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しおりを挟むある意味最強ファミリーと食事になった。円卓に座る。私の左隣はレオポール兄様、右隣はフランツ兄様である。正面には殿下がいて、優しい眼差しで私を見つめている。と、思われる。というのも天ぷらを見た全員が一斉に話し出したので、殿下を見る余裕がなくなったのである。
「これがテンプラ?」
「不思議な形状だね」
「いい匂いがするわぁ」
「これはスープ?」
「早く食べたい」
「さすがマリアンヌ」
全員が何か喋っている。うるさいぞ。食事のマナーとしていいのかどうか。晩餐会ではないので気にしなくていいかと納得する。
「これは天つゆと言いまして、お好みでこれにつけて食べてもいいし、お塩をちょっとつけてもいいです」
説明すると、皆一様に深くうなづいている。
「女神の加護を受けると、料理に対する造詣も深まるというし」
「本当に知識が豊富ですごいわぁ」
「さすがマリアンヌちゅあん。我が娘なだけある」
「私たちの娘って可愛いしすごいわよねぇ」
「やぁだ、私の娘よぉ」
またも全員話し出した。が、天ぷらを一口食べたら一気に大人しくなる。極端すぎて笑いそうになったが、それだけ美味しいということだと思うことにする。
「お味はいかがですか?」
これだけガツガツと物言わずに食べているのだから、まずいとは言わないだろうとは思うが聞くだけ聞いてみる。
「最高」
「ング、この海老のサクサクがたまらない」
「エビフライとは違った味がする」
「野菜が美味しい」
「塩をつけると甘みが増すね」
またもや一気に話し出す。
「お代わりありますよ」
「ぜひ!」
と、全員が目をキラキラさせている。ついでに言えば唇もテカテカしていた。
全員が天ぷらをお代わりしていたが、私はお腹がいっぱいになっていた。マリアンヌの小柄な胃袋はすぐに満腹になってしまうのだ。
「ほら、リリン。もっと食べなさい」
レオポール兄様が横から私の皿を見て言う。すでに3回おかわりをしたせいか、私の皿を見る余裕ができたようである。
「うー、お腹いっぱい」
私はそう言って海老天をレオポール兄様の口に差し出した。
「しょうがないな」
兄様は笑顔で食べてくれる。
「あっ、兄上。またマリを甘やかして」
横からフランツ兄様に叱られる。私はフランツ兄様にもキス天を口に差し入れた。
「マリ、自分で食べないと」
そう言いながらもフランツ兄様は嬉しそうである。そんなにキス天が好きなのか。よかった。
「こら、お前たち。家じゃないんだから」
お父様に見つかり叱られてしまった。
「はぁい」
確かに気が緩んでいた。目の前にはロイヤルファミリーだ。お行儀よくしないといけない。
「家だとマリアンヌは誰かの膝に座ってますからね。椅子だと座りづらいのでしょう」
お父様が真面目な顔でそんなことを言うので、私は目玉が落ちるかと思うくらいに目を見開いてしまった。
ハァァぁぁ?何言ってますか?そんな事実ないですよね。確かに膝の上に座ることはありもしたけど、食事の時は基本椅子に座っていますよね。それより、そんなこと人様にお話する必要ないですよね。
「リィ、それでは私の膝に座っていいから」
殿下がものすごい笑顔で膝をポンポンと叩いている。いえ、大丈夫です。
「アル、やめなさい」
陛下が眉間に皺を寄せ、低い声を出した。これは・・・。破談になるのでは?と、思った。そんな女との婚約は白紙にしようと言われても仕方がない。
「膝の上に座るなら私の上だろう。なんたって私は父親なのだから」
陛下は満面の笑みで椅子をずらして、私が座れるように整えている。一国の国王陛下の膝の上に座れるわけないでしょう?座りませんよ、そのうえ父親ではありません。まだ。
「うふふ、見ていて面白いわね」
「本当、うちの天使ちゃん。可愛いにも程があるでしょう?」
お母様たちは呑気に訳のわからないことを言って笑っている。めちゃくちゃだ。
「待ってください、ここは私の出番でしょう!騎士団で膝を鍛えています」
と、関係のないはずのドミニク様まで参戦し、私はどんよりした気分になったのだった。
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