美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

文字の大きさ
上 下
154 / 220

154

しおりを挟む
「まず、土下座のやり方が違います」

 私はそういうと床に正座した。

「正しい土下座とは、こうです」

 私は頭を下げた。

「おぉ!」
「う、美しい・・・」

 騎士たちが感嘆の声を上げる。

「リィ、そんな知識まで」
「マリアンヌ様は博学でいらっしゃる」

 殿下とアレンが驚いているが、なんで私まで土下座してるんだ?

「とにかく、おかしなことはしないでください」
「わかった」

 殿下のおでこに小さな石がついている。

「それにこの石は何ですか?」
「本来なら砂利の上でやるものなのだろう?」
「その知識はどこから・・・」
「私が読んだ本です。タイトルや内容ははっきり覚えていませんが、この場面だけは覚えているんです」

 アレンが相変わらず胸を張って答えている。砂利の上って、時代劇とかで出てくるお白子とかのことかな?でもこの世界にそんなものある?本だから架空の話なのかな?

 色々考えてもわからない。その上、アレンの話である。どう見てもアレンってちょっと抜けてるし。私は殿下のおでこについた石を摘んだ。

「な・・・!」

 殿下が目を見開き真っ赤な顔をした。

「この石、何ですか?」

 殿下に聞いたが赤い顔をしたまま目を逸らされた。確かにあんな恥ずかしい格好をしたことを考えたら、あの反応は仕方がない。

「それは、魔石や宝石のかけらです」

 代わりにアレンが答えてくれた。アレンと騎士たちは石を丁寧に拾って袋に入れている。

「かけらなので何かに使えるわけでもないんですが、数があれば多少の魔除けにもなるんです。砂利が用意できないので石をばら撒けばいいと思ったんですが、なかなか高価でもあるので騎士を多めに配属しました」

 え?この茶番のために騎士はいたの?そんなことアレンができるの?アレンは偉いの?アレンはニヤリと笑うと、騎士に指示を出している。

「ほら、這いつくばって石を拾うんだ。お前たちはそのために今日はいるんだからな。ほらそこ!もっと目を皿のようにしろ!」

 アレンは嬉々としている。色々な疑問が出てきたが、全てアレンに関することである。疑問を解決するにはアレンに聞けば済むだろうが、なんとなくめんどくさいのでやめた。殿下を見るとまだ顔が赤く、私と目が合うとさりげなく視線を逸らしている。こっちもめんどくさいな。でも殿下の空腹問題の解決をしよう。

 バッグからドーナツとミートパイ、アップルパイを取り出した。ミートパイとアップルパイは手軽に食べられるサイズにしてある。レオポール兄様からも小腹が空いた時に騎士たちに好評と聞いている。

「リィ、これ、美味しい・・・」

 ミートパイを頬張りながら、殿下が何度もうなづいている。

「ミートパイです。小さめなので小腹が空いた時とかに便利かと常備しています」
「そうか」

 ようやく殿下も復活したのか私とも目を合わせてくれるようになった。自分の痴態は忘れたいよね。すぐ忘れようね、殿下。

「うまい」
「なんだ、これ」
「やはり、マリアンヌ様付きになりたいもんだな」

 石拾いを終えた騎士たちにも出したわけだが、彼らは小声で話しているつもりだろうが全部聞こえている。

「マリアンヌ様のお食事がいつでも食べられると思うな。今日は特別なんだ。マリアンヌ様のお慈悲でいただけることを感謝するのだ」

 アレンの大声が響いていた。慈悲なんて大袈裟である。自分達だけだと食べづらいので出しているだけ。道連れである。

「この飲み物もいいな」

 コーヒーを飲む殿下に言った。

「眠気覚ましに効きますからね」
「リィ・・・」

 目がウルウルとなってまるで子犬のようだ。と、私は思ったのだった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...