えていく。上品だなぁと感心してしまう。

【これ。これが美味い。いや、こっちか】

 皿に顔をくっつけて食べていくクロ。食べながらも声は聞こえてくる。

 2人と一匹の様子を見ていると、肉団子は優勢のようである。私はやや甘めが好きなのだが、酸っぱめが好きな人もいるしこれは好みであろう。

「私もこちらのお料理が大変美味しゅうございました」

 様子を見ていたセバスチャンがこっそりと教えてくれる。

「使用人たちもこのお料理は特に取り合いになりました」

 どうやら肉団子はぶっちぎり一番である。ではいつも出せるように大量にストックしておこう。

「マリアンヌ様はどうしてこんなに美味しいものを作れるのですか」

 目をキラキラさせたダニエル様に聞かれた。そんなに美味しいかな。ふと思う。元の世界では、美味しいと言ってもらえたことは少なかった。人間は慣れていくものだ。美味しいと言われるのは最初だけ。次からは言われない。

「私、食いしん坊なんです」

 ダニエル様が首を傾げた。食いしん坊という言葉はこの世界にないのかもしれない。

「美味しいものが好きなんだと思います」

 そうだ、私は食べることが好きなのだ。好きだからこそ、作りたいのだと思う。そして、
それを人に勧めたいのだ。

 これって、美味しいよね。

 そう言って、相手の賛同を得たい。相手も同じように思ってほしいのだ。

「僕も美味しいものが好きです」

 ダニエル様がにっこり笑って言ってくれた。

「マリアンヌ様が作ってくれたもの、美味しいし大好きです!」

 ダニエル様の言葉に私は思った。天使なだけではない。ダニエル様は悪魔かもしれない。小悪魔って、男の子にも当てはまるっけ。私が色々と考えている中、ダニエル様はニコニコと食べ続けていくのだった。

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