美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「愚息がしでかした大変な過ち、本当に申し訳ない」

 目の前で国王陛下が頭を下げた。隣に居られる皇后陛下、そして殿下も深々と頭を下げている。

 お父様とお城に来てすぐに別室に案内された。何とかの間とかいうのだろうけど、どでかい扉の前には騎士が2人立っていて、私たちを見るや扉を恭しく開いた。すると中には王族の3人が頭を下げたまま立っていた・・・。

 という状況に私は今ついて行けていない。いくら何でもやりすぎではないか。とんでもない悪夢を見ている気分である。

「あ、頭を上げてください!」

 思わず叫ぶ。こんなことさせてしまっていいのか。不敬罪とかにならないのか。

「ふむ。なかなか素直な心がけだな」

 小声でお父様が呟いた。私ではなく王族の皆様への言葉である。お父様、何を言い出すのですか。

「謝罪を受け入れてくれるのか」

 受け入れるも何も。とにかくこの空間が落ち着かない。もうやめてほしい。

「マリアンヌちゃん、うちのバカアルバートが本当に失礼極まりないことをしでかしたわ。こんな男、私だったら話もしないで婚約は破棄するわ」
「は、母上!」
「何が母上よ、あんた何したかわかってるの。こともあろうか、マリアンヌちゃんの前で居眠りなんて。そんなアホに育てた覚えはないわ」
「そうだ、何故そんなことができるのだ。他でもないマリアンヌちゅあんだぞ。愛情があれば寝るわけないであろう。このたわけ者めが」

 殿下は項垂れたまま、顔を上げようとしない。私を見ることもない。

「あの・・・」

 私はそっとお父様を見る。私が勝手に話していいのか不安だったのだ。でもお父様は黙ってうなづいてくれた。

「謝罪は受け入れます。できれば殿下と2人で話したいのですが」

 驚いたような目で殿下が顔をあげ、私を見つめた。

「そうね、2人で話し合うのがいいわね。でもアルバートに嫌気がさしたなら、何も考えずに婚約はなかったことにしていいわ。アルバートは僻地に送るから」
「そうだな、国境沿いで砦でも建てて暮らすか」

 な、何を言い出すのですか。陛下も皇后様も真面目な顔だ。だんだん怖くなってきた。さっさと話をして帰りたい。

 部屋を出るとアレンがいた。同じ制服を着た騎士が何人かいる。数えてみたら合計8人の騎士が私と殿下を取り囲んだ。

「お部屋に案内します」

 なんでこんな人数の騎士がいるのだろう。

「殿下が不始末を起こさないように護衛しています」

 アレンが真面目な顔をして言う。は?護衛ってどういうこと?殿下の見張り役?近衛兵ってそういう仕事するの?私の頭の中にはクエスチョンマークしか浮かばない。

 とにかくこの団体で移動する。ゾロゾロと移動した先は隣の部屋。護衛なんて必要ないよね。

 お城の中の部屋だけあって無駄に広い。豪華なソファがあり、向かい合わせで殿下と座る。

「リィ、昨日のことは本当に申し訳ない」

 改めて殿下が頭を下げた。ちなみにソファの周りを8人の騎士が取り囲んでいる。一応は私たちに背を向けている。何から私たちは守られているのか不明である。

「あ、あの・・・」

 なんて言っていいかわからない。別に怒っていないし。気持ちを落ち着かせる意味も込めてバッグからコーヒーを出す。

「とりあえず飲みましょう」

 殿下はブラックでいいかな。私はミルクを多めに入れた。

「いいのか・・・」

 そう言いながら殿下はコーヒーの入ったマグカップを持ち上げ、ごくりと飲んだ。

「うまい・・・」

 しみじみとした感じで殿下が呟いた。私も一口飲む。なんかホッとした。同じものを一緒に口にしただけで連帯感を感じる。そうだ、この感覚。心の奥底にゆっくりと流れていくような心地よさ。

 私は殿下とうまくやっていきたい。そう思ったのだ。



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