美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 翌日。朝ごはんが終わりお父様やお兄様を見送った後、私はコーヒーを淹れた。コーヒーの香りを嗅ぎながら、何も考えずにぼんやりしたかった。

 ひいお爺様の部屋に行く。朝の光が気持ち良く窓から入ってくる。窓からは庭の花が見えた。最高の部屋である。ひいお爺様はここで何を考え、何をして過ごしていたのだろうか。

 私はコーヒーを一口飲んだ。はぁぁ~。やっぱり美味しい。そうやって思う存分にぼんやりとしていた。現実に戻ったのは、馬の鳴き声が聞こえたからである。そうか、横に厩舎があったっけ。でもお客様用ってセバスチャンが言ってなかった?お客様が来るのだろうか。バーンヒル様にはまだ招待状を出していないよね。

 ドアを開けたらそこにいたのはレオポール兄様だった。

「リリン、何故ここに?」

 レオポール兄様の向こうにセバスチャンもいた。

「お嬢様、今お呼びしようと・・・」

 どこか焦った様子のセバスチャンを見て、私は何か事件でもあったのかと思った。またスタンピード?魔獣が現れた?色々なことが頭の中をぐるぐるしていく。

「マリアンヌ嬢、いきなりすまない」

 レオポール兄様の後ろに止まっていた馬車から降りてきたのは、アルバート王子であった。

「で、殿下?」

 思わず素っ頓狂な声が出た。王子様はお城に住んでいるんだよね。いきなりこうやって訪問したりしないんだよね。何日の何時に伺いますね、いいですよ、というやりとりをしてから現れるもんだよね。

 と、またまた頭の中をぐるぐると考えが巡る。

「ぜひ、会っておきたいと思って、き、 来てしまった。申し訳ない」

 殿下はそう言いながら笑顔を浮かべた。うわぁ、イケメン。かっこいいな、やっぱり。一瞬見惚れてしまったが、それは仕方ないだろう。この世界はイケメンしかいない。だから見惚れる。自然の摂理。

 そう思いながら見ると、殿下はどこか落ち着きがなく、ソワソワしている。時間がないのだろうか。色々仕事とかある身だよね。

 セバスチャンがひいお爺様の部屋に案内する。あぁ、そうか。私は理解した。王子が近いうちに訪問されることはわかっていたのだ。それでこの部屋を掃除した。馬車を止めてすぐ入れるこの部屋は、お忍びに利用できる。屋敷の中だと色々目立つし大変なのだろう。

 しかし、この部屋にはコーヒーがあった。そんなセバスチャンの思惑など知らない私が、いい隠れ家見っけ、と入り込んでいたからである。セバスチャンはコーヒーの香りに気がついたのだろう。私を静かに見つめてきた。

「この香りは?」

 殿下が気づいてしまった。

「コーヒーという飲み物です」
「こおひぃ?」

 キョトン、とした顔で殿下が私を見る。かわいいな。こう見えても私の中身は32歳だからね。15歳の少年はやはり少年なのだ。

 でもよく考えたら、この人と私は結婚するのである。そう自覚してしまったら急に恥ずかしくなってしまった。

「の、飲んでみますか?」

 私はもう1杯カップに注ぐと手渡そうとした。殿下が受け取るその前にニュッと手が伸びてきた。

「私がいただきます」

 兄様とは違う騎士の服を着た男性がカップを受け取ると軽く匂いを嗅ぐ。

「不思議な匂いですね」
「アレン、勝手なことをするな」

 騎士はアレンという名前らしい。殿下はコーヒーを横取りされたせいか声を荒げている。

「殿下、私は近衛騎士であり殿下の毒見係です。殿下が口にする前に私が口にしないといけません」

 アレンはキリッとした顔で私に向かって言った。そうだ、王族の人には毒見係がいるのだ。女神の加護の認定式の時はそのまま召し上がって頂いたが、本来なら許されないことである。

 ゴクッとアレンがコーヒーを飲んだ。

「うん、うまい」
「当たり前だろう」

 兄様がそう言ってアレンの頭をバシッと叩いた。

「お前、毒見なんて言ってリリンの料理が目的なのだろう」
「騎士団ばかりが美味しい料理を食べて。今日はマリアンヌ嬢にお願いに来たのだ。近衛にも料理を提供してもらいたい」

 アレンが私の前に直立していた。その横で殿下は笑顔なのだが、その瞳は笑っていないように見えた。

「アレン、勝手なことをするな」

 えーと、何しに来られたのでしょうね。レオポール兄様をチラリと見ると、目を逸らされてしまった。なんだろうな、一体。


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