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ジュリア嬢が聖女となり、婚約者がマリアンヌ嬢に決定した。ジュリア嬢になることはないと言われてはいたものの、アルバートは決定するまでは不安だった。しかしジュリア嬢にならなかったからといって、マリアンヌ嬢で安心かといえばそうでもなかった。
人形姫。それがマリアンヌのあだ名だった。国で一番と言われる美男美女の娘。息子2人も国内で5本の指に入ると言われるほどの美男子ぶり。マリアンヌ嬢もかなりの美少女である。そのうえ立ち振る舞いは幼少時から優雅で気品に溢れている。厳しいと言われる王族専属のマナー講師でさえ完璧すぎると舌を巻いた。
しかしその完璧さゆえ、彼女は人形と評された。やっかみが大半であったと思われるが、実際に会った時にその完璧さに近寄りづらさを感じたのも事実だった。マリアンヌ嬢が婚約者となり、将来的には妻となって共に国を支えていくのだろう。彼女なら完璧にその役割をこなすだろうが、アルバートは不安だった。
夫婦として愛情がなければ国を支えることはできない。それは彼の父、つまりは現国王陛下の考えであった。それまでは国王は王妃以外にも側妃を娶ることが義務だったが、王妃のみと愛情を交わし子を育てる。当たり前の家庭にこそ国を導く力あり、とアルバートは幼い頃から言い聞かされてきた。
アルバートもその考えに賛成である。だが、マリアンヌと愛情を交わせるだろうかと思うと、自信がなかった。彼女は確かに美しい。だが心を感じることができない。ここで笑いましょうと言われているから、自分に微笑んでいる。そう思っていた。
だが、彼女が神の祝福を受けて料理に目覚めたと聞いた。そしてアップルパイなるものをもらった。その美味さに感動した。それまでの彼は食事とは死なないためにするものであり、それに美味さなどは求めていなかった。この国では王族の料理人でさえ、味は二の次であったのだ。
マリアンヌに対して興味が湧いた。どんな人物だろうか、もう一度きちんと会って話をしたい。そう思っていたところ、加護があるか鑑定することになった。そこで見たマリアンヌは儚げで不安そうな瞳をしたただの少女だった。
鑑定が終わった後、安心したように宰相の手を握る彼女を見てアルバートは思った。あの手を次に握るのは自分であると。彼女が不安なときは自分が支える、それが自分の役目である。彼の心の中でその思いは強く大きくなっていった。
鑑定の後に食べたシャンドイッツィーも最高だった。魔法省の連中と一緒に食べたが、そんな機会は滅多にない。彼女の料理にはたくさんの人を楽しませてしまう、そんな力が込められているのだ。
そんなふうに楽しんでいたのに、スティラート公爵が悪魔の術を使おうとした。危険だ、そう思った瞬間アルバートはマリアンヌの手を取った。もう迷いはなかった。
決定の知らせを聞いて居ても立っても居られず、アルバートは先触れも満足にせずにマリアンヌの元に向かった。すぐに会って話をしたい。そう思っていたのにいざとなったら満足に声も出なかった。彼女はあまりにも美しく、輝いて見えたのだ。
「で、マリアンヌ様にここをお見せになるんですか?」
アレンに聞かれ、アルバートは満足げにうなづいた。王族専用の庭園内にあるガゼボ。そこから見える景色は庭園で一番美しい。彼はここにマリアンヌを招き、できれば彼女お手製の料理を楽しみながらゲームをしたいと考えていた。
「リィには一番美しいものを見せなければ」
「そうですねー。ここでプロポーズしちゃうのはどうですか?」
その時、ガサっという物音がして2人は音のした方を見た。彼らより少し離れて護衛騎士が数人配置されている。騎士たちが走ってきた。
「ここは一般人立ち入り禁止ですよ」
「どうして入ってきたんですか」
若い女性が騎士に促され去っていく。完全にいなくなってからアルバートは口を開いた。
「例の女性か」
「はい、リリア・マロウ令嬢です」
アルバートは頭を抱えてため息をついた。
「違う場所を探す」
歩き出したアルバートに向かい、アレンは小さくうなづくと彼の後をついて行った。
人形姫。それがマリアンヌのあだ名だった。国で一番と言われる美男美女の娘。息子2人も国内で5本の指に入ると言われるほどの美男子ぶり。マリアンヌ嬢もかなりの美少女である。そのうえ立ち振る舞いは幼少時から優雅で気品に溢れている。厳しいと言われる王族専属のマナー講師でさえ完璧すぎると舌を巻いた。
しかしその完璧さゆえ、彼女は人形と評された。やっかみが大半であったと思われるが、実際に会った時にその完璧さに近寄りづらさを感じたのも事実だった。マリアンヌ嬢が婚約者となり、将来的には妻となって共に国を支えていくのだろう。彼女なら完璧にその役割をこなすだろうが、アルバートは不安だった。
夫婦として愛情がなければ国を支えることはできない。それは彼の父、つまりは現国王陛下の考えであった。それまでは国王は王妃以外にも側妃を娶ることが義務だったが、王妃のみと愛情を交わし子を育てる。当たり前の家庭にこそ国を導く力あり、とアルバートは幼い頃から言い聞かされてきた。
アルバートもその考えに賛成である。だが、マリアンヌと愛情を交わせるだろうかと思うと、自信がなかった。彼女は確かに美しい。だが心を感じることができない。ここで笑いましょうと言われているから、自分に微笑んでいる。そう思っていた。
だが、彼女が神の祝福を受けて料理に目覚めたと聞いた。そしてアップルパイなるものをもらった。その美味さに感動した。それまでの彼は食事とは死なないためにするものであり、それに美味さなどは求めていなかった。この国では王族の料理人でさえ、味は二の次であったのだ。
マリアンヌに対して興味が湧いた。どんな人物だろうか、もう一度きちんと会って話をしたい。そう思っていたところ、加護があるか鑑定することになった。そこで見たマリアンヌは儚げで不安そうな瞳をしたただの少女だった。
鑑定が終わった後、安心したように宰相の手を握る彼女を見てアルバートは思った。あの手を次に握るのは自分であると。彼女が不安なときは自分が支える、それが自分の役目である。彼の心の中でその思いは強く大きくなっていった。
鑑定の後に食べたシャンドイッツィーも最高だった。魔法省の連中と一緒に食べたが、そんな機会は滅多にない。彼女の料理にはたくさんの人を楽しませてしまう、そんな力が込められているのだ。
そんなふうに楽しんでいたのに、スティラート公爵が悪魔の術を使おうとした。危険だ、そう思った瞬間アルバートはマリアンヌの手を取った。もう迷いはなかった。
決定の知らせを聞いて居ても立っても居られず、アルバートは先触れも満足にせずにマリアンヌの元に向かった。すぐに会って話をしたい。そう思っていたのにいざとなったら満足に声も出なかった。彼女はあまりにも美しく、輝いて見えたのだ。
「で、マリアンヌ様にここをお見せになるんですか?」
アレンに聞かれ、アルバートは満足げにうなづいた。王族専用の庭園内にあるガゼボ。そこから見える景色は庭園で一番美しい。彼はここにマリアンヌを招き、できれば彼女お手製の料理を楽しみながらゲームをしたいと考えていた。
「リィには一番美しいものを見せなければ」
「そうですねー。ここでプロポーズしちゃうのはどうですか?」
その時、ガサっという物音がして2人は音のした方を見た。彼らより少し離れて護衛騎士が数人配置されている。騎士たちが走ってきた。
「ここは一般人立ち入り禁止ですよ」
「どうして入ってきたんですか」
若い女性が騎士に促され去っていく。完全にいなくなってからアルバートは口を開いた。
「例の女性か」
「はい、リリア・マロウ令嬢です」
アルバートは頭を抱えてため息をついた。
「違う場所を探す」
歩き出したアルバートに向かい、アレンは小さくうなづくと彼の後をついて行った。
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