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「いつもながら美味しいものしかないな」
「本当、これはいくらでも食べられそうだわぁ」
「リリン、これをもっともらえないだろうか」
「兄上、5個目ですよ。食べ過ぎではないですか」
【うまいな、俺様の舌に合う食べ物を作れるのはお前だけだな】
肉団子とシュウマイを夕飯で出したが、好評だった。
「バーンヒル様もお気に召していただけるでしょうか」
「当たり前だろう、こんな美味しいものを食べたことがないだろうから仰天するぞ」
「これ、お酒と合うと思うのよ」
「母上、明日のために今日は控えてください」
「兄上、7個目ですよ」
家族で話をしながら食事をする。異世界の貴族なんて堅苦しいところに転生したけど、案外アットホームなところで幸せである。話の内容も庶民的で大変よろしい。
「レオポール兄様、肉団子がお気に入りですね」
「うん、この甘酸っぱさがいいね」
「私はこの白いのがいいわ。お酒に合うわよね」
「お母様はシュウマイですね。明日のためにすごくいいお酒があるんですよ、楽しみにしてくださいね」
お母様は嬉しそうだが、お父様は少し不安な顔をした。お父様のグラスだけ水にしておこう。セバスチャンにも言っておかなくちゃ。
そんな感じで夕食は終了した。
夕食が終わり部屋に戻る途中メアリに会った。明日の準備で忙しそうである。邪魔しないようにと思ったのだが、メアリが何故か私をじっと見つめてきた。
「お嬢様・・・」
どこかよそよそしい言い方に感じられる。
「忙しいよね、明日、よろしくね」
できるだけ笑顔で明るく声をかけた。すると。
「お嬢様、ひどいではないですか」
え?何が?と思っていると、メアリの目から涙が零れ落ちた。
「何故あの2人にだけ味見係を任せたのですかっ!私では無理と判断されたのでしょうか。食い意地なら誰にも負けないのに」
メアリは悔しそうに唇をかみしめ、怒りのためかワナワナと震えている。顔色がどす黒い。
「マーサが勝ち誇ったように私に言ったんです。お嬢様の新作料理の味見を任されたって。セバスチャンは分かります。でも私ではなく何故マーサが・・・」
いやそれは、あの2人がバーンヒル公爵と年齢が近いから。他に理由はないのだけど。
「お嬢様、私はお嬢様がお生まれになった時からこのお屋敷でお世話になっております。お嬢様を立派な淑女にご成長されるよう尽力を尽くして参りました。それなのに・・・、味見を任せて頂けないなんて。信用されていないということでしょうか」
メアリはハンカチでブブーと盛大な音を出して鼻をかんだ。顔は涙と鼻水でグチャグチャである。けっこうな美人さんなのに台無しだ。
「メアリ、バーンヒル様のご年齢があの2人に近いから味見をお願いしたの」
とにかく優しく丁寧に説明をする。しかし、メアリの機嫌が直る気配はない。口をとがらせて頬を膨らませて、まるで子どものように拗ねている。
「メアリを信用していないわけないじゃない。私にとっては姉のような存在よ」
嘘を言ってはいない。いつもメアリの事をありがたいと思っている。
「でも・・・、私のことなんて・・・」
だが、メアリはグジグジと言い続けている。だんだん面倒くさくなってきた。
「メアリには実はデザートの味見をお願いしようと思ってたの」
そんなつもりもないのに、つい私は口に出してしまった。
「えっ、デザート?」
メアリの目が急に輝きだした。
「ほ、ほら。デザートはどちらかというとメアリの得意分野じゃない?食事とデザートの味見だとお腹がいっぱいになって正しい意見が聞けなくなるから」
やぶれかぶれだ。私はやけになってベラベラと話し続ける。
「お、お嬢様」
メアリの機嫌が直ったようだ。鼻歌を歌いながら「明日の準備に精を出しま~す」と言って行ってしまった。
私はため息をつきながらキッチンに向かう。デザートはあるものにするつもりだったが、しかたがない。私は何を作るか考えていた。
「本当、これはいくらでも食べられそうだわぁ」
「リリン、これをもっともらえないだろうか」
「兄上、5個目ですよ。食べ過ぎではないですか」
【うまいな、俺様の舌に合う食べ物を作れるのはお前だけだな】
肉団子とシュウマイを夕飯で出したが、好評だった。
「バーンヒル様もお気に召していただけるでしょうか」
「当たり前だろう、こんな美味しいものを食べたことがないだろうから仰天するぞ」
「これ、お酒と合うと思うのよ」
「母上、明日のために今日は控えてください」
「兄上、7個目ですよ」
家族で話をしながら食事をする。異世界の貴族なんて堅苦しいところに転生したけど、案外アットホームなところで幸せである。話の内容も庶民的で大変よろしい。
「レオポール兄様、肉団子がお気に入りですね」
「うん、この甘酸っぱさがいいね」
「私はこの白いのがいいわ。お酒に合うわよね」
「お母様はシュウマイですね。明日のためにすごくいいお酒があるんですよ、楽しみにしてくださいね」
お母様は嬉しそうだが、お父様は少し不安な顔をした。お父様のグラスだけ水にしておこう。セバスチャンにも言っておかなくちゃ。
そんな感じで夕食は終了した。
夕食が終わり部屋に戻る途中メアリに会った。明日の準備で忙しそうである。邪魔しないようにと思ったのだが、メアリが何故か私をじっと見つめてきた。
「お嬢様・・・」
どこかよそよそしい言い方に感じられる。
「忙しいよね、明日、よろしくね」
できるだけ笑顔で明るく声をかけた。すると。
「お嬢様、ひどいではないですか」
え?何が?と思っていると、メアリの目から涙が零れ落ちた。
「何故あの2人にだけ味見係を任せたのですかっ!私では無理と判断されたのでしょうか。食い意地なら誰にも負けないのに」
メアリは悔しそうに唇をかみしめ、怒りのためかワナワナと震えている。顔色がどす黒い。
「マーサが勝ち誇ったように私に言ったんです。お嬢様の新作料理の味見を任されたって。セバスチャンは分かります。でも私ではなく何故マーサが・・・」
いやそれは、あの2人がバーンヒル公爵と年齢が近いから。他に理由はないのだけど。
「お嬢様、私はお嬢様がお生まれになった時からこのお屋敷でお世話になっております。お嬢様を立派な淑女にご成長されるよう尽力を尽くして参りました。それなのに・・・、味見を任せて頂けないなんて。信用されていないということでしょうか」
メアリはハンカチでブブーと盛大な音を出して鼻をかんだ。顔は涙と鼻水でグチャグチャである。けっこうな美人さんなのに台無しだ。
「メアリ、バーンヒル様のご年齢があの2人に近いから味見をお願いしたの」
とにかく優しく丁寧に説明をする。しかし、メアリの機嫌が直る気配はない。口をとがらせて頬を膨らませて、まるで子どものように拗ねている。
「メアリを信用していないわけないじゃない。私にとっては姉のような存在よ」
嘘を言ってはいない。いつもメアリの事をありがたいと思っている。
「でも・・・、私のことなんて・・・」
だが、メアリはグジグジと言い続けている。だんだん面倒くさくなってきた。
「メアリには実はデザートの味見をお願いしようと思ってたの」
そんなつもりもないのに、つい私は口に出してしまった。
「えっ、デザート?」
メアリの目が急に輝きだした。
「ほ、ほら。デザートはどちらかというとメアリの得意分野じゃない?食事とデザートの味見だとお腹がいっぱいになって正しい意見が聞けなくなるから」
やぶれかぶれだ。私はやけになってベラベラと話し続ける。
「お、お嬢様」
メアリの機嫌が直ったようだ。鼻歌を歌いながら「明日の準備に精を出しま~す」と言って行ってしまった。
私はため息をつきながらキッチンに向かう。デザートはあるものにするつもりだったが、しかたがない。私は何を作るか考えていた。
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