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しおりを挟む「なるほど、そういったやり方があるか」
「気がつかなかった・・・」
食後、魔獣についての私の意見を聞かれて答えていた。元の世界を参考にしてみた。実現できるかどうかはまだわからないが、参考になるならと思う。
「少し席を外すよ」
ドミニク様は用事があるのか部屋から出てしまった。部屋にいるのはメアリとアレンのみである。
「はー、今日も美味しかったですねぇ。あんなに美味しいものをいつも食べてるんですねぇ。羨ましい限りです」
ドミニク様がいなくなった途端、アレンが話し出した。
「近衛にも提供してくださっているので本当、マリアンヌ様は女神です。マリアンヌ様の専属騎士にみんななりたがって大変なんですよ。近く選考会が行われる予定ですが、俺はアルバート様専属だから参加できないんです」
「お前、俺の専属を外れたいのか」
殿下がジロリとアレンを睨んだ。しかしアレンは気にしない。
「マリアンヌ様専属になれたら嬉しいじゃないですか。もしかしたら料理の味見とか失敗作とかを恵んでくださるかも」
「リィが失敗するわけないだろう?」
「もしかして、もしかしてですよ」
失敗はする。でもそれを恵んだりはしない。というより、食べ物目当てか?
「でも、考えたらアルバート様専属だったらマリアンヌ様も多めにいつも下さるでしょう?だから絶対食べられると思って」
アレンはそう言ってニッカリと笑った。殿下への忠義心ではなかった。
「お前には呆れる」
「お褒めの言葉と受け取ります」
2人の息がぴったりなので、いつもこんな感じなのだろう。楽しそうでいいなと思う。私にもこんなふうに仲良くできる人がついてくれるといいけど。
「ところで、新居のことだけど」
は?いきなり新居?
「インテリアや家具などリィの好きなようにしてくれていいから。でも最高のものを今から用意しよう」
新居などと言われてもピンと来ない。そもそも住む場所はお城である。お城のインテリアなど言われても困る。せいぜい自分が過ごす部屋のインテリアについてだろう。だが、それも寝る部屋、着替える部屋、化粧する部屋、普段なんとなく過ごす部屋、食事する部屋などがいくつかあるはず。それを考えると面倒臭い。
そもそも元住んでいた部屋は一部屋だった。将来結婚した際の部屋と言ってもせいぜい三部屋程度。お城とは比べられない。そういえば、と思い出した。元彼とうまくいっていた時、もし結婚したらある画家の絵を飾りたいと彼に言われた。いろんな色が使われた抽象的な絵であまり好きな絵ではなかった。それとなく言ったら、「お前はセンスがない」などと言われたのだ。
思い出したらムカムカする。彼のことはもう何とも思っていない。でもこんなふうに思い出してしまうのは、恋愛に対して彼とのことしか参考にできないからだと思う。
殿下はきっと彼とは違うだろう。国の王子と元の世界での一般人では比べられないが、殿下は良心的な人間と思う。二股かけて捨てるなんてしないと思う。
「2人で生活するのですから、2人で決めることではないですか?」
私はそう提案した。一方だけで決めることではない。こうである、こうであるべきという決めつけをしないで2人で話し合って2人で決めていきたい。元の世界では私も彼も「相手はこうあるべき」と思い込んでいたと思う。でもそんなことは殿下には言えないけど。
「2人で生活・・・」
殿下は目を見開き小声で呟いた。
「2人で決める。そうか、2人で決める」
そしてなぜか何度も呟いた。
「そうか、2人で決めることなのだな」
うんうん、と深くうなづいてもいる。
「これから決めていくことはたくさんあると思います。意見が分かれることもあると思いますが、できるだけ話し合ってお互いの意見を尊重し合いたいです」
「そうか、うん、そうだな」
殿下は何度もうなづいている。そんなにうなづくことだろうか。しかし殿下のうなづきは止まらない。
「さすが、リィ。話し合うこと。まずはそれが大事だな」
わかっているのかな。でもまずはそれが大事だよね。うなづく殿下を見ながら、私も一緒にうなづいていたのだった。
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