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「スティラート公爵が脱走したなら、ジュリア嬢はどうしているのだ?」
「ジュリア嬢はこのうえなく立派に聖女をやってますよ」
おにぎりが残り少なくなったせいか、ゲルリーは陛下の質問にもきちんと答えるようになった。確かにあればあるだけ食べる、なければ食べないというのは本当だった。食べ物がなければいいのではないかと思ったが、魔力がなくなるのは困る。
「正直、ジュリア嬢ほどのレベルなら何もしなくても聖なる力は漏れ出てるんです。わざわざ西の塔に閉じ込めてお勤めさせなくてもいいんです。でも彼女が外に出てくると、ほら、いろいろ面倒でしょうし。質素な生活をさせとかないと」
「では、ジュリア嬢は関係ないのだな」
「そっすねー」
ゲルリー、陛下の質問にその返答はないのではないか?でも相変わらず誰も何も言わない。お父様も注意しない。この世界ではこれは常識なのだろうか?
「それではスティラート公爵は・・・」
誰かの発言のあと、室内はシーンと静まり返った。
「大変です!魔物が!」
そこに1人の騎士が部屋に飛び込んできた。まだ若い騎士だった。
「また出たのか?」
「いいえ、魔物が、魔物が・・・」
彼は慌てすぎているのかきちんと話すことができない。魔物が、魔物がと繰り返している。
「落ち着け、どうしたのだ?」
何度か促され息を整えながら、彼は話そうとする。
「確か、魔物の死体を集めていたのだな?」
「は、はいっ」
新入りの彼は討伐した魔物の死体を集める係だったらしい。その魔物がどうしたのだろうか。いよいよ、というところでフランツ兄様が私の隣にきた。
「マリ、向こうに行くよ」
と、またも抱き上げられる。死体、という言葉が飛び交うところにいてはいけないと判断されたのだろう。正直私も聞きたくはない。でも抱き上げられるのは勘弁だし、話がどうなるのか気になる。
「下ろしてください。自分で歩きます」
邪魔をしてはいけないので小声で言うが、兄様が聞き入れてくれるわけもない。
「はいはい、向こうでちゃんとお昼寝しようね」
だから、なんで昼寝しないといけないんだ。幼稚園児じゃないぞ。兄様が殿下に嘘を並べ立てたおかげで、私は極度の人見知りで家族に過剰に甘えるバカ令嬢になってしまった。ふと見ると、殿下も生暖かい目で私を見ている。恥ずかしい。このまま結婚したら、彼もこんなふうに抱き上げるのだろうか。いや、結婚を機に大人扱いしてもらおう。と、ひそかに兄様の過剰な過保護を阻止する方法を考えていたら。
「何?魔物の死体がスティラート公爵になっただと?」
誰かが叫ぶように言い、室内は大騒ぎになった。
「スティラート公爵だけではなく、魔物の死体が人間になった?」
「しかも、息があるのか?」
若い騎士はようやく自分の言いたいことが伝わり安心したような顔をした。が、陛下やお父様の顔つきは険しい。
人間が魔物になったのか、魔物が人間に化けていたのか。ゲルリーを見たら呆然とした様子を一瞬見せた後に最後のおにぎりを口に入れた。ゆっくりと噛み締めながら表情は変わらなかったのだが、それが私には彼が焦っているように見えた。
「ジュリア嬢はこのうえなく立派に聖女をやってますよ」
おにぎりが残り少なくなったせいか、ゲルリーは陛下の質問にもきちんと答えるようになった。確かにあればあるだけ食べる、なければ食べないというのは本当だった。食べ物がなければいいのではないかと思ったが、魔力がなくなるのは困る。
「正直、ジュリア嬢ほどのレベルなら何もしなくても聖なる力は漏れ出てるんです。わざわざ西の塔に閉じ込めてお勤めさせなくてもいいんです。でも彼女が外に出てくると、ほら、いろいろ面倒でしょうし。質素な生活をさせとかないと」
「では、ジュリア嬢は関係ないのだな」
「そっすねー」
ゲルリー、陛下の質問にその返答はないのではないか?でも相変わらず誰も何も言わない。お父様も注意しない。この世界ではこれは常識なのだろうか?
「それではスティラート公爵は・・・」
誰かの発言のあと、室内はシーンと静まり返った。
「大変です!魔物が!」
そこに1人の騎士が部屋に飛び込んできた。まだ若い騎士だった。
「また出たのか?」
「いいえ、魔物が、魔物が・・・」
彼は慌てすぎているのかきちんと話すことができない。魔物が、魔物がと繰り返している。
「落ち着け、どうしたのだ?」
何度か促され息を整えながら、彼は話そうとする。
「確か、魔物の死体を集めていたのだな?」
「は、はいっ」
新入りの彼は討伐した魔物の死体を集める係だったらしい。その魔物がどうしたのだろうか。いよいよ、というところでフランツ兄様が私の隣にきた。
「マリ、向こうに行くよ」
と、またも抱き上げられる。死体、という言葉が飛び交うところにいてはいけないと判断されたのだろう。正直私も聞きたくはない。でも抱き上げられるのは勘弁だし、話がどうなるのか気になる。
「下ろしてください。自分で歩きます」
邪魔をしてはいけないので小声で言うが、兄様が聞き入れてくれるわけもない。
「はいはい、向こうでちゃんとお昼寝しようね」
だから、なんで昼寝しないといけないんだ。幼稚園児じゃないぞ。兄様が殿下に嘘を並べ立てたおかげで、私は極度の人見知りで家族に過剰に甘えるバカ令嬢になってしまった。ふと見ると、殿下も生暖かい目で私を見ている。恥ずかしい。このまま結婚したら、彼もこんなふうに抱き上げるのだろうか。いや、結婚を機に大人扱いしてもらおう。と、ひそかに兄様の過剰な過保護を阻止する方法を考えていたら。
「何?魔物の死体がスティラート公爵になっただと?」
誰かが叫ぶように言い、室内は大騒ぎになった。
「スティラート公爵だけではなく、魔物の死体が人間になった?」
「しかも、息があるのか?」
若い騎士はようやく自分の言いたいことが伝わり安心したような顔をした。が、陛下やお父様の顔つきは険しい。
人間が魔物になったのか、魔物が人間に化けていたのか。ゲルリーを見たら呆然とした様子を一瞬見せた後に最後のおにぎりを口に入れた。ゆっくりと噛み締めながら表情は変わらなかったのだが、それが私には彼が焦っているように見えた。
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