美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

文字の大きさ
上 下
126 / 220

126

しおりを挟む
 まもなく到着、と聞いて配膳することにした。やはり天丼にするより定食風にした。ご飯と天ぷらの盛り合わせ、天つゆに塩を用意する。

 ドアが開いた。お父様が立っている。

「お父様!」

 私は走ってお父様に抱きついた。お父様も私を抱きしめ返してくれる。

「お父様、私のこと、魔法で治して下さったのでしょう?ありがとうございます!」
「元気になってよかった」

 お父様は本当に安心したような声だった。その声を聞いて私も嬉しくなる。

 少しの間抱き合っていたら、

「マリアンヌちゅあん!」

 陛下の声がした。見ると、ハアハアと息が上がっている。走ってきた?陛下が?

「ユエン、何故そんなに早く歩けるんだ?」

 息も絶え絶えに陛下が仰る。

「は?私は普通に歩いてきましたよ」
「嘘をつけ。一緒にドアを出たのにものすごい勢いで歩いて行ったではないか」
「ご冗談を」

 お父様はふっと鼻で笑った。そうだ、陛下には色々お世話になったのだ。私はお父様から離れ、陛下にご挨拶をする。

「陛下、昨夜はありがとうございました」

 と、丁寧にお辞儀をするも、すぐにお父様と同じように抱きしめられる。

「眠ってしまった娘をベッドに運ぶのは父親の役目なのだ。陛下などと呼ばずにパパと呼んでくれ」

 いや、違う。そもそも父親ではない。心の中でジタバタしていたら

「リィ」

 殿下に呼ばれた。見ると、陛下の後ろで歯に噛んだような笑顔を見せて立っている。

「殿下、昨夜はありがとうございます」

 陛下から離れ、殿下にも挨拶をする。

「殿下・・・」

 あからさまに落胆した様子で殿下は寂しそうに目を逸らした。

「ル、ルー様、昨夜はありがとうございました」

 と、言いながらお礼を言うことではなかったと気がつくが、もう知らん。殿下は見る見るうちに破顔し、手を差し伸べてきた。その手を取ろうとした時。

「マリ!」

 フランツ兄様の登場であった。フランツ兄様はすぐに私に駆け寄ると私を抱き上げた。ヒヤァ、と小さく声が出る。

「マリ、大丈夫か?もう料理などして」
「はい、今日は天ぷらという料理です」
「テンプラ?」

 まるで外国人が発生したようなぎこちない感じで全員がつぶやいた。部屋の中は天ぷらの香ばしい香りが充満している。誰かのお腹がなる音やゴクッと唾を飲み込む音が聞こえてきた。

「リリン、元気になったのだね」

 レオポール兄様も現れ、フランツ兄様からレオポール兄様に私は移動させられる。

「はい、もう元気になりました」
「無理はしなくていい。騎士団から護衛騎士を選抜している」

 ドミニク様が私の頭を撫でてくる。その向こうでは皇后様とお母様がニコニコと笑っているのが見えた。皆様って、本当にオールスターなのだわ。ある意味最強家族、としみじみ思ってしまった。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

処理中です...