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「やはり、マリアンヌ嬢のご飯は美味しいですなぁ」
ゲルリーは宰相が出してくれた作り置きの牛丼を食べながらご機嫌だった。陛下も殿下もドミニクもその意見に賛成だったが、この男が当たり前のようにマリアンヌの料理を食べていることが許せなかった。図々しい奴め、と睨みつけてみたもののゲルリー本人は何とも思っておらず、牛丼は卵があると格別ですねえ、などと呑気に話している。
「ブライア家は娘を先王の側妃にするためかなりのお金を費やしたが、側妃になれず借金が増えた。ファングは悪魔に願いを叶えてもらう方法を知ったが、志なかばで死亡。妹はスティラート家へ嫁入り。マロウ伯爵はファングの遺品から小説を見つけ勝手に本にして貴族に販売して大金を得る。・・・つまりこういうことですね」
ドミニクは牛丼を食べながら、話をまとめる。ファングの死も悪魔と関わったせいではないかと思える。だとしたら、こんな本を持っているのは良くないのではないか。現にリリアは様子がおかしくなった。ドミニクはそう考えゲルリーを見るが、ゲルリーは美味しそうに牛丼を頬張っている。
「ユティシアの時も頑固に言い張っていたし、ジュリア嬢のこともある。何としてでも王族と縁を作りたいと思っていたのだな」
「執念ですね」
陛下は何度もうなづいた。悪魔に取り入ってまで縁を作ろうとしていたのだ。失敗してくれてよかったと思う。もしも縁ができていたら・・・?考えたくないことは考えない方が良い。
「おそらく、スティラート夫人も方法を知って試したのではないでしょうか。でも何かが不完全だったかでうまくいかず、命を落とした。マロウも下手に悪魔と関わったせいで亡くなったと考えるのが自然ですね」
「では昨日の魔物は・・・」
全員がゲルリーを見ると、ゲルリーは5杯目の牛丼を食べ始めたところだった。
「まだ食べるのか?」
陛下が呆れた声を出す。
「当たり前じゃないですか。マリアンヌ嬢の料理は、食べれば食べるほど魔力が漲るんですよ。魔力があれば問題解決もすぐですよ」
「じゃあ、早く問題を解決してくれ」
いらつきながらドミニクがせっつくが、ゲルリーはゆっくりと味わっている。リスかハムスターのように口に大量に詰め込み、モグモグと口を動かし幸せそうな微笑みを浮かべる。
「みなさん、そんなにこの本の話をしたいですか?」
「したいわけじゃないが、しないと話が進まないだろう!」
「うーん、まあ、そうですね」
ゲルリーは5杯目の牛丼を食べ終わると、デザートは、と言いかけてやめた。彼も空気を読むことができるのだ、とアルバートは感心したのだが口に出すことは控えた。
「本の魔力を探ると、昨日の魔物はリリアが原因と思われます」
「リリアが?悪魔と契約したのか?」
だとしたら早く何とかしないとマリアンヌが危険ではないか。昨日のような目には二度と合わせたくない。
「おそらく偶然かもしれませんが、本に書いてあった呪文を口に出したのでしょう。それで契約が成立してしまった」
「で、でも・・・」
アルバートは昨日のことを考えていた。魔物が現れたこと、その魔物は案外弱くすぐ倒れたと思ったらスティラート公爵と彼が操っていた使用人たちだったこと、リリアが突然マリアンヌを襲ったこと。
「何が目的だったのでしょうか」
「確かに、もう一回魔物にする必要はないな」
ゲルリーは彼らを面白いものを見るような目で見回した。アルバートは不快感を感じる。大事なマリアンヌの危機を何と思っているのだろう。彼しか今は頼りにできないから仕方がないが、彼以上に魔法に強い者を育ててゲルリーを追い出してやろう。心の中で彼は決意した。
「目的はないのかも知れませんね」
ゲルリーはそう言うと、何かデザートを食べたいと小さく口にした。
「どう言うことだ?」
「え?何がですか?デザート、欲しくないですか?」
キョトンとした顔で彼は言い返した。何でこんなに緊張感がないのだ、と宰相は殺意を感じていた。
ゲルリーは宰相が出してくれた作り置きの牛丼を食べながらご機嫌だった。陛下も殿下もドミニクもその意見に賛成だったが、この男が当たり前のようにマリアンヌの料理を食べていることが許せなかった。図々しい奴め、と睨みつけてみたもののゲルリー本人は何とも思っておらず、牛丼は卵があると格別ですねえ、などと呑気に話している。
「ブライア家は娘を先王の側妃にするためかなりのお金を費やしたが、側妃になれず借金が増えた。ファングは悪魔に願いを叶えてもらう方法を知ったが、志なかばで死亡。妹はスティラート家へ嫁入り。マロウ伯爵はファングの遺品から小説を見つけ勝手に本にして貴族に販売して大金を得る。・・・つまりこういうことですね」
ドミニクは牛丼を食べながら、話をまとめる。ファングの死も悪魔と関わったせいではないかと思える。だとしたら、こんな本を持っているのは良くないのではないか。現にリリアは様子がおかしくなった。ドミニクはそう考えゲルリーを見るが、ゲルリーは美味しそうに牛丼を頬張っている。
「ユティシアの時も頑固に言い張っていたし、ジュリア嬢のこともある。何としてでも王族と縁を作りたいと思っていたのだな」
「執念ですね」
陛下は何度もうなづいた。悪魔に取り入ってまで縁を作ろうとしていたのだ。失敗してくれてよかったと思う。もしも縁ができていたら・・・?考えたくないことは考えない方が良い。
「おそらく、スティラート夫人も方法を知って試したのではないでしょうか。でも何かが不完全だったかでうまくいかず、命を落とした。マロウも下手に悪魔と関わったせいで亡くなったと考えるのが自然ですね」
「では昨日の魔物は・・・」
全員がゲルリーを見ると、ゲルリーは5杯目の牛丼を食べ始めたところだった。
「まだ食べるのか?」
陛下が呆れた声を出す。
「当たり前じゃないですか。マリアンヌ嬢の料理は、食べれば食べるほど魔力が漲るんですよ。魔力があれば問題解決もすぐですよ」
「じゃあ、早く問題を解決してくれ」
いらつきながらドミニクがせっつくが、ゲルリーはゆっくりと味わっている。リスかハムスターのように口に大量に詰め込み、モグモグと口を動かし幸せそうな微笑みを浮かべる。
「みなさん、そんなにこの本の話をしたいですか?」
「したいわけじゃないが、しないと話が進まないだろう!」
「うーん、まあ、そうですね」
ゲルリーは5杯目の牛丼を食べ終わると、デザートは、と言いかけてやめた。彼も空気を読むことができるのだ、とアルバートは感心したのだが口に出すことは控えた。
「本の魔力を探ると、昨日の魔物はリリアが原因と思われます」
「リリアが?悪魔と契約したのか?」
だとしたら早く何とかしないとマリアンヌが危険ではないか。昨日のような目には二度と合わせたくない。
「おそらく偶然かもしれませんが、本に書いてあった呪文を口に出したのでしょう。それで契約が成立してしまった」
「で、でも・・・」
アルバートは昨日のことを考えていた。魔物が現れたこと、その魔物は案外弱くすぐ倒れたと思ったらスティラート公爵と彼が操っていた使用人たちだったこと、リリアが突然マリアンヌを襲ったこと。
「何が目的だったのでしょうか」
「確かに、もう一回魔物にする必要はないな」
ゲルリーは彼らを面白いものを見るような目で見回した。アルバートは不快感を感じる。大事なマリアンヌの危機を何と思っているのだろう。彼しか今は頼りにできないから仕方がないが、彼以上に魔法に強い者を育ててゲルリーを追い出してやろう。心の中で彼は決意した。
「目的はないのかも知れませんね」
ゲルリーはそう言うと、何かデザートを食べたいと小さく口にした。
「どう言うことだ?」
「え?何がですか?デザート、欲しくないですか?」
キョトンとした顔で彼は言い返した。何でこんなに緊張感がないのだ、と宰相は殺意を感じていた。
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