美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 着替えを終えたお兄様は、ギュウ、ギュウ、ドンドン、ギュウドン、ドンという謎の歌を歌いながら、軽くスキップしつつ現れた。大変上機嫌である。歌は多少調子っぱずれなのだが、そんなところは愛らしく憎めない。

「兄上が壊れた・・・」

 フランツ兄様が複雑な表情を浮かべている。確かに。たかが食べ物でそこまで変わるか。私もそう思うが、逆にそこまで人を変えてしまう牛丼はさすがの魅力であると思う。

「フランツ、お前もじきにわかる。俺の今の気持ちが」

 レオポール兄様がキッパリと言った。その顔はすごくカッコよかった。牛丼を愛する我らが長兄レオポール。そこまで愛してくれるのだから、私も心して調理すべきであろう。


 とはいっても、牛丼はすでに作っている。せめて半熟卵は丁寧に作ろう、と卵を用意する。しかし念のため調べてみたら・・・。まさかのキムチが冷蔵庫に入っていた!女神様、ありがとう。これでお兄様は牛丼を3杯食べます。

 私の分の牛丼は1杯半くらい。これで温玉とキムチをトッピング。うーん、牛丼でこんなに楽しんでいいのだろうか。でも騎士の人たちが忠誠を誓ってくれたわけだし。キムチも気に入ってくれるといいけど。

 
「これがギュウドンか」

 目の前に置かれた牛丼をフランツ兄様がしげしげと眺めている間に、レオポール兄様は口いっぱいに頬張りガツガツと食べている。

「お行儀が悪いわねぇ」

 お母様が眉間に皺を寄せているが、レオポール兄様は気にしない。実際、牛丼はお行儀よく食べるよりかきこむ方がいいと思う。そのほうが牛丼をきちんと味わえると思うのだ。

「んぐっ、母上、申し訳ございませんが、叱責を受けてもこの食べ方は譲れません。騎士たちはこの勢いで皆ギュウドンを食べています。短い休憩時間にギュウドンを食べ、英気を養うのです」

 そう言いながらもレオポール兄様の勢いは止まらない。あっという間に1杯目を食べ終わると、2杯目に進む。2杯目は温玉のせである。

「せっかくのマリの食事を味合わないなんて」
「そうよ、天使ちゃんのお料理よ」

 フランツ兄様とお母様がプンスカ怒りながら、牛丼を口にする。レオポール兄様の手前か妙にお行儀よく丁寧に口に運んでいるように思うが、口にするなり目が大きく見開いた。2人とも同じ仕草、同じ表情である。さすが、親子。よく似ている。

「美味しい」
「本当だ・・・」

 感心したように2人は食べ進めている。

「やはり、マリアンヌの料理は最高だな」

 お父様も牛丼を口にして微笑んでいる。二日酔いは良くなったようで何よりである。

「ん?これはちょっと辛いけど、ギュウドンの甘さを引き立ててクセになるな」

 レオポール兄様はすでに3杯目のキムチ乗せに挑んでいた。

「兄上、少し早すぎではないですか?」

 フランツ兄様はようやく1杯目を食べ終わり、2杯目はキムチにするか温玉にするか考えているようだった。競争ではないし、別に何杯も食べなくていいのに。

「部隊で食べるときは競争になるんだ」

 モグモグしながら兄様が言う。えっ、そうだったの?新事実にびっくりである。

「みんな、人より多く食べようとするからな。それで自然とがっついてしまうんだ」

 何故人より多く食べようとするのだろうか?足りなければ言ってくれたらいいのに。

「リリン、男というのはそういう生き物なのだよ」

 え?ついにレオポール兄様は男の生き様を語り出した。牛丼から何故そんな話に発展するのかわからない。

「確かに、人の上を行きたいという競争心を煽る食べ物であるな」
「そうなんだ、理解できるだろう?」
「わかりました、兄上」

 フランツ兄様まで言い出して、2人はうなづきあっている。私は女ゆえかよくわからない。でも今日の牛丼はキムチもあるし、美味しく食べられたなと満足したのだった。



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