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「バーンヒル公爵をお誘いするのなら、私が休みの時にしてほしい」
王宮で避難生活を送るバーンヒル様をお招きするという案をお父様に話すと、そんな返事が返ってきた。王宮にはまだ避難生活を送る人たちがいるのだが、とりあえず公爵であり高齢のバーンヒル様のみをご招待することになった。
お母様が私が作ったチュニックとイージーパンツの魅力について語り出した。それを着ることでとんでもない解放感を味わえるのだという。そこまでの魅力だろうかと思うくらい熱く語る。
牛丼で語るお兄様とチュニック&イージーパンツで熱く語るお母様は、やはり血のつながりを感じる。サーキス家は熱く語る家柄なのだろうか。
「それで思ったのよ」
と、お母様は語り出した。お母様の実家のリレットで女性専用の宿泊施設を開設する予定であるから、その練習も兼ねてバーンヒル夫人にはチュニックとイージーパンツに着替えてもらってエステを受けてもらう。その間、バーンヒル様はお父様やフランツ兄様とお酒でも飲んでくつろいでもらおうというのだ。
「では、男性陣もくつろげるような服を用意しますね。男性バージョンも作ってもらいましょう。それからお酒に合うお料理。女性陣にも軽食やお菓子の類も準備しますね」
話を受けて私は口にした。私が考えていたのはガーデンパーティだった。だが、お母様の案のエステをするのならガーデンパーティは別の機会がいいだろう。
「でも他人の家に招かれて服を着替えさせられるなんて、抵抗を感じませんか?」
レオポール兄様が言うと、「そうよねぇ」とお母様がうなづいた。
「でもこの解放感は絶対に味わってほしいの。本当は私、あの服に着替えたいと思ってるんだから」
昼間のお母様とステファニー様を思い出したのか、フランツ兄様が赤い顔をしている。あれはきっと兄様にとって衝撃的な瞬間だっただろう。
「私とステファニーが着れば大丈夫だと思うの。でも女性が着替えてるのに男性が着替えないって変でしょ」
「では男性陣は入浴でもしてください」
やけになって私は言った。
「そうだ、風呂だ!」
「うんうん、うちには大きな風呂があったよ」
私の意見を聞いて兄様たちが騒ぎ出した。大きなお風呂?そんなものがあったのか。さすが公爵家。敷地がだだっ広い上、建物もいくつかあるから自宅だっていうのに確認できない。絶対、迷子になるよね。地図とかあるのかな。
「そうだな、レオとフランツのために大きなお風呂を作ったんだった。結局あまり使わなくなったが。セバス、準備できるか?」
「はい、なるべく早くご準備します」
部屋の隅に控えていたセバスチャンが答える。おそらくすぐに準備が整うだろう。早く男性用の洋服を作らないと。
「しかし、マリに聞くといい案がすぐに浮かぶな」
「だって女神の加護を受けた我が家のお姫様だ、リリンに任せればなんでも解決だろう」
「天使ちゃんを王様に渡すのが惜しくなったわ」
「うむ・・・。里帰りは月1でさせてもらえるか交渉しておこう」
みんなが盛り上がり出したが、私は料理のことを考えてるので必死になってあまり聞いていなかった。お酒は何があるのだろうか。セバスチャンにちゃんと聞いておこう。頭の中でやることリストを組み立てながら、今日も1日が終わろうとしているのだった。
王宮で避難生活を送るバーンヒル様をお招きするという案をお父様に話すと、そんな返事が返ってきた。王宮にはまだ避難生活を送る人たちがいるのだが、とりあえず公爵であり高齢のバーンヒル様のみをご招待することになった。
お母様が私が作ったチュニックとイージーパンツの魅力について語り出した。それを着ることでとんでもない解放感を味わえるのだという。そこまでの魅力だろうかと思うくらい熱く語る。
牛丼で語るお兄様とチュニック&イージーパンツで熱く語るお母様は、やはり血のつながりを感じる。サーキス家は熱く語る家柄なのだろうか。
「それで思ったのよ」
と、お母様は語り出した。お母様の実家のリレットで女性専用の宿泊施設を開設する予定であるから、その練習も兼ねてバーンヒル夫人にはチュニックとイージーパンツに着替えてもらってエステを受けてもらう。その間、バーンヒル様はお父様やフランツ兄様とお酒でも飲んでくつろいでもらおうというのだ。
「では、男性陣もくつろげるような服を用意しますね。男性バージョンも作ってもらいましょう。それからお酒に合うお料理。女性陣にも軽食やお菓子の類も準備しますね」
話を受けて私は口にした。私が考えていたのはガーデンパーティだった。だが、お母様の案のエステをするのならガーデンパーティは別の機会がいいだろう。
「でも他人の家に招かれて服を着替えさせられるなんて、抵抗を感じませんか?」
レオポール兄様が言うと、「そうよねぇ」とお母様がうなづいた。
「でもこの解放感は絶対に味わってほしいの。本当は私、あの服に着替えたいと思ってるんだから」
昼間のお母様とステファニー様を思い出したのか、フランツ兄様が赤い顔をしている。あれはきっと兄様にとって衝撃的な瞬間だっただろう。
「私とステファニーが着れば大丈夫だと思うの。でも女性が着替えてるのに男性が着替えないって変でしょ」
「では男性陣は入浴でもしてください」
やけになって私は言った。
「そうだ、風呂だ!」
「うんうん、うちには大きな風呂があったよ」
私の意見を聞いて兄様たちが騒ぎ出した。大きなお風呂?そんなものがあったのか。さすが公爵家。敷地がだだっ広い上、建物もいくつかあるから自宅だっていうのに確認できない。絶対、迷子になるよね。地図とかあるのかな。
「そうだな、レオとフランツのために大きなお風呂を作ったんだった。結局あまり使わなくなったが。セバス、準備できるか?」
「はい、なるべく早くご準備します」
部屋の隅に控えていたセバスチャンが答える。おそらくすぐに準備が整うだろう。早く男性用の洋服を作らないと。
「しかし、マリに聞くといい案がすぐに浮かぶな」
「だって女神の加護を受けた我が家のお姫様だ、リリンに任せればなんでも解決だろう」
「天使ちゃんを王様に渡すのが惜しくなったわ」
「うむ・・・。里帰りは月1でさせてもらえるか交渉しておこう」
みんなが盛り上がり出したが、私は料理のことを考えてるので必死になってあまり聞いていなかった。お酒は何があるのだろうか。セバスチャンにちゃんと聞いておこう。頭の中でやることリストを組み立てながら、今日も1日が終わろうとしているのだった。
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