美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 今日の夕食は我が家だけではなく、エイアール家の方やお父様の秘書のライアンやお兄様の部下のノートルも一緒に大広間で取ることになった。そんなわけでつい張り切ってしまって、パーティ料理を作った。といっても元の世界の簡素化したホームパーティのメニューである。

 真理子だった頃、実は私はホームパーティに憧れていた。だから見栄えのいい料理や盛り付け方を研究した。スクラップブックを何冊も作って、暇さえあれば眺めていた。そんな過去が今花開くときである。

「なんですか、これは。お肉がバラの花のようだ」
「色鮮やかで、素晴らしいわ」
「絵画を見ているようですね」
「食べていいのですか、もったいない」

 絶賛の嵐である。あのスクラップブックも役立った。覚えておいて損はなかった。

「そういえば、魔獣はどうしていますか?」

 ノートルに聞かれ、私はクロと名付けたことを話した。

「魔獣もうまく制御できれば人間と共存できると思うのです」

 ノートルは相変わらず美しい。女性のような繊細で独特な色気がある。何度も思うが着物が似合う。着物を着て窓辺にでも佇んでもらえたら、私は悶え死ぬかもしれない。そうだ、中学の時に夢中になったアイドルにノートルは似ているんだ。そう思ったらかなり恥ずかしくなった。

「まずは公爵家でクロを育ててもらって、安全と分かれば他の貴族にも同じように家で育ててもらうとか」
「しかし、うまくいくだろうか」
「今のところは魔法省や魔獣研究家たちに協力してもらいますが」

 お父様たちは早速仕事の話になった。ぼんやり聞いていたのだが。

「魔獣を集めて展示したらどうですか?」

 目指すは動物園ならぬ魔獣園だ。

「檻に入れることになりますが、人間からは触れないようにするのです。そこで魔獣たちが遊んだり餌を食べたりする様子を見る。お金を払ってもらうことにして、そのお金を魔獣の餌代や管理費代にします」

 動物園は子どもも好きだし、大人になってもデートで行ったりできる。魔獣といえども人間に無害なものだっているだろうから、成立すると思うのだ。魔獣の生態が理解できれば、むやみに怯えることもないし対策も立てられる。

「うわあ、いろんな魔獣を安全に見ることができるなら行ってみたいです」

 ダニエル様が私の横でキラキラした瞳になっている。ダニエル様は8歳だ。元の世界なら動物に興味を持っていただろうし、動物園に行きたいと言うだろう。もし元の世界にダニエル様がいたら、真理子として私は動物園に引率して一番大きなぬいぐるみをお土産にプレゼントしたかもしれない。

「そうだ、魔獣の形をしたお人形を作ってそこで売るんです」
「お人形ですか?」
「そうです。可愛らしい姿形にしたら、きっと売れます」

 私とダニエル様の話をお父様たちは目を見開いて聞いていた。

「いいアイデアですね」
「魔獣を展示して見せる。その考えはなかったですな」
「いままで魔獣は隠すもの、見てはならないものでしたからね」

 なんだ、そうだったのか。でもクロみたいに魔獣の正体が小さな動物と分かれば、興味を持たれるんじゃないか。ペット化できたら評判になるだろう。

「責任重大だな、お前」

 見るとレオポール兄様がクロを膝に乗せていた。

「あっ、兄様。何か食べさせたのですか」
「食べるかと思って、これをあげたら食べたよ」
【これは肉だろう。うまいぞ】

 ローストビーフである。猫に人間の食べ物は大丈夫だろうかと思ったが、相手は猫ではなく魔獣だ。中身は悪魔だが。しかし食べて大丈夫だろうか。

【大丈夫だ。お前の料理を食べたら、すなわち女神を食うことになる。愉快愉快】

 クロは舌をぺろりと出している。問題ないようなのでスルーすることにした。

「魔獣が何を食べるかわからないのですが、食べたのなら観察しましょう。でもマリアンヌ様の料理はかなり贅沢ではないですか」
「確かに」
「味を占めたら問題ですな」

 複数からジーと見られるが、クロは気にすることもない。ご機嫌な様子でニャーと鳴いて兄様の手に頭を擦り付けている。悪魔のくせにあざとい真似をする。

「マリアンヌの料理は魔獣も喜ぶというわけだな」
「当たり前でしょう、リリンの料理は最高傑作ですから」
「世界一幸せな魔獣だな」

 そういってみんなは笑っている。悪魔を中心にしているのにな。クロは兄様の膝の上で小さく伸びをすると丸まって寝の体制に入ったのだった。






 
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