美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「マリアンヌ嬢、申し訳ございませんが、料理の追加をお願いできますか」

 目につくものを全て食べたゲルリーは、静かに言った。妙に落ち着いたトーンである。

「了解です。何かご希望はありますか?」

 ゲルリーは一瞬躊躇したような様子を見せたが、すぐに笑顔になった。

「なんでも。マリアンヌ嬢の料理はどれも美味しいですし、魔力が大量に増大します」

 私はすぐに準備を始める。作り置きの料理をとにかくコピーしまくる。本当は新しい料理も作りたいが、ここはキッチンではない。コピー機があるだけの小部屋だ。コピー機はワゴンの上に転送する機能も増えていた。ボタン一つで魔法省とみんながいる部屋に料理が送れる。

 人間が魔物になるなんて、なんて恐ろしい世界なのだろうか。自分は魔物にはなりたくないと心底思った。とにかく私にできることは料理を提供することである。食べて食べて食べまくってもらおう。

 どれだけ料理を作っただろうか。ずいぶん時間が立ったように思う。外はどんな状態だろうか。

「つまり、何も覚えていないというのか」
「はい、確かに牢の中にいたはずなのに気がついたら外にいて倒れていたと」

 会議の最中なのだろうか。たくさんの人が集まって報告を聞いて意見を出し合っているように思える。現場はなかなか緊張が漲っていた。が、何故全員何か食べているのだろうか。陛下はドーナツを手にしているし、お父様は牛丼を目の前に置いている。殿下もサンドイッチを食べているし、ドミニク様もお兄様も牛丼を食べていた。他にも大臣の方々が口を動かしながら、何やら資料を見たり意見を言ったりしている。

「マリアンヌ、疲れただろう?」

 お父様が私に気がついて近づいてきた。

「お昼寝はしませんよ」

 先に言っておく。

「いや、もう夕方だから夕寝になるが」

 いや、そうではなく寝ませんよ。

「疲れたらフランツに言いなさい」
「大丈夫です」

 フランツ兄様に言うととても大変なことになると分かっているので、言うつもりはない。しかし笑顔で近づいてきたフランツ兄様は、何か圧を感じる。

「マリアンヌ、本当に助かっている。マリアンヌの料理を食べると頭がすっきりして考えがまとまるのだ。おそらく女神の加護のせいだろう」

 それでみんな食べまくっているのか。さりげなくお父様のお腹を見た。うん、スッキリしてる。ぽっこりしていない。これでお腹ぽっこりだったらすごく残念だし、私は気に病むと思うのだ。イケメン父様でいてほしいしね。

「兄様、兄様も何か食べていますか?」

 昼寝させられてはたまらないので、先にフランツ兄様に話しかける。

「いや、お腹いっぱいだし。マリの料理は美味しいけど、食べたいときがきたら食べるよ」

 うん、それが普通の反応のはず。

「みなさん、こんなに食べて大丈夫でしょうか?」

 食べているのか会議しているのかよくわからない状況だ。

「僕は会議するわけでもないし、討伐に加わるわけでもない。だからそれほど食事は必要じゃない・・・かな?」

 フランツ兄様もこの状況に若干引いている様子だ。よかった、私だけじゃなくて。ここでは仕事をする人=食べる人になっている。働かざる者食うべからず。

「あらやだ、みんな楽しそうねぇ」
「まだ解決しそうにないわねぇ。今日はお城にお泊まりね」

 皇后陛下とお母様が現れた。2人ともお顔がツヤツヤである。さてはエステをしていたな。

「マリアンヌちゃん、いいものを発明してくれたわ。本当にこのお洋服は楽でいいわ」
「うちの天使ちゃん、最高だもの」

 うふふ、とお二人はのどかな笑顔でこちらを見ていた。平和だ、と思ってしまったその時。

「なんで、ここにいるんだ!」
「外に出るなと言っただろう!」

 騎士の人たちの怒鳴り声が聞こえてきた。まさか、また魔物?思わず私は近くにいたフランツ兄様にしがみついたのだった。





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