美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

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「私は気にしていません。ですが、殿下のお身体については心配しています。きちんとお休みになられていますか。食欲は？」

　居眠りくらいどうってことない。そういえば元彼はいつも寝てるかスマホをいじっていた。今考えたらスマホで彼女を連絡取ってたんだろうな。

「リ、リィ・・・。許して、くれるのか？」

　殿下の声は小さく震えていた。目はウルウルしていて、今にも泣き出しそうだ。

「当たり前じゃないですか。常に話し合ってお互いを尊重し合うことに決めたんじゃなかったですか？」
「あ・・・ありがとう・・・」

　殿下が嬉しそうに、そして恥ずかしそそうに微笑んだ。そこまで反応することかな、と思っていたら。

「グスっ」

　誰かが鼻を啜る音がした。

「信じられない・・・」
「あんなことして許されるなんて」
「マリアンヌ様が女神って本当だったんだ」
「俺、感動した」
「俺もだ」

　聞いていた騎士たちが小声で話している。中には何故だか泣き出す者までいる。何でだ？

「ごほ、ではリィ、こんなことはもう二度としない、約束する」

　殿下の咳払いで騎士たちは口を閉じ、再度姿勢を整えた。

「わかりました、これからもよろしくお願いします」

　私も笑顔で頭を下げる。すると、グーという音がした。

「す、すまない。あまり食べられなくて」

　謝罪させられるので食欲もなかったのか、気の毒に。私はバックの中を探る。ドーナツでいいかな。

「殿下」

　アレンが声をかけた。

「あ、時間がないですか？」

　私の問いかけに、殿下が立ち上がった。

「リィ、今回のこと、本当に申し訳ない。私の落ち度だ」

　殿下がそう言うと、騎士たちが一斉に動き出した。何やら袋からジャラッと取り出した小さな石。それを床に撒く。その上に殿下がいきなり四つん這いになった。

「えっ、で、殿下？」

　私の驚きも無視し、殿下はお尻を高く上げ、おでこを床につける。

「さ、マリアンヌ様、殿下の頭を踏んでください！」

　アレンの言葉に私の目がひん剥かれた、と思う。

「何言ってるんですか！」

　殿下の頭を踏むって、一体何言ってるんだ？なんで人の頭を踏まなきゃいけない？そんな作法があるわけがないし、たとえこの世界の常識だったとしてもそんなことはできない。

「マリアンヌ様、殿下は本当に心から反省し謝罪したいと考えているのです。これは謝意を表すためです」

　アレンはどこか誇らしげに説明する。

「リィ・・・、頼む。踏んでくれ」

　私はまじまじと殿下を見た。奇妙な格好のせいか殿下の声は苦しげだ。

「マリアンヌ様、これは土下座といいます。この国ではありませんが、別のどこかの世界ではこの姿勢で謝意を表すのです」

　は？土下座？何で四つん這い？何でお尻を上げる？何？何？何？

「頭を踏んで額から血が出れば、謝罪の儀式は完了です。さ、ご遠慮なく。グリグリと踏んでください」
「踏みません！」

　どこで得た知識なんだろう。本当にそんな儀式があるのか？

「マリアンヌ様・・・」
「リィ、本当は怒ってるんだね」

　2人の悲しそうな様子に真面目にやっていたんだと気づく。他の騎士たちもどこか落胆した様子だった。何だろう、この人たち。と、私は不安になってしまったのだった。