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しおりを挟む「目的はないってどういうことだ?」
ゲルリーがねだるので仕方なくプリンを出した宰相は、目をキラキラさせてプリンを見つめるゲルリーを睨みながら言った。
「そのままの意味ですよ。大体相手は悪魔です。簡単に人間の言うことを聞くと思いますか?」
そう言われたらその通りと思ってしまう。悪魔は人間を唆し、結界を破壊することに成功した。しかしまた結界は張られた。では次に何をするだろう。
「リリアはどうなるのですか?」
答えの出ない話をし続けても仕方がない。アルバートは話を変え、リリア・マロウの処遇について聞くことにした。何故彼女が自分と結婚するなどと思っていたか不明であった。彼女とは会った事もない。
「今はまともな状態ではないですからねぇ。こんな本を大事に抱えていたから変な影響を受けたのでしょう」
ゲルリーが指差した本をアルバートは見つめていた。悪魔に願いごとを叶えてもらう方法などが書かれているが、それよりも読んでみたい内容がある。不道徳な内容とわかっているが、父や叔父も読んでいるのだ。自分も目を通してみたい。
「殿下?」
アルバートはその本から目を離せなくなっていた。その本がまるで愛しいものそのものであるかのように。今すぐその本を手にして読んでみたい。読むべき内容ではないと理解している。しかしだからこそ読むべきなのではないか。
「殿下?」
小説は読まれてこそのものである。手を尽くせば写本を手に入れることは容易いだろう。でも今目の前にあるのだ。これを読めない手はないのではないか?自分は王子だ。わがままを言ったって問題はないはずだ。
「殿下!」
呼ばれてアルバートは本から目を離した。ぼんやりとゲルリーを見る。何で彼は自分を呼んだのだろうか。それよりもあの本を見ていたい。中の小説をじっくりと読んで・・・。
ゲルリーが指をパチンと鳴らした。途端にアルバートは気がつく。自分は今どうしていただろう?寝ていたのだろうか。いや、違う。そんなわけがない。
「本の影響を受けていましたね」
ゲルリーの言葉の意味がわからなかった。本の影響?
「リリア嬢が仕掛けたんでしょうね。自分を好きになって欲しいと悪魔に願いをかけたのでしょう。おそらく本にそんな能力があるなんて知らずに偶然でしょう。ですが、さすが悪魔ですから素直に叶えたりはしない。殿下がこの本を好きになるとは」
は?アルバートは驚いた。何を言っているのだ?
「本に対して異常な気持ちが湧いたでしょう?」
ゲルリーはニヤリと笑った。先ほどまで感じていた異常な本への思いは綺麗に消えていた。気持ちが悪い。アルバートは身体中から本への嫌悪感が湧き上がるのを感じた。そしてその持ち主であったリリアへ対してもその気持ちは変わらなかった。
早くマリアンヌに会いたい。アルバートはそのことしか考えられなくなっていた。
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