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「どういうことなのよ」
その後、クロと命名された中身が悪魔の黒猫魔獣は家族中に撫でまわされ、今はバスケットの中に入って就寝中。・・・ということになっているが、実際は私と会話中である。悪魔との会話は私にしか聞こえないらしい。私も声に出さずに心の中で呟いている。
【お前は女神の加護を受け、女神のお気に入りの人間だ。そいつのそばに俺がいたら、さぞかし女神は不愉快だろう。しかも俺は可愛い体を手に入れた。俺を悪魔と知らずに人間どもは俺を可愛がるのだ。こんなに愉快なことはない】
悪魔の声は機嫌がいいように聞こえる。たまにフハハハ、と笑ったりしている。
【大体だな、人間どもが俺に契約を持ちかけてきたから要望に応えてやったのだ。ある者はお金が大量に欲しいというから与えてやった。別の者は王族と親戚になりたいというから叶えてやった。その見返りに奴らは俺に快楽を与えてくれるはずだった】
「快楽?」
【人間は肉体が機能しなくなることを死と言っている。肉体を手放した魂は新しい肉体に宿る。しかし俺と契約した人間はその魂を俺に捧げる。俺はその魂を魔物に宿す。そして人間に殺させるのだ。魔物が死の恐怖に怯える。その感情こそが俺の大好物、俺の快楽であり糧となるのだ】
「え?それって悪趣味じゃない?」
人の恐怖心が悪魔にとっての快楽。だからこそ悪魔なのだろうけど。
【なんとでも言え。俺はそうやって生きていくのだ。それでも人間は俺を必要とするからな。望みを叶えてもらおうとして】
「で、この後どうするつもりなの?」
【女神は俺がそうやって手に入れた魂を奪い取って、勝手に人間に生まれ変わらせたのだ。罪を犯した人間を生まれ変わらせて聖女とやらにして人間を救わせる。罪滅ぼしをさせて魂を浄化させようというのだ。けして許せることではない】
悪魔はキリリとした様子で言い切った。あまりにキッパリと言い切るので、一瞬すごく立派な正論を聞いたような気がした。しかし、人間の魂について本来どうすることが正しいかわからないけど、悪魔と女神がそれぞれの観点から好き勝手にしているようにも思える。
【そうだ、だから俺は手に入れた魂を手放すことにした。生きてるお前にくっついていれば面白いことに出会えるだろう】
「面白いこと?」
【お前は王子とやらと結婚するのだろう。お前の家は金持ちだし、妬みや恨みを買いやすい。そういった感情は俺の好物だ。俺の糧となるのだから安心して人様から恨みや妬みを買ってこい】
確かに王族に次ぐ高位貴族であり、父は宰相で国王と友人、母も皇后と友人、兄の1人は騎士団の副団長、もう1人の兄も母の実家の爵位を継ぐ予定で揃ってイケメンの独身。恨み、妬みは買い放題だ。だが、悪魔の糧ってどういうことだろう?
【人間はそういう他人からの感情に左右されるものだ。恨みや妬みの感情で体調を崩したり、悪いものを引き寄せるもの。しかし俺がそれを引き受けるから、お前たちにはそんな影響は出ない。どうだ、いい話だろう】
でも悪魔と取引したらまずいことになるのでは・・・。
【大丈夫じゃ、悪魔はその魔獣の体に入っているから大したことはできぬ】
「え?女神様?」
思わず小さいけど声が出た。誰にも聞こえていないようで安心する。女神様が何故だか話しかけてきた。
【加護を受けたお主に平手打ちされて悪魔には多少のダメージが残ったのじゃ。魔獣の体に入って休もうとでも思ったのじゃろう。しばらくはそのまま魔獣でいるだろうから、せいぜいこき使ってやれ】
【お前・・・、余計なことを言うな。女神が聞いて呆れる】
【ふふん、低級悪魔のくせに偉そうにした報いじゃろう。大した能力もないくせして】
【う、うるせー。この年増】
【ガキだからこそ、幼稚な口喧嘩で勝とうとするのじゃな】
【なんだと、お前なんかすっ転んで恥でもかけばいいんだ】
【クロのくせに生意気言うな】
【その名前で呼ぶな。呪うぞ】
女神様と悪魔が言い争いを始めた。うるさい。静かにしてほしい。
【せいぜい、可愛がられろ、クロニャンコ】
散々騒いだ挙句、女神がそんな捨て台詞で喧嘩は終わった。残されたクロはニャゴニャゴと悪態をつく・・・のだが。
「まあ、寝言かしら?」
「魔獣ではありますが、可愛いですね」
「これは他の貴族も欲しがるのではないですか?」
と、家族や使用人たちから好評なのだった。
その後、クロと命名された中身が悪魔の黒猫魔獣は家族中に撫でまわされ、今はバスケットの中に入って就寝中。・・・ということになっているが、実際は私と会話中である。悪魔との会話は私にしか聞こえないらしい。私も声に出さずに心の中で呟いている。
【お前は女神の加護を受け、女神のお気に入りの人間だ。そいつのそばに俺がいたら、さぞかし女神は不愉快だろう。しかも俺は可愛い体を手に入れた。俺を悪魔と知らずに人間どもは俺を可愛がるのだ。こんなに愉快なことはない】
悪魔の声は機嫌がいいように聞こえる。たまにフハハハ、と笑ったりしている。
【大体だな、人間どもが俺に契約を持ちかけてきたから要望に応えてやったのだ。ある者はお金が大量に欲しいというから与えてやった。別の者は王族と親戚になりたいというから叶えてやった。その見返りに奴らは俺に快楽を与えてくれるはずだった】
「快楽?」
【人間は肉体が機能しなくなることを死と言っている。肉体を手放した魂は新しい肉体に宿る。しかし俺と契約した人間はその魂を俺に捧げる。俺はその魂を魔物に宿す。そして人間に殺させるのだ。魔物が死の恐怖に怯える。その感情こそが俺の大好物、俺の快楽であり糧となるのだ】
「え?それって悪趣味じゃない?」
人の恐怖心が悪魔にとっての快楽。だからこそ悪魔なのだろうけど。
【なんとでも言え。俺はそうやって生きていくのだ。それでも人間は俺を必要とするからな。望みを叶えてもらおうとして】
「で、この後どうするつもりなの?」
【女神は俺がそうやって手に入れた魂を奪い取って、勝手に人間に生まれ変わらせたのだ。罪を犯した人間を生まれ変わらせて聖女とやらにして人間を救わせる。罪滅ぼしをさせて魂を浄化させようというのだ。けして許せることではない】
悪魔はキリリとした様子で言い切った。あまりにキッパリと言い切るので、一瞬すごく立派な正論を聞いたような気がした。しかし、人間の魂について本来どうすることが正しいかわからないけど、悪魔と女神がそれぞれの観点から好き勝手にしているようにも思える。
【そうだ、だから俺は手に入れた魂を手放すことにした。生きてるお前にくっついていれば面白いことに出会えるだろう】
「面白いこと?」
【お前は王子とやらと結婚するのだろう。お前の家は金持ちだし、妬みや恨みを買いやすい。そういった感情は俺の好物だ。俺の糧となるのだから安心して人様から恨みや妬みを買ってこい】
確かに王族に次ぐ高位貴族であり、父は宰相で国王と友人、母も皇后と友人、兄の1人は騎士団の副団長、もう1人の兄も母の実家の爵位を継ぐ予定で揃ってイケメンの独身。恨み、妬みは買い放題だ。だが、悪魔の糧ってどういうことだろう?
【人間はそういう他人からの感情に左右されるものだ。恨みや妬みの感情で体調を崩したり、悪いものを引き寄せるもの。しかし俺がそれを引き受けるから、お前たちにはそんな影響は出ない。どうだ、いい話だろう】
でも悪魔と取引したらまずいことになるのでは・・・。
【大丈夫じゃ、悪魔はその魔獣の体に入っているから大したことはできぬ】
「え?女神様?」
思わず小さいけど声が出た。誰にも聞こえていないようで安心する。女神様が何故だか話しかけてきた。
【加護を受けたお主に平手打ちされて悪魔には多少のダメージが残ったのじゃ。魔獣の体に入って休もうとでも思ったのじゃろう。しばらくはそのまま魔獣でいるだろうから、せいぜいこき使ってやれ】
【お前・・・、余計なことを言うな。女神が聞いて呆れる】
【ふふん、低級悪魔のくせに偉そうにした報いじゃろう。大した能力もないくせして】
【う、うるせー。この年増】
【ガキだからこそ、幼稚な口喧嘩で勝とうとするのじゃな】
【なんだと、お前なんかすっ転んで恥でもかけばいいんだ】
【クロのくせに生意気言うな】
【その名前で呼ぶな。呪うぞ】
女神様と悪魔が言い争いを始めた。うるさい。静かにしてほしい。
【せいぜい、可愛がられろ、クロニャンコ】
散々騒いだ挙句、女神がそんな捨て台詞で喧嘩は終わった。残されたクロはニャゴニャゴと悪態をつく・・・のだが。
「まあ、寝言かしら?」
「魔獣ではありますが、可愛いですね」
「これは他の貴族も欲しがるのではないですか?」
と、家族や使用人たちから好評なのだった。
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