美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

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「ではこうしよう。マリアンヌちゅあんは私の膝の上に座る。そしてアルが食事を食べさせてあげる。こうすれば我々は食事をマリアンヌちゅあんと楽しむことができるぞ」

　陛下の馬鹿げた提案を何故殿下は真面目な顔でうなづくのだ？呆れてしまって、ついぼんやりと2人の様子を見ていた。この世界おかしいよね。

「それでは私の出番がありません！」

　ドミニク様がテーブルをバン、と叩いた。

「いざというときは私の力が必要になります！」

　何の力を必要とすればいいのだろうか。

「いい加減にしてください。マリアンヌはうちの娘です。膝なら我々の膝を使います」

　お父様、訳のわからないことを言わないでください。

「そうです、膝なら私も騎士団で鍛えています。ドミニク様以上に私の膝は強固です」

　レオポール兄様、めんどくさいことを言わないでください。

　呆れ返っていたら、フランツ兄様がそっと手を握ってくれた。

「みんな、好きなこと言い過ぎだよね。マリは僕のお膝の上が一番いいんだよね」

　そんなことはありません。私は誰の膝の上にも座りません。全員、めんどくさい人たちになったな。

　私は静かに立ち上がった。するとお母様が近づいてきた。

「天使ちゃん、ここは殿方たちに議論させて、私たちは失礼しましょ」

　そんなわけで議論している男性陣を取り残し、女性3人は部屋を出る。部屋を出る時も「いかに自分の膝は座りやすく心地いいか」を言い合っている。この国の国王陛下、殿下、宰相、騎士団の団長と副団長たちである。何を言い合っているのかと思うと、かなり心配である。

「当分、マリアンヌちゃんの争奪戦が起きるわね」
「面白いわね、今まではレオポールとフランツの戦いだったのに」

　お母様と皇后陛下は楽しそうだ。自分達の夫や息子なのに何故楽しそうなのだろう。頭が痛くなってきたが、我慢する。

「家にはまだ帰れないのでしょうか」

　魔物はスティラート公爵や使用人の人たちだったが、もう人間の姿に戻ったと聞いた。早く家に帰ってしまいたい。このまま結婚したら毎日こんなことが起きるのだろうか。まさか、本当に誰かの膝の上に座ってご飯を食べさせてもらうなんてことにはならないだろうけど。

「あら、もう少しゆっくりして。今日も3人で一緒に寝ましょうよ」

　皇后様はご機嫌だ。子どもの頃に親戚の家にお泊まりに行ったことを思い出した。あの時は純粋に楽しかったけど、今はそんな楽しいものではない。

「このところ、大変なことがたくさんあったからね。マリアンヌちゃんと過ごすのは本当に楽しいのよ」

　確かに。国の存続が危ぶまれるような事件が起きていたのだ。少しくらい気を紛らせるようなことがあってもいいだろう。

　私は小さくため息をついたが、すぐに気を取り直して2人のお母様に着いていった。