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しおりを挟む私は今最高に気持ちのいい状態にいる。若干12歳。まだまだ若いはずだが、エステをされている。顔を気持ちよくマッサージされ、身体中も何やらいい匂いのする何とかで擦られている。
ホニャーと、訳のわからない言葉しか出ない。極楽とはこのようなことを言うのでしょうか。
真理子時代、エステの経験はなかった。マッサージはたまに行ったが、あまり気持ちいいと感じることはなかった。いつも物足りなさを感じていたのだ。それだけ凝っていたのだろう。
しかし今は違う。マリアンヌの身体がまだ若いせいか、凝るような生活をしていないせいかはわからない。とにかく今、ものすごく、気持ちがいい。
そしてマッサージが終わり、お城の庭園を見ながらぼんやりしている。こんなにぼんやり過ごしていていいのかな。そう思っても動けない。ちなみにお母様と皇后様はドレスを選ぶと言って別行動になった。私は1人でぼんやりしに来ている。
「こんなところにいたんだ」
気がついたらフランツお兄様が来た。
「ゆっくりできた?」
「はい」
兄様はニコニコしている。
「陛下も父上も兄上も、みんな仕事があってお忙しい身だからね。僕がマリのお相手をすることになったよ」
お相手って。つまり兄様が一番ヒマ人ってことですね。
「まだ家に帰れないのですか」
言ってから後悔した。みんな事態を収めようと必死になっている。そんなことを言ってはいけない。
「そうだね、僕もお城にはいたくないけど、もう少し我慢しようね」
子どもに言う言い方だ。何だか過保護というより、私を必要以上に子ども扱いしているぞ。
「不満かもしれないけど、マリはまだ子どもだからね。婚約したってまだまだまだ、子どもなんだからね」
12歳は元の世界では子どもだ。この世界では男性が18歳、女性は16歳が成人。結婚は17歳の時になるけど、それでもやっぱり大人になりきれていない感じはする。大体、真理子も32歳だったし仕事をして1人で暮らしてはいたけど、大人になるってどういうことって聞かれても答えられない。
「天ぷらは美味しかったですか?」
これを機会に兄様の食の好みを聞いてみようと思った。何を出しても美味しいと言ってくれるが、個人の好みも把握しておこうかと思う。
「うん、美味しかったよ。サクサクして食べてて面白かったし」
面白いという表現も面白いな。レオポール兄様はお肉系が好きだと思うけど、フランツ兄様はお魚が好きなんじゃないかと思っている。全くの勘ではあるけど。そしてレオポール兄様は甘いものも好きだけど、フランツ兄様は甘すぎるものは好きではないかと思う。
そんなわけで、こっそり2人だけでそれほど甘くないスイーツタイム。チーズケーキに甘さ控えめの生クリーム。当然だけど、フランクリンとクララも私のそばに控えてくれているので、彼らにも同じものを出す。
「こ、これは・・・!」
「すぐ、お茶の準備をいたしますねっ!」
落ち着いているはずのフランクリンとクララが慌てたように動き出した。
「陛下と殿下、父上にもある?」
フランツ兄様に聞かれ私はうなづいた。
「僕たちだけで食べたいけど、出さないとうるさいからね」
確かにその通りだ。なんだかんだ言って、フランツ兄様は抜け駆けをしようとはしないのだ。火種は作らない派なのだと理解した。
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