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しおりを挟む「これはうまいな」
ようやく食事になった。ちなみにお茶を淹れてくれたのはメアリである。メアリは何も言わなかったけど、時々私のことを気の毒なものを見ているように感じる。後でゆっくり聞いてもらいたい。王族との付き合いというのは本当に大変なのだ。
「同じものを騎士団にも提供してくれたのだろうか」
ドミニク様の問いに「いいえ」と答えた。
「中の具は同じものを騎士団に送りましたが、こちらではトーストしたパンを使用しました」
フルーツサンド以外は今回トーストしたパンを使用した。なんとなく食べたくなったのだ。トーストした方がサクサクして美味しいし、食べ応えがある。
「すると、レオポールとは少し違うものを食べたということになるな」
ドミニク様がなぜだかニンマリと笑った。
「リィ、この中身は何?」
「それはローストビーフです。昨日の夕飯でしたが、パンに挟むとまた違う印象で」
「昨日の夕飯?レオポールは食べたのだな」
「はい」
さっきから何故レオポール兄様が出てくるのだろうか。
「奴はここに来たがったのだが、魔獣の世話があるからね。どうせ夜になったら帰ってくる訳だし、それなら私が来るべきだと思って。魔獣についても話したかったし」
「叔父上は騎士団の仕事があるのですから、お忙しいでしょう。魔獣のことなら私が聞いておきますので、お早くお戻りください」
「いや、俺がいなくても仕事に問題はない。そのように普段から鍛えている」
いなくてもいい訳ないと思うけど、帰れと言っても帰らないだろうからさっさと食べて話をしよう。じゃないと、2人がだんだん険悪な様子になってきた。
「クロは大丈夫でしたか?」
とりあえず空気を変えるためクロの話題を出してみた。
「あぁ、あの魔獣。レオポールが布で包んで自分にくくりつけてたな」
なんかおかしなことを聞いたぞ。
「え?」
「自分から離すと危険だ、とか言って」
「そうそう、まるで人間の赤ちゃんみたいに」
つまり、抱っこひもというかスリング?それをつけて仕事している?兄様は立派な騎士のはずなのに・・・。
「魔獣研究のためだ。本当に頭が下がるよ」
「そうですね、そういう人がいてこそ、研究は進むというものです。魔獣を嫌う人がいる中、率先してそんなことするんですから」
バカにされるかと思いきや、感心されていた。
「他の魔獣はどんなものなのでしょうか?」
猫がいるなら犬もいていいはず。なんだかワクワクしてくる。
「問題がないとわかれば一度見てみる?」
「はい、ぜひ」
元の世界でも動物は嫌いではなかった。ただ犬には好かれたのだが、猫には嫌われた。大抵の猫は私をみると逃げ出したのだ。撫でようと手を出しても、フギャーと鳴かれた。クロが逃げ出さなくてよかった。
「魔獣が人間の世界で役に立つとわかれば、すごいことなんだ」
殿下はそう言って目を輝かせた。
「今までは魔獣は人間に害をなすものと捉えられていた。でも人間と共存できることが分かれば、魔獣征伐の人員を減らせるし命を落とすことも少なくなる。やり遂げたいと思ってるんだ」
確かに、魔獣が元の世界の家畜や愛玩動物に近いなら共存できるはずだ。そのためにも魔獣について学ばないといけない。
「しかし、マリアンヌ嬢の料理は本当に美味しいな」
「簡単なものですみません」
元日本人なのでつい謙遜してしまう。褒め言葉に弱いのだ。
「簡単って・・・。これで簡単と言われたら・・・」
「今いる料理人は仕事をしてないことになるな」
サンドイッチは具が用意できていれば挟むだけなので簡単である。現に元彼には手抜きと言われたことがある。思い出したら腹が立つけど。
「叔父上、リィは働きすぎと思いませんか」
「思う。しばらく城で静養させるべきだ」
「そうですね」
何を結託してるんだか。
「殿下、私は料理を作っている方が気持ちが安らぐんです」
料理している時だけ1人になれるからね。これは内緒で絶対言わないけど。
「リィ・・・」
殿下に涙ぐまれた。
「なんて純一無雑な・・・」
「さすが・・・」
さらに2人は涙ぐみ、気づけば側にいるメアリまで目を抑えているのだった。
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