美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 婚約の前に国王陛下の謁見を受けることになった。家族全員である。それも明日だという。何着てくの?どうしたらいいの?と元日本人でそんな経験皆無なので1人パニクるが、他の家族は謁見?フーンって感じだった。

 そもそも、お父様と陛下は幼なじみのご学友、お母様と皇后陛下も娘時代からの大親友、レオポール兄様もフランツ兄様も王城には子供の頃からよく行っていて殿下の遊び相手になっていたくらいなのだ。今更謁見と言われてもね、って鼻で笑っていた。

 が、やはり私としては今日変な格好を見せたのだ。バシッとした様子を見せとかないと嫁に貰ってもらえないかもしれない。それならそれでいい、と言えるほど強くはない。どうしても彼氏に振られた過去を思い出すのだ。

「そんなに緊張する必要ないよ」
「そうそう、こっちは嫁になってやるんだから。向こうが気にする側だよ」

 と、兄様たちは気楽なものである。そりゃ自分たちは関係ないからね。とにかく今日は早く寝て明日に備えよう。どうせ準備はマーサとメアリがしてくれる。私のやることは体調管理くらいのものだ。

 翌朝。早くから起こされお風呂に入れられる。隅から隅まで洗われる。恥ずかしいと思う間もない。顔も何やらいいニオイのするものを塗られてマッサージ。髪の毛も何やらオイルのようなものを擦り込まれる。

 そしていよいよドレスを着る。コルセットで締め上げられる。拷問である。こんな思いをしていることを男性陣は知っているのだろうか。コルセットをつけなくて済む服を流行らせたい。お母様とステファニー様がチュニックとイージーパンツを気にいる理由がわかった。ぜひ流行らせよう。

 そして準備ができた。鏡の中の自分の姿を見て思わずため息が漏れる。誰だ、これってレベル。今日この姿で会ったら、この前の私は別人。殿下は私と認めてくれるだろうか。少し、いやかなり心配になってきた。

 お父様、お母様、お兄様たちも準備万端。さすがお母様、正装するととんでもなくお美しい。娘の私も思わず見惚れてしまう。

「あー、もうやってられないわー」

 しかしお母様の口から出るのはこんな言葉。

「ね、コルセットなんてやめたくなるでしょ。あの服でもいいと思うの」

 確かにコルセットは拷問に近い。しかしチュニックとイージーパンツで国王陛下に謁見は無理だろう。

「いいと思うのよね。絶対」

 お母様はなおも諦めずに呟いている。

「リリン、今日はすごく綺麗だよ」

 レオポール兄様に褒められる。うん、そりゃ、綺麗でしょう。何せ、朝からマーサとメアリの特製エステ付きだもの。ここで綺麗と褒めてもらえなけりゃ、どこで褒めてもらえるっていうの。

 笑顔でお礼を言いながら、心の中ではやさぐれている。

「兄上、マリはいつでも綺麗で可愛いですよ」

 その点、フランツ兄様はそつがない。思うが、レオポール兄様よりフランツ兄様の方が女性の扱いはうまいと思うのだ。女心がわかってるというか。

 そしてそういうことをわかっていると思うのだ。フランツ兄様はニヤリと笑っている。

「うわぁ、マリアンヌ様ぁ。なんてお綺麗なんですかぁ・・・」

 そこに現れたのがダニエル様である。

「マリアンヌ様ぁ、これ・・・」

 ダニエル様は庭で見つけたというバラの花を持ってきてくれた。

「今日庭で見つけてセバスチャンさんにお願いして切らせてもらったんです」

 バラの花は今日の私のドレスの色にさりげなく合っている。

「うわぁ・・・、女神様だぁ・・・」

 ダニエル様の声に私も思わず照れてしまう。

「ありがとう」

 兄様たちがダニエル様を睨みつけているのを私は気づいていたけど、知らないふりをした。ダニエル様、子供のくせにやるな。

 馬車の準備もできたし、いよいよお城へ出発である。何ごともありませんように。とりあえず、コルセットと馬車に注意をして、いざ出陣、という気分であった。
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