美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

文字の大きさ
上 下
115 / 220

115

しおりを挟む
 マリアンヌはフランツ様のそばで笑っていた。フランツ様はマリアンヌに嫌気が差していて、ぎこちない笑顔なのにマリアンヌは気づいていない。フランツ様が無理矢理にでも笑っているのは、全てリリアのためだ。マリアンヌの魔の手がリリアに向かわないようにするため。

 マリアンヌさえいなければいいのだ。誰もが気づいているのに声に出すことができない。マリアンヌが悪魔だからだ。マリアンヌは殿下と結婚し、レオポール様とフランツ様を家来にしようとしている。リリアはそれが許せない。

 そうだ、悪魔のマリアンヌを自分が倒せばいいのだ。そうすれば全てが丸く収まる。リリアは走り出した。

「やめろ!」
「どこへ行くつもりだ!」
「捕まえろ!」

 騎士たちの声が聞こえてきた。

『リリア様、危険です』
『マリアンヌは悪魔です』
『リリア様がやられてしまう』

 大丈夫、私なら。マリアンヌを倒さないと、殿下は救われない。

 リリアはすぐに取り押さえられた。マリアンヌは別室に連れていかれる。リリアはその様子を見て微笑んだ。私がお屋敷の階段からマリアンヌに突き落とされた時、マリアンヌはせせら笑ったわよね。私だって笑ってやるわ。

「これはどういうことだ?」

 目の前にいるのはこの国の宰相。マリアンヌの父親だ。でも違う。もうじきリリアの父になる。リリアはマリアンヌの代わりに公爵家の養女になるのだ。お父様、リリアはマリアンヌと違って立派な淑女になりますわ。

「ただで済むとは思うな」

 ドミニク様だ。騎士団の団長で殿下の叔父に当たる人。そうだ、殿下がリリアとの結婚をどうやってマリアンヌに認めさせようか相談した人だ。大丈夫、マリアンヌは悪女で殿下にふさわしくないかわかったでしょう?

「さっさと連れて行け!」

 国王陛下がいらっしゃった。公爵家の娘というだけでマリアンヌを殿下の婚約者にしようとしたけど、後で後悔なさったのだ。家柄だけで選んだから結果的に殿下を不幸にさせてしまった。最初からリリアにすればよかったと悩まれていたのだ。陛下、私なら大丈夫です。おかげで真実の愛に気がつきましたから。

 リリアは騎士たちが自分を取り囲んでいるのに気がついた。リリアを守るように立っている彼らを決してその他大勢の脇役にしてはいけない。彼らは一人一人、リリアを守ろうと任務に当たっているのだ。

 リリアが動くと、騎士たちはビクッと肩を震わせた。少し距離ができた。リリアは最高の笑顔を見せ、ドレスを両手で広げてゆっくりと丁寧にお辞儀をした。騎士たちはその仕草に驚いていた。

『俺たちに敬意を表するなんて』
『さすがリリア様だ』
『未来の王太子妃の誕生だ』
『でもまだ、殿下はプロポーズをしていない』
『ということは、まだ俺にもチャンスが・・・』

 騎士たちの声を聞き、リリアは満足だった。ありがとう、でも私には殿下がいるの。殿下はマリアンヌから離れられて、今最高に満足しているはず。そして私にプロポーズする準備をしているのよ。

 ゲルリーはリリアに拘束の術をかけ、魔法省の特殊な牢へ彼女を送った。そして床に落ちたリリアが大切にしていた本を拾い上げた。

「なるほど」

 彼は小さくつぶやき、すぐに魔法省へ向かった。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

処理中です...