美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 話も終わったし、そろそろお開きだろうなと帰る気満々でいたのだが、陛下がとんでもないことを言い出した。

「エビフライ、食べたい!」

 まるで駄々っ子だ。それを聞いて皇后様もアルバート殿下も追従する。

「エビフライ、何ですか、それは」
「リィが作るものは美味しいと聞いていますが、それは是非とも食べたいですね」
「牛丼もうまいが、エビフライも美味かった」

 これは出すまで言い続けるな。お父様を見たら、諦めたような目で小さくうなづく。私はお気に入りになったバッグからエビフライを取り出す。一目惚れした小さくてかわいいバッグ。そこから出てくるものはエビフライ。なんか悲しい。

 しかし王族メンバーはエビフライに釘付けになっていて、目がキラキラしている。

「今日は祝杯を上げよう」

 陛下はそう言ってワインを用意するように控えていた側近の人に言い付ける。側近の人、きっと本当は偉い人なのだろうな。その人は顔色も変えずにワインの準備をしていた。

「まだお仕事があるのでは?大丈夫なのでしょうか?」

 小声でお父様に聞くと、

「今日はマリアンヌちゅあんが来るから仕事はしないで済むように全部やっといたから」

 と、陛下が答えてくれた。ものすごい笑顔である。

「いつもそうだといいのですが」

 ふと見たら側近の人も同意するように首が動いていた。お父様だけじゃなくて、側近の人も陛下の言動に悩んでいるのだろうな。

「えー、それなら毎日マリアンヌちゅあん連れてきてよー」
「そうですわ、それなら仕事も捗りますわね」
「ダメですよ、天使ちゃんはまだうちの子です」
「いずれお妃教育で登城致しますから」

 もう何かを気にすることもできず、私は他にも作り置きの料理を出していく。テーブルの上には大量の料理が並んでいた。側近の人も目が輝いている。

「あの、毒味ってやっぱり必要ですよね?」
「必要なわけないよ。マリアンヌちゅあんの料理なんだから」

 と、言われるのはわかっていたが、全ての料理を少量ずつ一皿に乗せると側近の人に渡した。

「え?」
「あぁ、フランクリンなら毒味に適している」

 側近の人はフランクリンっていうのか。お父様と目を合わせてニンマリ笑う。フランクリンさんも味わってほしい。

「えー、ズルい。早くマリアンヌちゅあんのエビフライが食べたい」
「フランクリンの毒味が済んでからです」

 いつも陛下とお父様はこんな感じなのだろうか。一国のトップとしてはどうも頼りない気がする。なんとなく不安な気持ちになった。

「陛下は公私の区別がはっきりとしているのよ」

 私の不安を察したのかお母様がごく小さな声で言う。

「陛下の政治手腕は相当なものよ。その分、家族や友人にはとことん優しく接するの」
「そうそう、仕事モードの時の陛下はものすごい緊張感漂ってる。リリンもいずれわかると思うけど、パパなんて呼べる雰囲気じゃなくなるよ」

 横にいたレオポール兄様に耳元で囁かれる。くすぐったくて恥ずかしい。でも確かにあんな感じのまま仕事してもらったらこの国は無くなってるはず。

「リィ、こっちで一緒に食べよう」

 アルバート殿下に誘われ私も移動した。結婚したら私たちは親族になる。こういった集まりは経験できるだろうか。ぼんやりとそんなことを考えていた。



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