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コーヒーを全員分カップに注ぎ、私と殿下はひいお爺様の部屋のソファに向かい合わせで座っている。レオポール兄様とアレンは部屋の入り口あたりで立っている。護衛らしい。
「正式発表はまだだが、少し話ができたらと思って」
正式発表とは婚約のことである。そういうと照れるよね。殿下は窓の方を見たり、天井を見たりで落ち着かない。
正直、私も何の話をしたらいいかわからない。元の世界ならテレビや映画やゲームなど、とりあえず話のネタは何かしらあるものである。しかしこの世界にそれはない。王族の人相手に何の話をしたらいいか検討もつかない。
それで思いついた。
「殿下、ゲームをしませんか?」
「ゲーム?」
怪訝な顔で私を見る殿下。私はひいお爺様のコレクションを取り出した。
「ランタール王国のコインだな」
「ご存じですか?」
「王族に後継者が生まれなくて滅んでしまった国だ。そのようにならないように我が国では色々と準備を・・・」
饒舌に語り出しながら、急に言葉を詰まらせた。それってつまりどういうことか?どんな準備をしているのだろうか。殿下の顔が赤いので私は気がつかないふりをした。私は大人だからね。
とりあえずコインとテーブルクロスを取り出す。テーブルクロスの柄は格子、つまりは碁盤の目のようになっている。私はオセロのルールを説明する。
コインの王様の面が殿下、鳥の面は私である。
「この顔はタレル3世だな。賢王と呼ばれた尊敬する人物だ」
「そうなのですね」
そんな感じでオセロゲームスタートである。殿下は余裕の様子で着々とコインを置いていき、ひっくり返していく。
「おや、そこでいいのか?ひっくり返してしまうぞ」
楽しげに笑いながらコインを置きひっくり返す。ふふふ、オセロのことをわかっていないな。しばらくは順調に進んでいた。形勢は殿下がリード。しかし、私はわかっている。
その時が来た。私は角に置く。
「あっ!」
パタパタパタ、とひっくり返していく。あっという間に逆転した。殿下の顔を見るとコインを見つめて呆然としている。
「殿下の番ですよ」
「いや、ちょっと、待ってくれ」
そう言いながら、真剣な顔でコインを見つめている。おそらく頭の中でどこに置けば次にどこに置かれるとシミュレーションしているのだろう。
「待って、待ってくれ、リィ」
「いいですよー」
私は呑気に答えながら、あれ?と思った。今私のことをリィって呼んだ?いや、別にいいけど。殿下は相変わらず真剣な目でコインを見つめている。何を言ったか気づいていないようだ。
結局、私が勝った。
「もう一回しよう」
「いいですよ」
多分何回かしたら殿下が勝つようになるんじゃないかな。あの様子だと、すぐにマスターしてしまいそうだ。
「ダメですよ、殿下。今日はもう時間切れです」
「もう少しいいだろう」
アレンに言われ殿下が抵抗したが、すぐに諦めた。
「申し訳ない、やはり時間のようだ」
「いえ、わざわざありがとうございます」
私も楽しかった。この人ともっと親しくなりたいと思っている。
「それと」
殿下が目の前で真剣な目をして真っ直ぐに私を見た。その様子にドキっとした。
「勝手にリィと呼んでしまった。だが、マリアンヌ嬢さえ良ければ、リィと呼ぶことを許してほしい」
愛称呼びは本人の承諾を得てから、というのがこの世界のルールだ。いくら婚約者でこの国の王子であっても勝手に呼ぶのはご法度のようだ。
「はい、私のことは今後リィとお呼びください」
いやですとは言えないのでそう答える。レオポール兄様はリリン、フランツ兄様はマリとすでに2人の兄は別々の呼び方をしている。この上リィと呼ばれたって何の問題もない。
「そうか」
殿下の顔がパッと明るくなった。ものすごいいい笑顔だ。
「俺のことはルーと呼んでくれ」
は?ルー?
「アルバートだから親しい者はアルと呼ぶ。しかし、特別な呼び方をリィにはしてもらいたい。だからルー」
にっこりと殿下が微笑んだ。
「リィとルー。いいと思わないか?」
うっ、と声が詰まりかけた。リィとルー。本当にいいのか?と思いながら、殿下を見たら「リィとルー、うん、いいぞ」と小さく呟いていた。満面の笑みで笑う殿下に引き攣りながら笑顔を向けたのだった。
「正式発表はまだだが、少し話ができたらと思って」
正式発表とは婚約のことである。そういうと照れるよね。殿下は窓の方を見たり、天井を見たりで落ち着かない。
正直、私も何の話をしたらいいかわからない。元の世界ならテレビや映画やゲームなど、とりあえず話のネタは何かしらあるものである。しかしこの世界にそれはない。王族の人相手に何の話をしたらいいか検討もつかない。
それで思いついた。
「殿下、ゲームをしませんか?」
「ゲーム?」
怪訝な顔で私を見る殿下。私はひいお爺様のコレクションを取り出した。
「ランタール王国のコインだな」
「ご存じですか?」
「王族に後継者が生まれなくて滅んでしまった国だ。そのようにならないように我が国では色々と準備を・・・」
饒舌に語り出しながら、急に言葉を詰まらせた。それってつまりどういうことか?どんな準備をしているのだろうか。殿下の顔が赤いので私は気がつかないふりをした。私は大人だからね。
とりあえずコインとテーブルクロスを取り出す。テーブルクロスの柄は格子、つまりは碁盤の目のようになっている。私はオセロのルールを説明する。
コインの王様の面が殿下、鳥の面は私である。
「この顔はタレル3世だな。賢王と呼ばれた尊敬する人物だ」
「そうなのですね」
そんな感じでオセロゲームスタートである。殿下は余裕の様子で着々とコインを置いていき、ひっくり返していく。
「おや、そこでいいのか?ひっくり返してしまうぞ」
楽しげに笑いながらコインを置きひっくり返す。ふふふ、オセロのことをわかっていないな。しばらくは順調に進んでいた。形勢は殿下がリード。しかし、私はわかっている。
その時が来た。私は角に置く。
「あっ!」
パタパタパタ、とひっくり返していく。あっという間に逆転した。殿下の顔を見るとコインを見つめて呆然としている。
「殿下の番ですよ」
「いや、ちょっと、待ってくれ」
そう言いながら、真剣な顔でコインを見つめている。おそらく頭の中でどこに置けば次にどこに置かれるとシミュレーションしているのだろう。
「待って、待ってくれ、リィ」
「いいですよー」
私は呑気に答えながら、あれ?と思った。今私のことをリィって呼んだ?いや、別にいいけど。殿下は相変わらず真剣な目でコインを見つめている。何を言ったか気づいていないようだ。
結局、私が勝った。
「もう一回しよう」
「いいですよ」
多分何回かしたら殿下が勝つようになるんじゃないかな。あの様子だと、すぐにマスターしてしまいそうだ。
「ダメですよ、殿下。今日はもう時間切れです」
「もう少しいいだろう」
アレンに言われ殿下が抵抗したが、すぐに諦めた。
「申し訳ない、やはり時間のようだ」
「いえ、わざわざありがとうございます」
私も楽しかった。この人ともっと親しくなりたいと思っている。
「それと」
殿下が目の前で真剣な目をして真っ直ぐに私を見た。その様子にドキっとした。
「勝手にリィと呼んでしまった。だが、マリアンヌ嬢さえ良ければ、リィと呼ぶことを許してほしい」
愛称呼びは本人の承諾を得てから、というのがこの世界のルールだ。いくら婚約者でこの国の王子であっても勝手に呼ぶのはご法度のようだ。
「はい、私のことは今後リィとお呼びください」
いやですとは言えないのでそう答える。レオポール兄様はリリン、フランツ兄様はマリとすでに2人の兄は別々の呼び方をしている。この上リィと呼ばれたって何の問題もない。
「そうか」
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は?ルー?
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「リィとルー。いいと思わないか?」
うっ、と声が詰まりかけた。リィとルー。本当にいいのか?と思いながら、殿下を見たら「リィとルー、うん、いいぞ」と小さく呟いていた。満面の笑みで笑う殿下に引き攣りながら笑顔を向けたのだった。
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